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【独自】震災11年、東北は「物流施設適地」の存在感高まる

【独自】震災11年、東北は「物流施設適地」の存在感高まる

復興道路完成が後押し、2024年問題への対応も追い風に

東日本大震災の発生から3月11日で11年となった。東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射性物質拡散の影響でいまだに立ち入りを許されない地域が残るなど、さまざまな課題が山積しているものの、インフラ整備など東北地方の復興は進んでいる。産業が動きを取り戻しているのに伴い、これまで希少な存在だった先進的かつ大規模な物流施設のニーズが盛り上がっている。

さらに、政府が2024年度からトラックドライバーの長時間拘束への規制を強化する「2024年問題」に対応するため、運送距離を短縮しようと東北エリア内に物流施設を構える傾向も見られる。被害総額が内閣府の推計で約16兆9000億円に上るかつてない規模の自然災害を経て、東北エリアはより物流施設適地として存在感を高めている。

製造品出荷額等は震災前水準まで回復

「仙台港や仙台空港近隣の工業団地では全区画申し込みが完了したところもある」。プロロジスが昨年9月にオンラインで開催した東北地方の物流拠点戦略に関するセミナーで、シービーアールイー(CBRE)の担当者が東北経済の現況について前向きな材料を紹介した。賃貸物流施設に関しても、宮城エリアを例に取れば、既存の大型物件が全て満床で、震災後に供給があった約7万8000坪以上も順調に空きスペースを消化しているという。

担当者は特に被害が大きかった宮城、岩手、福島の3県について、2021年の各県主要エリアにおける物流施設ニーズの動向として「空室が限られているので、空きのある物流施設がどこに所在しているかに基づき、戦略を練り上げる企業が非常に多くなっている」と指摘。より最適な物流施設を慎重に吟味する傾向が強まっているとの見方を示した。

経済産業省東北経済産業局が震災10年目の2021年2月公表した資料によると、製造品出荷額等は震災前の2010年を100とした場合、特に震災の被害が甚大だった宮城県が2018年に131、岩手県が130、福島が103と、震災前の水準まで回復している。ただ、沿岸部の自治体の間では回復状況に差があるなど考慮すべき点は残っている。


(経産省東北経済産業局資料より引用・原典は復興庁資料)

昨年12月には、復興道路として建設が進められてきた自動車専用道路「三陸沿岸道路」のうち、最後に残っていた岩手県の普代村~久慈市間25キロメートルが完成。仙台市~青森県八戸市の約359キロメートルが震災から10年余りを経て全線開通した。

国土交通省や岩手県によると、震災前は車で約8時間半かかっていた仙台市~八戸市間が全線開通で3時間以上短縮。三陸沿岸道路は一部を除いて無料で通行可能のため、水産や物流などにプラスの効果が見込まれる。

併せて、岩手・宮城・福島の東北3県では沿岸と内陸を結ぶ4本の復興支援道路が開通済み。三陸沿岸道路を含めれば総延長約550キロメートル超の新たな幹線道路が稼働している。

国交省は復興道路や復興支援道路の経済効果として、青森と岩手、宮城の3県は両道路の沿線で新たに工場245カ所が立地、福島県内でも復興支援道路沿線の相馬港エリアに工場が13件新規で進出しているなどと説明。「昨年12月の全線開通後は特に大型車の交通量の伸びが大きく、被災地の物流を支援している」との見方を示す。

三陸沿岸道路では岩手県内の大型車交通量が震災前の同エリアと比べて平日は1.3~1.7倍に伸びているという。内陸部の天候悪化時に代替ルートとして三陸沿岸道路が使われ、渋滞を抑制できる効果も見込まれている。

都市部以外でもマルチテナント型を開発

こうした動きに伴い、デベロッパーも東北エリアを注視している。大和ハウス工業は21年11月、岩手県金ケ崎町でマルチテナント型物流施設「DPL岩手金ケ崎」の工事に着手すると発表した。鉄骨造の平屋建て、延べ床面積は2万308平方メートルで22年9月の竣工を予定している。

同社が岩手県内で物流施設を手掛けるのはこれで8棟目だ。金ケ崎町の工業団地内で、新施設を含め計3棟を開発することを検討している。同社が22年度の着工を予定しているマルチテナント型物流施設の計画を見ても、宮城と岩手の両県で3棟ずつの計6棟が含まれている。

同社の浦川竜哉取締役常務執行役員は「長年、最新鋭の物流施設の供給がなかったエリアには地元の企業の方々のニーズが溜まっている場合がある。丁寧に対応していきたい」と語る。同社が得意とする、工業団地に組み合わせる形での物流施設建設が今後もメーンとなりそうだ。


「DPL岩手金ケ崎」の竣工イメージ(大和ハウス工業提供)

プロロジスも昨年8月、岩手県矢巾町でマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク盛岡」を開発する方針を公表した。地上3階建て、延べ床面積は約10万平方メートルと3大都市圏以外のエリアでは異例の規模を計画している。同社が岩手県内でマルチテナント型物流施設に着手するのは初めてだ。

同社の山田御酒会長兼CEO(最高経営責任者)は「以前は東北6県の物流の中心が仙台だと考えていたが、東北の中でも北の青森、秋田、岩手の3県は経済情勢などが異なる、その3県の動向をどこから見るかというと、それは盛岡からになると指摘された。盛岡エリアを実際に見に行っていろいろと市場動向を調査してみたところ、結構な規模があることを実感した」と岩手県進出の背景を明かす。

ただ、あるデベロッパーの首脳は「東北エリアは当然ながら、都市部よりは慎重にプロジェクトを進める必要がある。マルチテナント型とはいっても、ある程度需要のめどを付けた上で開発しなければいけないので、新規に参入したデベロッパーは東北エリアへの進出はなかなか厳しいだろう」と解説する。


「プロロジスパーク盛岡」の完成イメージ(プロロジス提供)

人口は25年間で28%減の推計も

また、東北エリアでも新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人や物の移動が制限されている点は物流施設開発にとって逆風となる。さらに、東北エリアは構造的な問題として、少子化・高齢化に伴う深刻な人口減少に直面している。財務省東北財務局が2021年6月に取りまとめた調査を見ると、総務省の国勢調査では東北エリアの人口が1990年の970万人から2015年には900万人と約8%減少。他のエリアより減少の割合が大きくなっている。国立社会保障・人口問題研究所が18年に実施した将来人口推計では、2045年には約620万人と、20年推計値から28.0%も落ち込む計算だ。全国平均の15.1%減を大きく上回っている。

産業の復興が進むものの、地域の原動力となる人口が減れば物流施設を稼働する上で不可欠な労働力確保に大きな支障を来すのは火を見るより明らかだ。震災で受けた打撃から回復して経済成長を続ける上では物流施設の進出も大きな役割を果たすだけに、官民が連携した人口減少対策がより重要さを増している。

(藤原秀行)

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