高速道変動料金、21年度中にも首都圏で試験的に実施へ

高速道変動料金、21年度中にも首都圏で試験的に実施へ

国交省、混雑回避で制度を抜本的に見直し

国土交通省は高速料金制度を抜本的に見直す方向で検討に入った。曜日や時間帯、交通量に応じて料金を変動させ、混雑回避を図る「ロードプライシング」の導入を視野に入れており、2021年度中にも実際に首都圏の渋滞が激しい区間で試験的に実施、効果を見極めることを視野に入れている。

一方、各種割引についても効果と課題を踏まえ、順次見直す予定。このうち、午前0~4時が対象の深夜割引に関しては、首都圏や近畿圏の本線料金所で適用時間まで待機するトラックが多数集まり混雑が起きるなどの問題が生じているため、適用時間帯を拡大してトラックの集中を緩和することなどを想定しているようだ。

オリンピック時に効果あった?

ロードプライシングは既に欧州や東南アジアで実施。都市部中心に流入する車に自動課金するなど、渋滞の解消を図っている。日本でも東京オリンピック・パラリンピックの開催に併せて首都高で展開している。昼間は物流関係のトラックなどを除き、料金に一律1000円を上乗せする一方、夜間はETC搭載車両を対象に割引を実施。昼間に選手ら大会関係者を円滑に運べるようにしている。

国交省によれば、オリンピック開会式のあった7月23日を含む7月22~25日の4連休の間、首都高の交通量は速報値で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響がなかった2018年の同時期より2~3割減ったという。一般道の交通量はほぼ横ばいだったと説明している。さらに、閉会式を実施した8月8日の日曜日の首都高交通量は18年比で5割近く減少した。18年との単純比較は難しいが、国交省は一定程度、変動料金が影響した可能性があるとみており、ロードプライシングの有効性に自信を深めているようだ。

ただ、変動料金が始まった7月19日から21日までの平日には、一般の幹線道路が大渋滞したとの証言がSNS上で多数寄せられるなど、交通量が減少した首都高とは対照的な動きも見られた。大手食品スーパーの関係者は、都心の店舗に向けた配送トラックの到着が最長で1時間程度遅れたと指摘。大手宅配会社のベテランドライバーは「交通規制などで営業店舗への荷物到着時間がなかなか見えなかった。荷物が全然来ないと思ったら、大量にまとまって届いたりして混乱した」と回顧する。

今回のオリンピック・パラリンピックはロードプライシングに加え、首都高の入り口閉鎖や競技会場周辺の交通規制なども実施しているため、どこまでがロードプライシングの効果なのか見極めにくい部分もある。より詳細な検証が待たれる。

「割増による収入は利用者へ還元も」

社会資本整備審議会道路分科会の国土幹線道路部会が8月に取りまとめた今後の高速道路の最適な在り方に関する中間答申ではロードプライシングについて「まずは、大都市圏の主要な渋滞発生区間を対象に、時間帯や曜日をあらかじめ区切って交通転換を図るための料金施策を検討すべきである」との見解を表明。その上で「将来的には、ICT技術の進歩やその普及を踏まえつつ、交通需要に応じて、一定時間ごとに変動する機動的な料金の導入を目指すべきである」と強調した。

同時に「料金の割増を行う場合、当該時間帯や経路を利用せざるを得ない利用者からも理解を得られるような配慮が必要である。例えば、割増による収入により、車線数の増加やネットワークの強化などの渋滞対策を行い、利用者へ還元することも考えられる」とも記している。同部会は国交省が事務局を務めており、当然ながら中間答申にも国交省の意向や問題意識が色濃く反映されている。

その中で「ETCの普及によって、利用者が料金を強く意識せずに高速道路を利用し得る環境になる中、混雑状況に応じた料金による効果を高めるには、利用者の料金に対する認知度を向上させることが重要であり、分かりやすい料金設定や広報が求められる」と、高速利用者への配慮を前面に打ち出した。

物流関係者からもロードプライシングに関しては、料金が事前に把握しにくくなるなどの懸念が噴出している。大前提として分かりやすい料金設定が不可欠な上に、現状の交通渋滞情報と同じレベルで、ロードプライシングの実施している区間などを容易に確認できる体制の整備も必須だ。国交省などはまず、SNSを使った情報公開などを模索していくとみられる。

(藤原秀行)

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