トラック運送など交通関係業界、「直近2年以内に“カスハラ”被害」は46%

トラック運送など交通関係業界、「直近2年以内に“カスハラ”被害」は46%

交通労協の2万人調査で判明、コロナで「消毒スプレーかけられた」も

鉄道やトラック輸送、バス、タクシー、観光サービスなどの業界の労働組合で構成する「全日本交通運輸産業労働組合協議会(交通労協)」は11月24日、同業界で働く人たちが顧客から受けている悪質なクレーム(迷惑行為、カスタマーハラスメント)の実態に関するアンケート調査結果を公表した。

今年5~8月に調査を実施、回答した組合員は2万908人に上った。トラック運送業界は20・3%の4248人が協力した。

直近2年以内にサービス利用者らから迷惑行為の被害に遭ったと答えた人は全体の46.6%に達した。トラックドライバーは26.3%だった。16回以上と答えた人も3.1%いた。

さらに、被害に遭った人のうち、直近2年以内で迷惑行為が増えていると感じている割合は57.1%に上った。トラックドライバーは56.5%だった。新型コロナウイルスの感染拡大下、消毒スプレーをかけられた事例などが目立っている。

バスやタクシーを使う人や宅配の荷物を受け取る人からの暴言やしつこいクレームといった問題行為への対応が急務と言えそうだ。

最も印象に残っている迷惑行為を尋ねたところ、「暴言」が49.7%で最も多く、「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」(14.8%)、「威嚇・脅迫」(13.1%)、「権威的態度(説教)」(9.4%)、「暴力行為」(2.8%)などと続いた。

迷惑行為を受けた形では、「対面」が80.9%で最多。「電話」が14.4%、「メール」が1.7%、「SNS」が0.9%などとなった。

企業で「特に対策されていない」4割弱

迷惑行為を体験した後の心身の状態に関しては、「嫌な思いや不快感が続いた」が50.0%でダントツのトップ。「腹立たしい思いが続いた」(17.9%)、「すっきりしない気持ちが続いた」(9.6%)、「不安な思いが続いた」(5.8%)、「同じような事が起こりそうで怖かった」(4.5%)など、9割以上の人が何らかの厳しい状態に陥っていた。「寝不足が続いた」(0.9%)、「心療内科などに行った」(0.5%)とより深刻なケースもあった。

迷惑行為を受けた際の対応(複数選択可)では、「毅然と対応した」が26.4%でトップ。「謝り続けた」(23.7%)、「上司に引き継いだ」(22.4%)、「複数人で対応した」(11.8%)、「何もできなかった」(8.1%)などと分かれた。

勤めている企業での対策(複数選択可)は「特に対策はされていない」が39.5%と目立った。「迷惑行為対策への教育」(21.0%)、「マニュアルの整備」(19.9%)、「専門部署の設置」(11.6%)なども見られた。迷惑行為を受けた人に、専門的に相談できる人が必要かどうかを聞くと、「(必要だと)思う」が72.0%に達し、「思わない」の8.0%を大きく上回った。

一方、交通運輸や観光サービスに従事している「キーワーカー」であることを理由に、新型コロナウイルス感染症に関する差別や偏見、中傷などの迷惑行為を受けたことがあるかどうかに関しては、「ある」が20.2%に達した。トラックは16.6%だった。

どのような迷惑行為を受けたかを選択してもらったところ(複数回答可)、「暴言」が40.1%で1位。その後は「威嚇・脅迫」(17.6%)、「消毒スプレー等をかけられた」(7.9%)、「同居の家族が出勤や登校の自粛を求められた」(5.6%)、「SNSやインターネット上で誹謗・中傷を受けた」(5.1%)、「病院の受診・検査等を断られた(本人、同居の家族)」(4.8%)なども見受けられた。

自由回答のうち、トラックドライバーからのものでは「県を越えて移動している10トントラックのドライバーからはコンビニへの入店を拒まれるとも聞いた」「(速度抑制装置が付いているなど)大型貨物車の速度事情についてもっと一般に周知してほしい」「スピードがあまり出せず制限速度を守って運転しているのに、一般の乗用車に後ろに付かれると、前が見えない分、すぐにあおり運転されてしまう」といった悩みの声が聞かれた。

(藤原秀行)

アンケート調査結果はコチラから(交通労協ホームページ)

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