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【独自】ラピュタロボティクス・ガジャンCEO単独インタビュー(前編)

【独自】ラピュタロボティクス・ガジャンCEO単独インタビュー(前編)

国内のAMR採用数は900台目指す

物流現場向けロボットの開発などを手掛けるラピュタロボティクスの創業者、モーハナラージャー・ガジャン代表取締役CEO(最高経営責任者)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

同氏はスリランカ出身で、日本の東京工業大学でロボット工学を専攻し、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で博士号を取得、2014年にラピュタロボティクスを設立した。同氏は物流現場でロボット活用が進んでいない現状を踏まえ、AMR(自律協調ロボット)によるピッキング作業効率化のニーズがまだまだ見込めると期待。国内で同社製AMRの採用台数を900台まで伸ばしたいとの考えを示した。

また、将来はAMRに加え、自動フォークリフトやAGV(無人搬送ロボット)の領域にも事業を広げていくことに意欲をのぞかせた。インタビュー内容を前後編の2回に分けて紹介する。


ガジャンCEO

現在は実稼働100台に到達

――まず現状のロボット事業について、どういう状況でしょうか。
「日本では製造現場は先行してロボットが活用されていますが、それでも作業スタッフ100人に対してロボットは3台未満といった現場が多いですし、残念ながら物流現場はそれ以上に導入実績が少ない。まず初期費用がかかりますし、物量の変動に合わせてロボットの台数などを調整できる柔軟性もまだまだ十分備わっていません。物流業界でも3PL事業者の方々のお話を伺うと、昔は荷主企業と業務受託で5年といった長期間の契約ができたんですが、今は18カ月といった短期間になってきていますし、次の荷主はどういう荷物を扱うのかも分からない状態ですので、なかなかそういう中で数億円という巨額を投じてロボットやマテハン設備を導入するのは難しい」

「そうした現状に対し、ロボットを制御するソフトウエアで取り扱う物量に応じて台数など柔軟に対応できるようにしようとする試みが広がっています。そうすることで、投資資金に必ずしも余裕がない企業でもロボットを展開できる可能性が出てきます。われわれも小型のAMR(自律走行型協働ロボット)『ラピュタPA-AMR』とクラウドロボティクス・プラットフォーム『rapyuta.io』、群制御AIを組み合わせ、ピッキング作業の効率化を果たそうと注力しているところです」

「当社のAMRは現場のレイアウトなどを大きく変更せず速やかに導入できるのが強みです。作業スタッフはAMRの指示に従って作業を進めれば正しい商品をピッキングできます。群制御AIで複数のAMRを同時に制御していますから、緊急のオーダーが入っても自動的にピッキングの優先順位を設定し、ロボットに割り振りますので作業を止めることなく対応できます。作業員1人にロボット2~3台を割り当てるのが基本で、生産性は2倍に向上することが期待できます」

――ユーザーの反応はいかがですか。
「おかげ様で好評です。例えば、佐川グローバルロジスティクスさんは2年前に初めて千葉の拠点でAMRを採用していただいたのですが、昨年追加でまた大阪の拠点に導入していただきました。アスクルさんも埼玉の拠点でこのほど34台のAMRが本格稼働しました。日本通運さんにもご活用いただいています」

――現在、日本国内で御社のAMRはどの程度稼働していますか。
「毎日動いている実稼働という意味では100台近くに上ります。実際には200台近く販売済みですが、販売してからお客様の物流拠点で導入していただくまでには準備時間が必要ですので、ギャップがあります」

――ロボット導入のハードルを下げるため、かなり独自の工夫をされていますね。
「そうなんです。サブスクリプションの形態を採用すればお客様にとってハードルが少し下がります。最近始めたのは、AMR導入後の生産性向上の成果に応じて利用料金が変動するサブスクリプションプログラムです。ロボットはなかなか導入による生産性向上の効果をイメージしにくいため、現場の方がOKと言っても上層部の方を説得するのが大変だと思います。成果連動型のサブスクリプションモデルを導入することでリスクを減らし、導入しやすくしました。これは実は先ほどもお話したアスクルさんのアイデアでもあったんです。ご提案いただいて、われわれもなるほどと思いました」


ラピュタPA-AMR

あと5年は人とロボットのコンビネーションがベスト

――今回東京都江東区木場で新たに開設したオフィス「木場支社」はAMRのデモを実際に見学できる400平方メートルの専用スペースを備えています。こうした取り組みは初めてですか。
「実は同じ江東区内にある『平野本社』にも小さいスペースがあります。しかし、当社は複数のAMRをカバーする群制御を実施していますので、AMR1~2台といったレベルでは機能を十分お見せすることは難しいんです。ある程度の広さがある場所で複数のAMRを同時に動かして、初めて効果を体験できる技術ですので、木場支社にはそうしたスペースを設けたいと考えていました。また、以前のスペースは倉庫内を模していても、棚だけだったんですね。お客様によってはパレットに商品を直置きしたりと様々なオペレーションのパターンを採用されています。そうした多様な環境を再現する上でも、やはり広さを確保する必要がありました。いろんな商品を扱えるということをアピールしたかった」

――御社のロボットの発想の基本は、完全自動化を志向するよりも、人とロボットが協働して生産性を高めていくことを重視されるという印象を受けました。
「そうですね、もちろん完全自動化というやり方もありますが、残念ながらまだまだ技術が追い付いていません。それよりも、人でできることは人が担い、AMRを使って歩く距離など無駄な部分は解消するというように、バランスを取ることがベストだと思っています。将来はピッキング作業自体をロボットアームで自動化できるようになればまた違った展開になってきますが、とりあえずあと5年くらいはこうした人とロボットのコンビネーションに注力することがベストではないでしょうか」

――AMR に関して実稼働の台数などで目標はありますか。
「今年大きく投資していただいたということもあり、900台を目指しています。スタートアップなので頑張って高い目標を掲げて成長していきたいですね」

――先日はゴールドマンサックスなどから計約64億円の資金を調達したと発表していました。スタートアップの資金調達としても非常に規模が大きいですが、御社の技術が投資家に高く評価されていることを示していると思います。どのようにお感じですか。
「そうですね、ゴールドマンサックスさんからは日本でAMRに関して一番の企業になってほしいと言われています。当社に関しては9カ月くらい事業の将来性などを慎重かつ詳細に調査された上で、投資を決断されました。われわれとしてはそうした企業に事業内容を評価していただけたのはすごくうれしいですね」

――AMRに関しては物流現場にとどまらず、工場や建設現場などにも広げていきたいとの意向のようですね。御社のAMRがいろんな現場で自由に動いてる姿が実現するのは何年後ぐらいだと想定されていますか。
「今、製造現場や建設現場でPoC(概念実証)を展開しているんですが、あと3年くらいはまず物流にフォーカスしていきたいですね。パレット単位でのピッキングといった作業もロボット導入の対象になりそうです。物流現場で必要とされる自動化に注力した後で、いろいろと横展開していきたいと思っています」

――AMR以外にも、AGV(無人搬送ロボット)や自動フォークリフトなどにも範囲を広げていかれるのでしょうか。
「われわれのソフトウェアのアピール点はもちろん群制御であり、そしてハードウェアにあまり依存しないのもポイントです。そういう意味では自動フォークリフトやAGVも適用は可能です。仮に自動フォークリフトを手掛けるとなると、ちゃんとしたフォークリフトメーカーの方々とパートナーを組む形にはなると思います」

――アスクルさんなどのような大手が御社のAMRを採用していることは他の企業にもかなり大きなアピールポイントになっているのでは?
「おっしゃる通りですね。アスクルさんはロボティクス業界でも一番厳しいと言われてるくらい、安全や作業品質にこだわっておられます。逆にそういう大手企業はご自身の作業生産性などの状態を正確に把握されていますから、AMR活動の議論はしやすいんです。そうした企業に当社のAMRを評価していただけたのは、本当にわれわれにとっても意義のあることです」

――AMRに関しては大手以外の中堅・中小企業にも導入を働き掛けていきますか。
「例えば、関東を地盤にされている京葉流通倉庫さんの拠点でも活用いただいています。お使いになる企業の規模自体にはとらわれず、今後も幅広くご利用を提案していきます」


木場支社内のデモ用スペース

後編に続く)

(藤原秀行)

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