ロボット導入などで出荷能力1.6倍目標、「受注翌日のユーザー始業時には配達完了」促進
工具などのインターネット通販大手MonotaRO(モノタロウ)は5月24日、兵庫県猪名川町に2021年11月開設した新たな物流拠点「猪名川ディストリビューションセンター(DC)」をメディアに公開した。
プロロジスが開発した地上6階建ての大規模物流施設「プロロジスパーク猪名川1」に入居しており、今年4月に本格稼働を開始した。1期と2期に分けて順次機能を増強していく方針で、最終的にフロアの大半となる約18万9000平方メートルを使う予定。総事業費は約160億円。
商品のピッキングを支援するAGV(無人搬送ロボット)を大量に導入するなど、モノタロウがこれまでに手掛けてきた物流拠点の流れを踏襲し、庫内作業の自動化・省力化を徹底して進めているのが大きな特徴だ。プロに見せたい物流拠点の特別編として紹介する。
猪名川DCが入る「プロロジスパーク猪名川1」(昨年11月撮影)
「プロジェクションマッピング」でピッキングミスを回避
モノタロウは21年12月期の連結売上高が前期比2割増となるなどネット通販が好調で、今後も右肩上がりの伸びを見込んでいるため、大型拠点を開設して商品の取扱量拡大に対応するのが狙い。猪名川DCは2023年に全面稼働させ、他の拠点も合わせたグループ全体の出荷能力を現状の1.6倍に相当する1日当たり18万行まで高める計画だ。トータルの在庫能力は最大で約60万点まで達する見込み。
猪名川DC内で記者会見したモノタロウの鈴木雅哉社長は「お客様が、その日の仕事が終わるまでに発注すれば、翌日の仕事が始まるころには商品が届く、という流れを確実にしていきたい」と狙いを強調。出荷能力を高め、発注の締め切り時間をより後ろ倒しできるようにすることを目指す意向を示した。
猪名川DCはモノタロウが現在、兵庫県尼崎市に構えている「尼崎DC」の代替拠点として位置付けており、2022年中に尼崎DCの機能を猪名川DCに全て移し、規模を拡大する方針。
AGVは日立製作所製の「Racrew(ラックル)」を最終的に約800台導入する計画。現状は約400台が動いている。Racrewは商品が入った棚の下に潜り込んで持ち上げ、ピッキング作業を担当する従業員の元まで運搬する。従業員が広大な物流拠点のフロアを歩き回って商品をピッキングする必要がなくなり、業務の大幅な負荷軽減と生産性向上につながるとみている。
2階の保管・ピッキングエリアで稼働するRacrew
現状は1階が入出荷エリア、2階が保管・ピッキングエリア、3階が梱包エリア、5階が特に出荷頻度の高い商品を保管しておくバックヤードのエリア、6階が大型商品を専門に保管、出荷するエリアとして運用している。将来は4階も保管・ピッキングエリアとなる予定。
1階でサプライヤーから届いた各商品の検品を済ませた後、従業員が棚に商品を積み付けると、Racrewが棚を搬送機まで自動的に運び、搬送機に乗って2階まで移動。2階に持ち上げられた棚は、Racrewが適切な場所に配置する。
オーダーを受けてRacrewがピッキング対象の商品が入った棚をピッキングエリアの従業員まで搬送すると、該当する商品の位置と数を段ボールのケースに映し出す「プロジェクションマッピング」で明示し、商品の取り間違いを防いでいる。
ピッキングエリア。左からRacrewが棚を運んできて、商品をピッキングして右側の折り畳みコンテナに入れる
ピッキングの対象商品の位置と数を表示
3階までは出荷する商品が入った折り畳みコンテナをコンベヤで移し、従業員が段ボールに詰めていく。その段ボールは自動梱包機で、商品の量やサイズに応じて適切な形に梱包、出荷エリアへ再びコンベヤで移していくとの流れだ。
3階の梱包エリア
自動梱包機に段ボールケースが入ると、商品に合ったサイズで梱包する
庫内のコンベヤで折り畳みコンテナが流れていく
ラックが整然と立ち並ぶ5階の大規模保管エリア
(藤原秀行)