危機管理強化へ台風襲来時の「臨時休業」検討
ニチレイロジグループ本社の梅澤一彦社長は12月11日、同社を含むニチレイグループ主要4社トップの年末記者会見の席上、2019年度(20年3月期)から始める次期中期経営計画の期間中は、物流拠点の建設費や人件費などコスト上昇を踏まえ、適正料金の収受を一層推進する決意を示し、顧客に理解を求めていく姿勢を強調した。
また、今年災害が頻発したことなどを受け、今期の下半期に1億円程度の影響が業績に生じると解説。トラックドライバーの安全確保など危機管理強化の観点から、深刻な被害が見込まれる台風の襲来が予測される際は当該エリアを臨時休業とすることを検討していく考えを明らかにした。
年末記者会見に臨む梅澤社長
「コスト上昇後追い」の価格交渉から脱却図る
梅澤社長は、19年3月期(通期)の業績について、連結売上高は2000億円、営業利益は115億円との見通しを示し、「現行中計最終年度目標の営業利益110億円から5億円上乗せで着地を見込む」と語った。
次期中計がスタートする来期(20年3月期)に関しては①成長に向けた新設投資②働き方改革への対応③適正料金収受④海外展開拡大――に力を注ぐ姿勢を明示。
このうち③については「今までは電力料金の上昇分を価格に転嫁してくださいといったように、コスト上昇を後追いする形での料金交渉だった。今後は事業継続のため、適切なコストシミュレーションに基づき、お客さまと粘り強く交渉していく」と主体的に価格改定へ取り組む意向を強調した。
その背景として、11年に東京・東扇島に建設した物流拠点に比べ、20年に名古屋市で稼働予定の新拠点は建設コストが1・5倍程度になっていると例示。他にも時間外労働抑制のため、拠点の貨物在庫量を以前より減らさざるを得ない場面が出ていることを挙げ、「次期中計期間中に交渉を行う方向でこれから準備する」と話した。
国内外の保管能力は200万トン到達へ
災害対応については「台風はある程度事前に進路などが計算できるので、今のイメージではJRさんの計画運休に合わせた形で(被害が予想される)当該エリアは休業することをある程度、お客さまにお願いしていく方向性で考えている」と述べた。
次期中計の他のポイントは、①や④の関連として、沖縄や名古屋で物流の新拠点を稼働させたり、海外はオランダのロッテルダム港湾で既存設備を拡張したりする予定をあらためて説明。「国内外で連結ベースのグループ設備保管能力は次期中計期間中に200万トンの大台に到達する」との見通しを明らかにした。
首都圏での拠点新設は「次の中計の3年間は計画に入れていないが、その次の計画のタイミングでは何らかの機能の増設は必要と考えている」と明言。海外展開については「ブレグジット(英国のEU離脱)による商流・物流スキームの大きな変化は、当社にとって大きなビジネスチャンスと捉えている。欧州事業の成長に向けた投資を積極的に進めていきたい」と意欲を見せるとともに、アジアでの基盤整備にも言及した。
②をめぐっては「従来のように労働集約的に、庫内に貨物を詰められるだけ詰め込むという作業内容からの転換を図っている。こういった環境変化の中で、利益を取り返す施策を講じていく」とアピール。女性活躍促進にも引き続き取り組むことを公約した。
グループを挙げて推進している現場の業務革新に対しては、現状手掛けてきた、各拠点でタブレット端末を活用した入庫検品のデジタル化、ペーパーレス化が一定の成果を挙げていると分析。次期中計では各機器を通じて得られた現場作業のビッグデータから有益な法則などを見いだす「データマイニング」のスキル向上も図ると説明した。
(藤原秀行)