【独自・関西物流展】自動化技術多数登場、物流業界の強い危機感反映

【独自・関西物流展】自動化技術多数登場、物流業界の強い危機感反映

「オールジャパン」の重要性高まりを体現

西日本最大の物流に関する展示会「第3回関西物流展(KANSAI LOGIX2022)」は、直面する人手不足やEC荷物の取扱量増大などの課題への解決策として、自動化・省力化のための技術が多数登場。その精度を競い合っており、背景にある物流業界の危機感の高まりを色濃く反映していると感じさせた。

そうした危機感は西日本でも、東日本と同じく強いことをあらためて示しており、トラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」が間近に迫る中、今回の関西物流展は物流業界の「オールジャパン」の取り組みがますます重要になっていることを体現できた場といえそうだ。


3日間を通して盛況だった会場

GROUNDは物流施設内でロボットやマテハン設備、WMS(倉庫管理システム)などを連携させ、業務全体の可視化やオペレーションの最適化を図る独自の管理システム「GWES(ジーダブリュイーエス)」を紹介。さらに、自社で開発している自律移動型のピッキング支援協働ロボット「PEER(ピア)」の新しいタイプの試作機もお披露目した。

現状より運搬可能な荷物の最大重量を2倍以上の約100キログラムに引き上げ、より多様な物流現場に投入できるようにしている。併せて、中国Standard Robots製の搬送ロボットや無人フォークリフトなども展示している。

ギークプラスはプラスオートメーションとタッグを組み、新たなソリューションを提案。ギークプラスが取り扱っているピッキング支援物流ロボットと、プラスオートメーションがレンタルしているソーティングロボットを組み合わせ、庫内作業の広い範囲を自動化しようとしているのが特色だ。どちらか一方のロボットだけを使うより生産性が向上、少ない台数でも庫内作業を効率化できると連携効果をPRしている。

フランスで物流ロボット開発などを手掛けるスタートアップのExotec Solutions(エクゾテックソリューションズ)は、「ユニクロ」を展開しているファーストリテイリングが採用したことで知られる、ロボットを活用した自動荷ぞろえシステム「Skypod(スカイポッド)」を展示。高さ12メートルのラックをロボットが昇降し、アイテムの入ったビン(容器)を取り出して床を走行、ピッキングステーションへ運ぶ。システムを導入していない状態と比較し、約5倍の速さで荷詰め作業を行えると性能の高さをアピールしている。


Skypod

富士工業は全国販売代理店を務めている中国・深圳のロボットメーカーPUDUの搬送ロボット「HolaBot(ホラボット)」などを出展。飲食店での配膳用途のイメージが強い同社のロボットだが、サムスンの韓国工場をはじめ、製造・物流現場でも軽量物の搬送に使用が広がっているという。

HolaBotは事前に呼び出し地点・搬送地点を登録した上で、スマートウォッチやスマートフォンのアプリでロボットを呼び出し、指定場所まで荷物を搬送させる仕組み。呼び出し・搬送のポイントは複数登録が可能で、耐荷重は60キログラム。足下に搭載したバッテリーは取り外し可能で、充電による時間ロスなく使用できるのが特徴だ。

PUDUは8月にSwiftBotという新しい搬送ロボットを日本で正式発表する予定。基本的な仕組みはHolaBotと同様だが、荷物を搭載する部分にカバーを付け、より衛生面に配慮した。また、前方だけでなく後方にもカメラを搭載し、例えば店舗などで後方に人が居る場合に自動で道を開ける機能を追加した。


HolaBot

梱包や輸送効率化支援もカバー

ロボット以外のマテハン設備やシステム、DX促進のためのツールも、出展者が昨年以上に、積極的にアピールしていた。KURANDO(クランド)は庫内作業の各工程別の進捗状況や収支実績を可視化するツール「Logimeter(ロジメーター)」を出展。同社はプロロジスとも連携し、テナント企業にLogimeterを提案している。

担当者は「今回はかなり盛況。当社では製造業の相談が今のところ多い。各業務の収支がはっきり見えるという点に皆さん驚かれ、関心を寄せられている」と手ごたえを感じている。


KURANDOブース

オプティマインドは、主力サービスとしているラストワンマイル特化の輸送効率化支援システム「Loogia(ルージア)」を出展。最適な配車計画の立案もサポートしており、既にローソンやイケア・ジャパンなどが利用していると実績をアピールしている。

担当者は「『2024年問題』を見据え、どれだけ少ない台数で運ぶことができるか、逆にきちんと運びきるためにどれだけの台数を抱えていればいいのかを心配されている企業が多い。配車係の属人的業務、高齢化、人手不足といった以前からの問題も変わらず存在している」と指摘。CO2排出削減のニーズも近年は強まっているという。

ゼネテックは日本総代理店を務める米FlexSimの倉庫業務最適化の3Dシミュレーションソフトをアピール。6月17日にリリースした「FlexSim2022」はSCM、物流の機能を強化しており、GIS(地理情報システム)と連携してシミュレーションの範囲を倉庫内から調達や輸送の最適化まで広げているのが特徴だ。

担当者によると、新型コロナウイルス感染拡大下で物流現場も自動化への関心が高まったが、機器導入は効果が分からないと決断が難しく、自動化効果のシミュレーションの必要が生じ、相談が増えている一方、既に自動化が進んでいる企業も現状を知り見直すための引き合いが伸びているという。

担当者は「例えば通販事業者の中には急がない荷物は棚を持ち上げてスタッフのところまで運んでくるGTP型の搬送ロボットを使用し、急ぐ荷物は人間がピッキングするといった体制を取っているところもある。そういった複雑なオペレーションにもAIを用いたシミュレーションが有効だ」と強調する。

PALTEKは、紙緩衝材世界最大手の米Ranpak(ランパック)が展開している、紙梱包資材活用による物流コスト低減と脱プラスチックの促進を提案。高精度の測位装置を使ったトラック・車両管理ソリューションも案内するなど、多彩な展示内容となった。


Ranpakの紙緩衝材システム

オリックス・グループで産業用ロボットのレンタルなどを手掛けるオリックス・レンテックは、中国・深圳のスタートアップVisionNav Robotics(ビジョンナビロボティクス)の自動フォークリフトのオペレーションをデモ公開。物流業界ではフォークリフトのオペレーターも不足が深刻化してきているだけに、オリックス不動産ともタッグを組み、庫内作業をトータルで自動化し、新たな価値をテナント企業に提供できるようにすることを訴えている。


VisionNav Roboticsの自動フォークリフト

伊東電機はMDR(モータローラ)式モジュールで構成された自動仕分けシステムと、レイアウトを柔軟に変更できるコンベヤシステムをプレゼンテーション。IoTにも対応するなど、高性能のコンベヤを精力的にアピールしている。


伊東電機のブース

ワコンはコロナ禍の営業時間短縮や人手不足により飲食店への配送で置き納品が増えているのを受け、温度管理の課題を解決する高性能の保冷ボックスや保冷剤を展示。コールドチェーンの一端を担うことに強い意欲を見せる。


ワコンのブース

英国の特殊ポリマー(樹脂)製防護バリアメーカーA-Safeは物流施設敷地内で「歩車分離」や、車両から設備を保護する防護柵を出展。スチールと比べ弾力性があるため、衝突が起きた際の車両や床面のダメージが少なく、コスト面に優れている。大規模な導入を行った住電商事の滋賀物流センターの事例を公開、関心を集めている。


A-Safeの製品

(川本真希、藤原秀行)

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