コストアップ分の商品価格・サービス料金転嫁割合、運輸・倉庫業は平均下回る

コストアップ分の商品価格・サービス料金転嫁割合、運輸・倉庫業は平均下回る

帝国データバンク調査、全体では7割が「値上げ済み・予定」

帝国データバンク(TDB)は6月15日、商品価格やサービス料金の値上げに関するアンケート調査結果を公表した。同様の調査は今年4月に続いて2回目。

自社の主な商品・サービスについて、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻による燃料・原材料価格高騰によるコスト上昇を受け、4月以降に値上げしたり、値上げすると答えたりした企業の割合は7割近くに到達。6月以降に「値上げした/する予定」の企業は合計で4割近くに上った。

4月の調査時に比べると、「7~9月ごろに値上げ予定」の企業の割合が10ポイントアップ。 業界別で見ると、卸売業や製造業で値上げが進む一方、サービス業や運輸・倉庫業で全体よりも値上げを実施した企業の割合が低く、コストアップの価格転嫁が進んでいないことをあらためて裏付けた。

TDBは「多方面からの大幅なコストアップに耐えきれなくなった企業による値上げは、夏以降も続くことが予想される」と展望した。

調査は6月10~13日、インターネットで実施、1701社が有効回答を寄せた。


(以下、いずれもTDB提供)

自社の主な商品・サービスの値上げ動向について尋ねたところ(複数回答、以下同じ)、42.3%の企業が「4~5月の間に既に値上げした」と回答。また、「22年6月に値上げした/する予定」は 14.1%、「7~9月ごろに値上げ予定」は19.9%、「10~12
月ごろに値上げ予定」は9.3%となった。TDBは「企業は今後も値上げを考えていることが分かった」と指摘した。

6月以降に「値上げした/する予定」の企業は合計で37.0%となった。「4~5月の間に既に値上げした」企業と合わせると、「値上げ実施済・予定」企業はトータルで68.5%に上った。半面、「今後1年以内で値上げする予定はない」は7.4%、「値上げしたいができない」は14.6%あった。

企業からは「原油価格の高騰、人件費や傭車費の値上げによる輸送費の上昇、セメント価格の値上げが重くのしかかっている」(建設石材窯業製品卸売)との声があった。

TDBによれば、原材料費の値上がりや原油価格の高騰に伴う物流費上昇、急激に進む円安などが重なったことで起きた急激なコストアップが、企業努力で吸収できる限界を超え、値上げに踏み切ったとの声が多く聞かれたという。

4月の調査結果と比べると、「7~9月ごろに値上げ予定」の企業の割合は11.3ポイント上昇(4月調査8.6%→6月調査19.9%)、「 10~12月ごろ値上げ予定」の企業は6.7ポイント上昇(2.6%→9.3%)しており、2カ月間で企業の値上げを検討する動きが拡大したことを裏付けた。

「4月以降に値上げ実施済・予定」の企業を業界別で見ると、「卸売」(87.6%)や「製造」(79.9%)の割合が高く、全体平均(68.5%)をそれぞれ10ポイント超上回った。より細かく業種別の動向を分析すると「飲食料品・飼料製造」が91.3%、「建材・家具、窯業・土石製品卸売」が89.1%、「飲食料品卸売」が88.5%で、これらの業種で値上げがとりわけ進んでいることが分かった。

企業からは「原材料、調味料・包装資材の度重なる値上がりが、自社内のコスト削減レベルを大きく上回るため、自助努力では吸収できない」(野菜漬物製造)、「木材・コンクリートなどはウッドショックや急激な円安、ロシア問題などで、既に尋常でないほど価格が上昇し、値上げせざるを得ない状況にある」(木材・竹材卸売)といった意見が挙がった。いくつものコスト上昇要因を背景とした原材料や仕入れ商品・部品などの大幅な価格上昇に企業が耐えきれず、値上げに踏み切るという声が多く聞かれたという。

一方、「情報サービス」(12.0%)、「不動産」(29.6%)、「運輸・倉庫」(51.2%)の業種は値上げを実施している企業の割合が低くなった。「値上げして自社のビジネスチャンスを損ないたくない」(ソフト受託開発)、「値上げをすれば契約打ち切りのリスクがかなり高い」(一般貨物自動車運送)と、他社との競合などから人件費や燃料費などの上昇分を転嫁しにくい状況がうかがえた。

また、小売業や個人向けサービス業を含む「個人消費関連」は、「値上げ実施済・予定」企業が71.2%となった。TDBは「止まらない値上げラッシュによって、消費者心理の一段の冷え込みが懸念される」と解説した。

「値上げ実施済み・予定」と回答した企業の声 (【 】内は主要な商品・サービス)
・【佃煮・煮豆・惣菜】今までにないくらいの仕入コストの上昇幅であり、段階的に値上げを何度もされ、上限をどこで見ていけばいいか予測が付かない。一度値上げはしたが、仕入先からさらに値上げを要請されており、再値上げを実施する方向で検討している(総菜製造)
・【冷凍食品】円安により輸入仕入れ品が高騰し販売価格へ転嫁している。また、電気料金の値上げに伴い冷凍商品の保管費用も上げている(冷凍食品卸売)
・【建築材料】石油精製品の樹脂建材品を取り扱っており、原油価格の高騰および円安は直に影響を受けるため、値上げせざるをえない(家具・建具卸売)
・【機械器具】2021年より鋼材関連(鉄・ステンレス・銅合金・アルミ)で毎月値動きがあり、顧客からの注文書を見るたびに価格変更の依頼を提出している。今後も継続して月次で値上げを申請し続ける(金属部品製造)
・【電気工事】購入品(電気機器類、電線ケーブルなど)について値上げをしているが、労務費に関しては出来ていない(一般電気工事)
・【時計・宝石】舶来腕時計で円安の影響が多大にあり、スイス・ドイツのブランド品を4~6月に値上げした(宝石貴金属製品小売)

「値上げしたいが、できない」と回答した企業の声
・【監視システム】新規入札は競争が激しく、値上げはできない(パッケージソフト)
・【情報サービス】人件費がほとんどであるが、物価が上がっているため、給与(人件費)を引き上げて価格に転嫁したいという希望はある(ソフト受託開発)
・【貸切バス】値上げはしたいが需要がないため、同業者間で足並みが揃わない(貸切旅客自動車運送)
・【不動産仲介】宅建業法で受領上限額の規定がある(不動産代理・仲介)

(藤原秀行)

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