日立などから株式9割取得、海外展開加速を後押し
日立製作所は4月28日、グループの日立物流株式を米投資ファンドKKRに売却すると正式発表した。
日立が保有している日立物流株式約4割のうち、約3割を譲渡し、保有比率を10%まで下げる予定。日立は2023年3月期に連結ベースで1400億円の株式売却益を計上する見込み。
KKRは今年秋以降、日立物流に対するTOB(株式公開買い付け)などを実施、議決権ベースで日立物流株式の90%を保有する予定。日立物流は4月28日、TOBに賛同するとともに株主へTOB応募を推奨する意向を表明した。
日立物流はKKRのノウハウを生かし、海外の有望な物流企業のM&Aなどを加速、目標に掲げている「グローバル3PLリーディングカンパニー」実現へ着実に事業を成長させていきたい考えだ。
日立はこのTOBに応じず、別途、日立物流株式を譲渡する。KKRの取得額はトータルで6000億円を大きく超える見通しで、日立物流株式は上場廃止となる見込み。
日立は2009年3月期に連結当期損益が7873億円の巨額な赤字に転落したのを契機に、ITや環境などの成長分野に注力するためのグループ再編を展開。投資家などから批判が強い、親会社と子会社がともに上場する「親子上場」を解消する意味からも、これまでに日立工機、日立キャピタル、日立化成、日立ハイテクノロジーズといった有力な上場子会社の株式売却や完全子会社化を促進している。
日立物流の売却でグループの再編は一段落するとみられ、今回の売却で得た資金を成長領域へ投入していく構え。ただ、日立は今後も日立物流株式を一定程度保有し続け、物流業界向け情報システム開発や物流領域の脱炭素促進などの面で引き続き日立物流と協力する方向だ。
(藤原秀行)