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【独自取材】ラストワンマイル脱炭素化、来夏発売予定のEVトラックに期待

【独自取材】ラストワンマイル脱炭素化、来夏発売予定のEVトラックに期待

日野自動車・小木曽社長独占インタビュー(後編)

日野自動車の小木曽聡社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

小木曽社長は子会社の「NEXT Logistics Japan」(ネクストロジスティクスジャパン、NLJ)に様々な荷主企業や運送企業が参加して展開している幹線輸送効率化の取り組みに関連し、実際に業務で活用しているダブル連結トラックが省力化に有効と期待を表明。普及を目指す姿勢を強調した。

また、2022年初夏に発売予定の、同社初の本格的なEV(電気自動車)トラックがラストワンマイルの宅配領域で脱炭素化に貢献できると自信を見せ、さらにEVなど電動化したトラックを提供していくことに強い意欲をのぞかせた。

インタビュー内容の後編を紹介する。


インタビューに応じる小木曽社長

飲酒運転阻止「メーカーとしていろんな手を考えたい」

――御社として「Commercial Japan Partnership Technologies」(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ、CJPT)と並ぶもう1つの主要な戦略が、子会社の「NEXT Logistics Japan」(ネクストロジスティクスジャパン、NLJ)を軸とした幹線輸送効率化の取り組みでしょう。様々な荷主企業や運送事業者も参加し、ダブル連結トラックの活用による幹線輸送のスキーム変革などを進めています。現状の成果はいかがでしょうか。
「既に会社としてリアルなビジネスの形態で取り組んでおり、パートナー企業と組んでまさにいろいろトライしているところです。先ほども申し上げましたが、まだまだカーボンニュートラルを達成できるほどトラックの電動化が進んでいるわけではありませんので、電動化と並行して物流の効率を上げてCO2排出の負荷を下げることの大切さがどんどん明確になっています。荷主としてNLJのパートナーとなっていただいている方々からもそうした声をいただいています。現状ではまだ2台連結のフルトレーラーが常に荷物で満杯にはなっているわけではなく、積載率などの面で依然課題はありますが、パートナー企業の皆さんも解決に向けて動かれ、汗をかかれています」

――ダブル連結トラックの活用が幹線輸送の抱えるドライバー不足を解決できる有効な手段となりそうですか。
「そう思いますね。ただ、本当に世の中で広めていくためには、もっと知恵を出して、より使いやすい仕組みを考えていく必要があるでしょう。今はNLJとして独り立ちしていくための進化を一生懸命しているところです。どこまで行けば合格点なのかはなかなか判断が難しいところですが、既に幹線輸送効率化の取り組みが始まり、課題に向き合っていること自体が今、非常に大きな価値があると感じています。私自身もNLJについて勉強していますので、具体的な成果をお話できるのはもう少し先になるでしょう」

――幹線輸送効率化の実現にはより多くの荷主がNLJに参加する必要があるのでは?
「もちろん、ある程度の規模は必要ですが、こういう話は数を増やせば何とかなる、数が多ければいい、というものでもありません。やはり一緒に将来を考えていただける方、志に賛同いただける方々とやっていくことが重要です」


ニチレイロジグループ本社とNLJは今年3月、ダブル連結トラックを使い、常温のトレーラーと冷凍のトレーラーを同時に輸送、長距離輸送を効率化する取り組みを開始した(両社プレスリリースより引用)

――ドライバー不足で機運が高まっているトラックの自動運転については実用化までをどのように展望されますか。
「まずは港湾のように限られたエリア内で実現していくことになるでしょう。そこから少しずつ領域を広げ、高速道路の隊列走行も実用化へ加速させていかないといけないのではないかと思います。日本自動車工業会も大型車メーカー4社で構成する大型車特別委員会で、異なる物流事業者間で、異なるメーカーの異なる仕様の車両が隊列を組んで自動走行することができるよう、協調して技術開発を進めています。トラックドライバー不足が叫ばれる中、トラックが自動でどんどん動けるようにすべきだと思います」

「まだ当社として、自動運転の実用化に至るまでの明確なロードマップを描けているわけではありませんが、政府が打ち出している目標も考慮しながら取り組んでいきます。まずは自動運転、無人運転の前段として、レーダーやカメラを使いながら安全に走る、曲がる、止まるをサポートする運転支援の機能をさらに進化させたい。安全性を高めるところはどんどんレベルを上げていきます」

――今年6月、千葉県八街市で下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、5人が死傷するという痛ましい事故が起きてしまいました。今回はトラック自体に問題があったわけではないのですが、トラックメーカーとして、こうした飲酒運転に起因した事故を防ぐため、安全対応をどのように取っていかれますか。
「ご指摘の通り、より安全なトラックを実現していかなければいけないと思いますので、予防安全性能を進化させていく必要があるでしょう。危ない時にはすぐに止まることができる性能、あるいはバスなどで既に装着していますが、ドライバーが正常の状態にないような時には緊急停止する機能、そうしたものをさらに広めていきたい。物流業界全体では整備の拡充やより安全な運行管理の実現、ドライバーへの安全教育の強化といったところでご協力できるようなところはぜひご一緒させていただきたいと考えています」

――そもそもドライバーが飲酒した状態では運転ができなくなるよう技術面で歯止めを掛けることがメーカーには期待されると思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
「飲酒運転はまず“人系”のところで止めるのが基本ではないかと思います。運転のミスなど万が一の時に自動ブレーキを掛けるといったように、事故を回避するのは車両側の性能をアップしていくことでさらに対応できますが、ドライバーが飲酒して乗ってしまう部分はメーカーとしてなかなか悩ましいところです。(アルコールチェックを行わないとエンジンを始動できないアルコールインターロックシステムのような)より良いシステムがあればぜひ採用したいですが、まずソフト的なところでも、さまざまな手があると思います。取り組めるところからいろんな手を考えていかないといけないでしょう」

――他社との連携という意味では、御社が商用車分野で協業しているドイツのフォルクスワーゲンのトラック・バス部門TRATON(トレイトン)や中国の電気自動車メーカー、比亜迪(BYD)との連携の方向性はいかがでしょうか。
「両社ともパートナー契約を締結していますので、引き続き様々な協業を契約の範囲内でやっていく予定です。CJPTが誕生したことがかなり大きくメディアで取り上げられて盛り上がりましたが、トレイトン、BYDの両者とも引き続き、同じように協力していくことになります」

――CJPTに海外勢が入る可能性はありますか。
「それぞれ日野とトレイトン、日野とBYD、日野とCJPTという枠組みになっていますから、全部かき混ぜるとよく分からなくなってしまいます。仮定の話として、もし相互で連携した方が良いと判断できるような具体的な事例があれば、コンプライアンス上大丈夫かどうかという点と、双方の意向が合うかどうかという点をクリアできれば、おっしゃるような形があり得るかもしれませんが、今具体的に何か決まっているようなことはありません」

――トヨタグループとして目指すCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を商用車の世界でどう実現していかれるのでしょうか。
「CJPTがやるべき内容はこうです、それ以外のものはこうです、と現時点ではっきり決まっているわけではなく、将来に向けての活動の枠組みなので、これから逐一方針が定まっていくでしょう。ただ、CJPTがメーンで決めているのは、CASEを中心とした協調すべきところを重点的に取り組むということです。先日発表があった福島での水素活用プロジェクトのような案件を着実に進めていきます」

「一方でトヨタグループもハイエースなどの商用車や軽トラックを作っていますので、当社とトヨタ、ダイハツ工業、トヨタ車体などの各社間で電動化の技術といった部分で協調すべきところを明確に定義し、進めていきます。日頃から各社間で接点は数多くありますから、連携をしっかり深め、お客様の目線に立ち、全体最適で商品開発やアフターサービスを考えないといけません。そこにコネクテッドや電動化の話が加わってきますから、より連携を強化していきます。見える形で何かスキームが変わるというよりは、ずっとシームレスにつながっていますからさらに連携していくということです」

メーカー軸にソリューションも提供

――来年初夏には、御社の基幹ブランド「デュトロ」で小型EVトラックを発売される予定です。ラストワンマイルの配送を電動化できるということについては、かなり成果を期待されていますか。
「相当期待しています。物流業界からは、特に大手のお客様はカーボンニュートラルの実現へ環境規制が強化される可能性が大きいのでトラックを電動化していきたい、カーボンニュートラルの足掛かりを作りたいとのご要望をかなりいただいています。その答えの1つが、当社初の本格的なEVトラックとなる『日野デュトロZ(ズィー)EV』です」

「既にいろいろなところでご説明させていただいている通り、宅配現場で使いやすいようウォークスルーバン型で超低床、前輪駆動を採用し、操作性や荷役作業性、乗降性を大幅に向上させています。航続距離は宅配用途に求められる100キロメートル以上を目指しています。現行の日野デュトロより一回り小さいサイズ感を実現し、住宅街でも走行しやすくなっている上、普通免許で運転可能にしており、ドライバーの人材確保にも貢献できると考えています。シフト操作せずにアクセル、ブレーキだけで楽に運転いただけるようになり、荷室もボリュームを確保していますからEVの特徴が良さとして生きてくるのではないでしょうか。もちろん、市場に投入した後はお客様のご要望をお聞きしながら、次へ次へと改善していくことが重要です」


「日野デュトロZ EV」(日野自動車提供)

――この後の電動化を進める上で、CJPTとの関係はどうなるのでしょうか。
「これは先ほども申し上げたように、お客様がお使いになる最終的な製品のところは真剣勝負です。CJPTはメーカーではなく、あくまで共同企画会社であり、何かCJPTブランドの部品やトラックが生まれるわけでは決してありませんし、電動化の共同開発トラックを発表するわけでもない。共通のプラットフォーム、共通のシステムの前提を決めるだけです。同じユニットを造る場合もあれば、同じ車体を使う場合もあるかもしれませんが、規格の部分だけが共通で、部品調達から何から残りは全て競争です。商品の魅力で勝負することもこれまでと同じです。当社としては、『デュトロZ EV』に続き、1つ1つ物流業界の課題解決につながるソリューションを発表していきます」

――現状を見ると、もはや商用車メーカーの位置にとどまらず、ソリューションプロバイダーになろうとしているように思えます。
「下会長がずっとやろうとしているように、メーカーという軸は外しません。当社はソリューションオンリーで勝っていけるようなキャラクターの会社ではないと思っていますから。プロダクトを企画、開発するメーカーでありながら、お客様の物流の困りごとを解決するソリューションサービスを提供する、その両方の機能を備えるからこそ、お客様から信頼していただけるのではないでしょうか。リアルな整備拠点を展開しつつ、CASEの技術があって初めて、何トンという大型の商用車の安全性を担保しながら人々の生活を支えるようなサービスを実現できるようになる。メーカーが自動車関連のサービスとお困りごとを解決するソリューションをセットで提供する必然性は非常に高いと思いますね。明確に切り離すことは難しいでしょう。その両方をきっちりとやることがわれわれの責任です」

――CASEのような技術が進化したとしても、リアルの販売会社や整備拠点を運営する体勢は続くということでしょうか。
「その通りです。お客様、社会の役に立つということを起点にすれば、CASEはあくまで物流業界の方々が将来にわたって車両を安心してお使いいただき、活躍できるような状態にしていくための手段であり、リアルの販売会社や整備会社が不可欠です。求められるものがCASEであろうが、カーボンニュートラルになろうが、物流の方々がお仕事をしやすく、物流がビジネスとして成り立つよう、われわれはさまざまな改革をやっていきます。簡単なことではありませんから時間が掛かることもあるかもしれませんが、そこは徹底していきたい」

――最後に、物流業界へメッセージをお願いいたします。
「恐らく、物流業界の方から見ると、前任の下社長はやはり、物流そのものに直接向き合っている人だったと思います。会長になった今でもその姿勢に変わりはない。今回、乗用車メーカーから(自分という)新種がやってきましたが、前任とは同じ価値観なのでご安心ください」

「下会長とも話をしていますが、新型コロナウイルスの感染拡大下でも人々が何とか生活できているのはインターネットで注文するにしても何にしても、やはりちゃんと物が届くからということが大きい。これはまさに物流業界の皆様のおかげです。間もなく80年になる当社の歴史でも、人と物の移動を支えていくことが基盤であり大切だと申し上げ続けてきましたが、コロナ禍でますますその大切さが、それこそ広く世の中に伝わっているんじゃないかと思いますし、私自身も実感しています。本当に苦労しながら、物流業務に日々汗をかいていただいている方に感謝申し上げたいですし、下会長と二人三脚しながらそうした方々が抱えておられる困りごとに向き合えるよう日野自動車を挙げて取り組んでいきたい。いろんなご要望をお聞かせいただけると幸いです」

小木曽 聡(おぎそ・さとし)
1983年東京工業大学工学部機械工学科卒、トヨタ自動車入社。「プリウス」「アクア」などを手掛け、開発責任者のチーフエンジニアも歴任。2013年常務執行役員、18年専務役員、19年執行役員。21年日野自動車顧問に就任し、同年6月より現職。東京都出身。60歳。

(本文・藤原秀行、写真・中島祐)

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