【独自取材】ニチレイロジグループ本社、「エンジニアリング事業」拡充に本腰

【独自取材】ニチレイロジグループ本社、「エンジニアリング事業」拡充に本腰

※「独自取材」画像はニチレイロジグループ本社のサイトより

冷蔵設備管理を一貫サポート、中小事業者にマルチ型物流施設提案も検討

 ニチレイロジグループ本社が、冷蔵倉庫の設計・施工などを手掛ける「エンジニアリング事業」の拡充に本腰を入れている。設備の保守管理から省エネ促進策提案まで一貫で担うトータルサポートの展開を加速。さらには、物流施設デベロッパーやJリートの資産運用会社と組み、中小規模の冷蔵倉庫事業者や物流事業者を対象に、先進的な冷凍・冷蔵設備を備えたマルチテナント型物流施設を提案することも検討している。

 多彩な加工食品や原料の品質を損なわず保管・輸配送することで培ってきた自社の低温物流に関するノウハウを外販拡大に最大限活用。成長の新たな牽引役に育てようと模索している。

「三本柱」組み合わせて包括的に支援

 ニチレイロジのエンジニアリング事業は冷蔵保管能力が約200万トンと国内随一の低温物流網を日々運営している経験とノウハウを基に、ニチレイグループが展開している冷蔵倉庫などの各種設備を適切に管理。同時に、外部の顧客にも多様なサービスを提供している。

 同事業は主に施設を新築・改修する際の計画立案や設計・施工を担う「エンジニアリング」、保守管理の「メンテナンス」、設備を細かく調査して最適な保全投資計画を提案するなどの「診断」の三本柱で構成されている。

 同事業の中核的プレーヤーとなっているニチレイ・ロジスティクスエンジニアリング(NLE、東京)の井藤勉社長は「冷凍・冷蔵設備の技術者も人手不足が深刻になっており、中小事業者の方々の負担は大きい。当社のノウハウを生かしてお客さまに提案することで、業界全体の負荷軽減と業務効率化にも貢献していきたい」と強調する。

 現在は全国の冷蔵倉庫事業者や運送会社、食品メーカーなど100~200社程度と定期的に取引があるという。設計・施工関係の売り上げの半分程度は外販が占めており、顧客からNLEの技術力への期待が高まっていることを物語る。


エンジニアリング事業を紹介するニチレイロジグループ本社のサイト

 ニチレイグループが2019年度からスタートする次期中期経営計画でも、エンジニアリング事業の成長を図る方向性が打ち出される見込みだ。そうした状況を踏まえ、事業規模拡大へニチレイロジグループが注力しようとしているのが、先述の三本柱を組み合わせて提供するトータルサポートだ。顧客の冷蔵倉庫にニチレイロジの技術者が常駐し、工事完了後もさまざまな相談に対応することなどを想定している。

 井藤社長は「環境負荷軽減のための助成金などの効果で、中小企業の方々も設備更新といった対応に乗り出しやすくなった。当社としてもそのようなニーズにお応えしていく責務がある。外販の売り上げ規模を3倍に高めたい」と語る。

 技術力向上へ今年8月には日立製作所と組み、IoT(モノのインターネット)を活用して冷凍設備の故障予兆診断を実現するための実証実験を共同で始める計画を発表した。実際にニチレイロジグループの船橋物流センター(千葉県船橋市)に装置を導入、設備の稼働データを蓄積、分析して設備トラブルの予兆を迅速に発見、故障前に対応できるようにする。

 併せて、データの解析結果からより高効率の運転やメンテナンスを実現することも大きな目標だ。井藤社長は「既存の施設の機能を高められるのが大きなメリット」と指摘する。ニチレイロジは実証実験の成果と課題を踏まえた上で19年度以降は国内の拠点に横展開していきたい考えだ。実用化できればエンジニアリング事業にとっても追い風になりそうだ。


実証実験を行っている船橋物流センターの冷凍設備(ニチレイロジグループ本社提供)

物流施設提案で中小事業者のコスト負担軽減

 エンジニアリング事業は今後、別の角度から中小の冷蔵倉庫事業者らをサポートすることに照準を合わせている。物流施設デベロッパーなどと連携し、冷凍・冷蔵設備を導入した手ごろなサイズのマルチ型物流施設を開発、事業者らに提案していくことを検討している。いわば倉庫確保のコンサルティング的な業務だ。

 NLEの阿保秀之執行役員プラントマーケティング事業部長は「日本の冷蔵倉庫の過半数は中小事業者が運営している。設備がかなり老朽化しており50年以上経過しているものもざらにある。しかし、コスト負担の大きさを考えるとなかなか自前で新築、改修に踏み切れないのも事実」と新たなサポート提案を検討している背景を説明。NLEが代わりに適切な物流施設を紹介することで中小事業者らの負担を軽減したいとの狙いがある。

 NLEとしては、リース会社と組んで入居する事業者に最適な設備を提供するなど、施設設計のアドバイスから完成後の設備の保守点検、省エネ設備の提案といった一連のトータルサポートを提供していきたい考えだ。阿保執行役員は「今は事業化に向け準備を進めている段階だが、トータルサポートと同様、物流施設提案のニーズは確実に存在すると思う。20年ごろには何とかサービスの形をきっちりとつくり上げていきたい。マルチ型倉庫を提供できれば地域経済にとってもプラスになる」と意気込んでいる。 


取材に応じる井藤社長(右)と阿保執行役員

(藤原秀行)

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