「ESG経営徹底で世界一の総合物流企業を目指そう」

「ESG経営徹底で世界一の総合物流企業を目指そう」

物流関連主要団体・企業の2022年頭所感・あいさつ その3・完(抜粋)

安全は1丁目1番地、「絶対に譲れない核心的なもの」

日本郵船・長澤仁志社長

当社グループの財務状況は昨年11月の決算発表の際に説明の通り、2021年度通期は連結経常利益7100億円という当初予測をはるかに上回る数字を見込んでおり、過去最高益を大幅に更新する見込みです。当社グループに追い風が吹いたという事実はありますが、その風をしっかりと受け止め、新型コロナウイルス感染症による混乱の中にもかかわらず、日々の業務に一所懸命に取り組んでくれた全グループ社員の努力の賜物だと思っています。この場を借りて、皆さんに敬意を表するとともに、感謝申し上げたいと思います。

さて2022年の世界の動向ですが、引き続き混沌とした状況だと言わざるを得ません。例えば経済動向は、米国のテーパリングと呼ばれる金融緩和策の段階的な縮小、各国での財政再建のための諸政策、また日本における新型コロナウイルス第6波による景気悪化の懸念など、不透明な要素がたくさんあります。

さらには、米中対立の激化、あるいはウクライナ情勢など、地政学的なリスクも高まっています。ウィズコロナの状況下で、TPP(環太平洋パートナーシップ連携協定)やRCEP(地域的包括的経済連携協定)などの開かれた国際貿易システムがどこまで機能するか、さまざまな要因が複雑に内在しており、やはり今年の動向を見通すのは容易ではありません。

われわれは、世界の動向が当社グループの事業にどのような影響を及ぼすのか、常に念頭に置いて日々の業務に取り組んでいく必要があります。

1人ひとりがアンテナを高くして、そこで得た情報をきちんと発信していく、自然とそのようなコミュニケーションができる組織を目指しましょう。そして、社内外を通じて人間関係を紡ぎ、信頼関係を築いていってください。そのためには、基本的なことではありますが、あいさつや日常業務において感謝の気持ちを表すことを心掛けて下さい。

ここであらためてESG経営の重要性について触れておきます。NYKグループESGストーリーを発表以来、様々な活動を通じて意識改革を図ってきましたが、グループ全体にESG経営が浸透してきたことに手応えを感じています。このESG経営を強く推し進めていくことで、お客様や社会からの信頼を勝ち取り、それが当社グループの確固たる地位につながっていくと確信しています。全グループ社員の力を結集して、世界一の総合物流企業を目指そうではありませんか。

この実現のためにも、海・陸・空のそれぞれの現場における安全意識は大変重要です。当社グループにとって、「安全とは絶対に譲れない核心的なもの」であり、ESG経営の1丁目1番地であることをあらためて強く意識して下さい。

世界の変化への関心を高め、建設的な意見発信を

商船三井・橋本剛社長

昨年は、2020年に続き新型コロナウイルスの影響を受けた1年となりました。当社グループ役職員の安全確保に向け、新たな行動指針の制定や、職場での各種感染防止策を実施してきました。対策を進めながら日常生活および経済活動の早期正常化を期待していましたが、世界的な感染は予想を超えて長期化し、生活や働き方の変化による皆さんの負担も大変大きかったと思います。

中でも、当社事業を現場で支え続けた海上社員および当社運航船乗組員の皆さんには、感染リスクに対する不安だけではなく交代制限による長期乗船を余儀なくされる等の大きな負担をお掛けしました。皆さん全員の努力により、当社は社会的インフラを担う企業としての責任を存分に果たすことができたと思います。あらためて感謝の意を伝えたいと思います。

明るい話題としては、当社グループ社員・倉橋香衣さんの車いすラグビー日本代表チームでの活躍が挙げられます。国際大会で見事に銅メダルを獲得しました。倉橋さんの競技に取り組む姿から勇気を与えられた役職員も多かったのではないでしょうか。倉橋さんの今後のさらなる活躍を期待し、皆で応援を続けていきましょう。

昨年の世界経済は、各国の積極的な経済支援策もあり需要が急回復しました。半導体不足による生産遅延や、需要回復に対応しきれない物流の混乱、資源価格の高騰などの影響はありましたが、海運市況は全体として荷動きおよび船腹の需給バランス改善を背景に好調に推移し、当社グループの業績は顕著に改善しています。コンテナ船事業会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)の大幅増益が最大の要因ですが、ドライバルク事業・自動車船事業も昨年から大きく改善し、LNG船事業も安定的に収益を上げています。

一方でVLCCの市況低迷の影響を受けた油送船事業や、コロナ禍で旅客減少に直面したフェリー・客船事業には厳しい1年でした。しかしながら当社グループ全体として今期は史上最高益を見込んでおり、自己資本比率など主要な財務指標も大幅に改善しています。

2022年の事業環境ですが、まず新型コロナウイルスの感染が収束し、世界の経済活動と社会生活が正常化することを期待しますが、変異株の出現もあり、新型コロナウイルスの影響は今しばらく続くと考えています。加えて、世界的なインフレの拡大や米中関係の悪化等、依然として不確実性が高い1年であろうと思います。また気候変動問題に代表される、社会の持続性に関する世界的な議論が、さらに深まっていくでしょう。当社事業に大きな影響を及ぼす、環境問題、特に脱炭素をめぐる世界の動きには引き続き注目していきます。

私たちは、環境、世界経済、地政学的課題など世界の諸問題に対し、各国政府や各企業がどう対応していくのかを日頃からアンテナを高く立て見極めていく必要があります。当社は、昨年9月から世界経済フォーラムという各国の有力な団体・企業が集う場に加わり、私自身もできるだけ積極的に意見交換に参加をするようにしています。皆さんにも是非、世界の変化への関心を高め、当社グループの将来を議論する様々な機会へ積極的に参加し、建設的な意見発信をしてもらいたいと思います。

当社は既に昨年6月に「商船三井グループ 環境ビジョン2.1」を発表し、「2020年代中にネットゼロ・エミッション外航船の運航開始」「2035年までに輸送におけるGHG(温室効果ガス)排出原単位を約45%削減(2019年比)」「2050年までにグループ全体でのネットゼロ・エミッション達成を目指す」ことを中長期目標としています。

目標達成に向け、現時点では最も有効なGHG削減策であるLNG燃料船の導入を進めており、2030年までに90隻まで拡大する方針を掲げました。昨年は、LNG燃料の自動車船、ケープサイズバルカーなどへの投資を決定しました。今年はLNG燃料船への投資を加速することに加えて、洋上風力発電事業などの低・脱炭素事業への投資、DXを活用した船舶運航効率改善などの環境負荷低減への取り組みも強化していきます。

グループ経営の強化も新年の最重要課題の1つと位置付けています。当社は昨年11月30日にダイビル株式会社と株式会社宇徳を対象とする株式公開買付(TOB)を発表しました。現在は買付期間中ですが、買付が成立し完全子会社化が実現した暁には、両社がこれまで以上にグループの経営資源を効果的に活用して成長できる体制を整備していきます。両社との協業深度化が、グループ全体としてのグローバルな成長に繋がるものと確信しています。

ポストコロナ時代の新たな働き方の探求も重要なテーマです。オンラインと対面、それぞれのコミュニケーション方法の良い部分を組み合わせ、生産性向上につなげていくことが求められます。個人およびチームの創造性を高める、新時代にふさわしい新たな働き方を模索する議論を、本社の働き方改革委員会で積み重ねています。日常業務のデジタル化を進め、オンラインでのコミュニケーションが持つ効率と利便性を十分に利用することは、きわめて有効であるばかりか、当社の競争力維持の為に今や必須です。

一方、対面でのコミュニケーションが持つ価値も再認識しましょう。私自身社長就任以降、お客様・取引先の方々との面談や、グループの各拠点を思うように訪問することができず、歯がゆい思いを抱いています。対話が減れば、自らの意思決定が正しい方向を向いているかどうか検証する機会も、新しい着想を得る機会も限られます。感染状況が収束した際には、就任1年目のつもりで、各地で色々な方々と意見交換の機会を設けたいと思っています。

私は昨年発行のMOL REPORT 2021において、自らの役割と今後の抱負として「当社をあらゆる面で優良企業とイメージされる存在にしたい」と述べました。それは、サービスの質はもちろん、企業体力や収益力、人的資源の質の高さ、何のために会社があって何を目指していくのかという明瞭な経営方針、あるいは高い技術力や社会的信頼など、あらゆる面において、そして日本のみならず世界中で、高く評価をしてもらえる企業になるということです。

これは商船三井グループの役職員にとっても、安定した事業環境の下で、責任感と誇りを持って働くことができることを意味します。当社グループは、従来の海運業にとどまらず、海洋事業、物流事業や不動産事業の拡充など、業容を幅広く拡大しようとしています。昨年4月に発表した新たなグループ企業理念、グループビジョン、MOL CHARTSに基づいて、経営計画の着実な実行やサステナビリティ課題の解決を通じ、企業価値の向上を目指していきましょう。優良企業で有り続けるためには、コンプライアンスの遵守は当然のことです。そして、当社事業の根幹は安全の確保であることをあらためて皆さんに強調したいと思います。

環境対応を成長機会と捉え、さらに注力する

川崎汽船・明珍幸一社長

世界経済は、総じてコロナウイルス感染症による影響の落ち込みから回復を続けています。コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期は不確実ですが、ワクチン接種の進展や各国財政支援など景気刺激策もあり、引き続き回復基調を維持、さらに 2022年以降の世界経済は、政策効果に支えられた回復から、自律的な回復へとシフトして行くのではと期待しています。

一方、懸念材料としては、コロナウイルスの変異株による感染再拡大、米中対立など地政学的な要因による貿易構造の変化などが挙げられ、ウィズコロナの時代に入る中、実体経済への影響もしっかりモニターしなければなりません。

当社の業績を振り返りますと、2021年度上期は過去最高益を記録しました。持分法適用会社のオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)の貢献が大きいですが、自営事業も大きく改善しました。新型コロナウイルス感染拡大による輸送需要減退で業績に大きな影響を受けたドライバルクと自動車船事業、物流事業などコンテナ船以外の製品物流セグメントの回復も今期の改善を牽引しています。昨年度に船隊の適正化としてドライバルクと自動車船を中心に経済性に劣る船や老齢船約50隻を整理する方針を決め、このうち自動車船については今年度上期までに終了、ドライバルクの船隊適正化も今年度中に前倒しで進めており、来期からのさらなる収益改善効果が期待できます。

エネルギー資源輸送事業ではオフショア支援船事業は市況低迷の継続により、苦戦しましたが、LNG船、電力炭船、VLCC、LPG船などが、中長期の用船契約の下、順調に稼働し、安定収益に貢献しました。尚、課題であった欧州オフショア支援船事業は将来の経済性に鑑み、今般撤退による構造改革を決定しました。

コンテナ船事業ならびに自営4事業部門の業績改善により、今期中に船隊適正化、不採算事業の構造改革を進め、負のレガシー整理に取り組むことで、今年度の復配にめどを付けることができました。

業績の改善により当社は新しいフェーズを迎えています。現在の経営計画では30年度までに自己資本4000億円以上とする計画でしたが、昨年の9月末時点で4696億円となり、自己資本比率は4割まで回復しました。過去に数回の構造改革を進めた結果、棄損した自己資本を相当程度修復することができ、今期に残る船隊適正化や不採算事業の構造改革をやり遂げることで、自営事業の競争力の回復を図り、今後はより成長に重点を置いて前に進んでゆかなければなりません。

昨年7月から開始した未来創生プロジェクトでは当社の企業価値向上へ向けた検討が進んでいます。さらに当社を強くするためにどの分野に経営資源を投入していくのか、また、環境対応船の提供など、環境負荷低減や輸送品質の改善に向けて、当社がいかに付加価値を提供していくのか、新たな事業計画に織り込む必要があります。

既存事業の強化と成長戦略を同時に追求するのは容易なことではありませんが、継続的な財務基盤の拡充と安定収益の確保を維持しつつ、リターンとのバランスが取れるリスクを見極めながら、新たな取り組みも進めていきたいと思います。この状況をチャンスと捉えて、成長戦略と規律ある投資を盛り込んだ新たな経営計画を策定し、皆さんと一緒に知恵を絞りさらなる飛躍を成し遂げ、企業価値向上につなげたいと思います。

言うまでもなく、安全・安心な高品質サービスは当社のサービスの中核を成すものです。コロナ禍の中でも、サプライチェーンの重要な一翼を担う当社の強みを徹底して行くことで、お客様に選ばれ続けられるよう、海運のプロとして全役職員で取り組んで行きましょう。

サステナビリティへの取り組み、特に環境対応については、成長機会ととらえ、さらに力を入れていく必要があります。既に多くのお客様が、バリューチェーンの再構築も視野に、製品のライフサイクル全体でのGHG排出削減を目指しています。製造過程だけでなく、素材や部材、完成品の輸送過程で排出されるGHG削減を実現するために、私たちはより高い付加価値を持つ最適なソリューションをお客様に提案しなければなりません。

カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギー構造の変化もまた、中長期的な「機会」をもたらします。洋上風力発電支援船をはじめとする再生可能エネルギーの開発に必要な物資の輸送、あるいは水素やアンモニアのような新たなエネルギーや回収した CO2 の輸送需要などが拡大することが予想される中、サプライチェーンの構築とその輸送を担うサービスの提供は、当社にとって大きな成長機会となります。

昨年11月には環境対策の長期指針『“K”LINE 環境ビジョン 2050』の一部を見直し、従前、IMO と同じ目標であった2050年までに排出量半減という目標に替えて、新たに2050年までに『GHG排出ネットゼロに挑戦』を掲げました。具体的な取り組みとして、既に竣工済みのLNG燃料焚き自動車船1隻に加えて、8隻を新造整備、LNG燃料焚きケープサイズバルカーを1隻、LPG焚きLPG運搬船 1隻の発注を決めており、さらにゼロエミッション船を2020年代後半までのできるだけ早い段階で導入することを目指しています。

GHG削減戦略委員会において、次世代代替燃料、安全環境支援技術の両プロジェクトはさらに加速します。デジタル化の加速が進み、価値観が変容する中、当社は陸上業務の効率化のみならず、海上従業員の作業負担軽減、そして安全運航を支援する取り組みを進めています。先に発表したAIを活用した機関プラントの運転支援システム、および見張り・操船支援システムの開発、さらにはAI技術を駆使した船舶データ解析技術の向上など、デジタル技術を活用して、当社のコアバリューである安全・環境・品質を磨き上げ、DXを推進していきます。

最後に川崎汽船グループの皆様におかれましては、国内のみならず海外においても様々な制約・制限を受ける生活を余儀なくされる困難な状況下でも日々の業務と感染対策を両立させて取り組んでもらいました。海上職員の方についても、乗船、下船の交代に多大な困難を伴う中、船を1日たりとも止めないという強い決意の下、安全運航に取り組んでもらいました。あらためて感謝申し上げたいと思います。

限界を超えた「発想力」で新たな価値を提供

西濃運輸・小寺康久社長

わが国経済は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響の下にありますが、行動制限も段階的に緩和されてきたことから、徐々に持ち直しの動きが見られます。ただ、新たな変異株の出現による感染拡大への懸念が生じていることから、まだまだ楽観できる状況ではありません。

こうした中ではありますが、本年2月には茨城県に龍ケ崎支店を新設、名古屋西支店を移転新築します。いずれも倉庫機能を併せ持つトラックターミナルであり、『ロジのセイノー』として、お客様に利便性の高いロジスティクスを提供できる施設となっています。また、物流に関してお困りのお客様には、業界の窓口として、当社のインフラにこだわらず、他社のサービスも含めてお客様に最適な物流を提案する新サービス「Ippo」も展開しています。全ては「お客様の繁栄」のために、社内外の力を結集し、既成概念にとらわれない新たな価値を創出していきましょう。

今年のセイノーグループのスローガンは「新成」です。従業員1人ひとりも、会社としても、新たな成長を遂げ、1歩ずつ着実に新たな成果を残していくことが必要です。SEINO LIMITの精神の下、限界を超えた「発想力」で新たな価値を提供し、お客様の繁栄に貢献していきましょう。

固定観念持たずに自分の職務を見直し、新たな業績改善に挑戦を

トナミホールディングス・綿貫勝介社長

コロナ禍によるニューノマル時代に入り、従業員の皆様には感染防止対策を徹底しながら業務運営に精励いただいこと、心より感謝を申し上げます。

物流業界においてはAI、ロボット活用による「業務の自動化省力」が加速し、「ドローン」による配送や「自動運転技術」「配送ロボット」など、テクノロジーを駆使した新しい物流が見え始めています。一方で、ESGおよびSDGsに対する重要性が増しており、これらの事業活動を通じ企価値を高める時代へと変わりつつあります。

本年はコロナと共生する道を確かなものにして、第22次中期経営計画の初年度の達成に向け、全社一丸で業績向上に努めていくとともに、新変異株の状況いかんでは、再び暗いトンネルに入るのかどうか、回復と成長への道筋が問われることになります。

従業員の皆様には、固定観念を持たず、各自が問題意識を持って、自分の職務を見直し、新たな業績改善に挑戦していただきたいと思います。

(藤原秀行)

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