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【独自】セイノーHDとラクスルが合弁、新会社ハコベルの狭間社長独占インタビュー(前編)

【独自】セイノーHDとラクスルが合弁、新会社ハコベルの狭間社長独占インタビュー(前編)

改善すべきポイントが多いからこそ、やりがいがあると思った

セイノーホールディングス(HD)とラクスルによる、物流業務の効率化を支援するハコベルの合弁事業が8月8日、本格的に始動した。ハコベルは2015年、ラクスルの事業としてスタート。現在は荷物とトラックのマッチングに加え、輸配送業務の情報一元化によるコスト削減や効率化のサポートにも踏み込んでいる。

ハコベル事業を8月1日付で分社化した上でセイノーHDが8月8日付で資本参加、ラクスルとの共同運営体制に移行し事業基盤を強化する。ラクスル出身で新会社ハコベルの社長CEO(最高経営責任者)に就任した狭間健志氏はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じ、セイノーHDグループが誇る全国規模の顧客ネットワークなどの協力を得て、物流業界の業務デジタル化支援を加速していきたいとの思いを語った。前後編の2回に分けて発言内容を紹介する。


インタビューに応じる狭間社長CEO

一般貨物の領域まで支援に踏み込んだ

――まずこれまでのキャリアについてお伺いします。最初はコンサルタントとして活動されていたそうですが、ラクスルに入社するきっかけは何だったのでしょうか。
「おっしゃる通り、元々私は外資系のコンサルティング会社で8年ほど勤務していました。30歳を迎える辺りからアドバイスをするだけではなく、自分でビジネスを手掛けたいとの思いが強くなり、企業を探し始めました。製造業や小売業などを対象にコンサルティングを長く手掛けていた経験から、これからは産業の付加価値はテクノロジーが源泉になると思いました。そこで産業とテクノロジーが重なり合った会社を探していたんです。今でこそそうした企業はすごく多いのですが、そのころ、5年ぐらい前はまだまだ少なかった。そうしている中でラクスルにご縁があり、同社の中でも特にハコベルという事業を始めてちょうと1年くらいだったと思いますが、ビジネスをリードしていくメンバーを探しているということでしたので、転職を決めました」

――そのころのハコベル事業は荷物とトラックのマッチングがメーンだったと思いますが、初めて出会って、ビジネスとしてどう感じましたか。
「すごく面白い事業だなと思いました。私自身、ラクスルに入社する前は物流にすごく詳しかったわけではないんですが、物流は非常に規模が大きくて伝統的な産業であり、言い方はよくないですが、古い産業でもありました。そこにテクノロジーを持ち込み、変革しようとしているところがすごく面白そうだと感じたんです。個人的にも物流、ロジスティクスは社会に不可欠な、エッセンシャルなサービスですので、世の中の役に立つ、社会貢献できるという文脈でも非常にやりがいがありそうだと感じたのが第1印象でした」

――物流業界はいまだに多重の下請け構造が強固に残るなど、構造的な課題を抱えていると昔からずっと指摘され続けています。そのあたりの事情を変えなければいけないと思ったのでしょうか。
「ラクスルへの入社前にそこまで事情に明るかったわけではないのですが、入社するに当たっていろいろと調べてみると、業務が非常にアナログですとか、多重下請けとか、生産性があまり高くないといった課題が見えてきました。改善しなければいけないポイントが多いからこそ、取り組みが面白く、やりがいがあるのではないかと思いました」

――ラクスル入社後、ハコベル事業で具体的にどのようなことに取り組みましたか。
「入社した当時はハコベルも軽貨物だけ、ラストマイルだけを対象に1都3県でサービスを展開していました。そのころはスポット的なニーズを拾っていたのですが、スポットの仕事は本来であれば、お客様にとってはなるべく出ない方がいいわけですから、そうしたスポットの仕事のニーズに頼り過ぎるビジネスは良くないと思いました。そこで、お客様の本質的なニーズを捕まえに行く、一般貨物の領域までに入っていくことが必要だと感じ、取り組みました。やはり、スポットの部分で業務のコストを下げられたとしても、お客様の事業全体から見れば割合は限定的です。他の会社への発注の分も含めて、幅広い領域でコストダウンを実現していかなければいけないと感じました」

「今はマッチングだけでなく、いわゆる配車のデジタル化による業務効率化を実現する『ハコベルコネクト』を提供しています。取引のある他社も含めた管理の領域にも携わることで、お客様から見るとワンストップで物流業務を全部管理できる、ワンストップで業務効率化できるところまでサービス内容を進化させました」

――マッチングだけでは事業の成長を続けるのが厳しいとの印象を持っていたのでしょうか。
「われわれが携わる受発注の部分だけをデジタル化しても、他のパートナー企業への発注が電話やファクスといったアナログのままでは、物流部門の御担当は結局デジタルとアナログの両方を使わないといけません。ですから、両方まとめてデジタルで発注できる方が便利ではないかという点を意識して、新たなサービスを展開しました」

――物流業界のデジタル化の遅れは際立っていますが、現場の方々にデジタル化の必要性を理解してもらうのは大変ではなかったですか。
「そうですね、その部分は実際、苦労しました。やはり総論賛成といいますか、業務を変えなければいけない、効率化しなければいけない、デジタル化しなければいけないというのは全くその通りなのですが、やはり現場ではオペレーションを変えなければいけないのか、といったように疑問が出てくる。われわれのサービスを一度使っていただくところまで持っていくのがすごく大変でした」

――逆に言えば、一度使ってもらえれば、デジタル化の効果をかなり理解してもらえたのでは?
「確かに、一度お使いいただくと、例えば最初は1拠点に入れたとしても、他拠点にも拡張を進めていただいたり、工場でも1カ所で使っていただくと別の工場に横展開していただいたりといったように価値を実感されるのがわれわれのビジネスの強みでもあります。まさに一度お使いいただくというところに大きなハードルがありました」

――デジタル化の意義を理解してもらうノウハウはかなり蓄積できたのではないですか。
「そうですね、どのようにご説明すればお客様にトライアルへ参加していただけるか、サービスをお使いいただけるかというところは試行錯誤してきて、ノウハウがたまってきたかなとは思っています。ただ、ここからが、セイノーさんと組ませていただいた理由でもあるんですが、じゃあラクスルが全部自前で、これから新規契約獲得の営業チームを大阪や名古屋、福岡にも幅広く展開していけるかというと、非常に難しいでしょう。やはり全国に拠点と営業のネットワークを持たれていてブランド力もある会社さんと組み、そこの営業網に乗せていただく方がいいんじゃないかということで、セイノーさんと組ませていただくことを選択しました」


今年6月、合弁の記者会見後の撮影に応じる(左から)セイノーHD・田口義隆社長、狭間氏、ラクスル・松本恭攝社長CEO(最高経営責任者)(ラクスル提供)

セイノーHDはBtoBの強さやミッション、カルチャーが抜きん出ていた

――交渉相手はいろいろあったと思いますが、セイノーHDを選択した決め手は?
「もちろん、他にもお話を持ち掛けた企業はありますが、セイノーさんに決めたのは、やはりまず1つ目が、全国に輸送ネットワークを持っていらっしゃって、圧倒的にBtoBで強いことです。2つ目が事業で目指しておられる大きな方向性がラクスルと揃っていると思ったことです。セイノーさんも輸送立国というミッションを掲げ、開かれた物流のプラットフォームを作りたい、そのプラットフォームを通して日本の物流の効率化を図っていきたいという思いを持たれています。用いている言葉は多少違えども、長い時間軸の中で目指している方向性としては合致していたんです。そして3つ目はまさに企業のカルチャーですね。新会社に投資していたく中で、お会いする方が皆さん素晴らしい方で、すごく人としても組織としてもいい会社だなと思ったんです。この3つのポイントがセイノーさんはまさに抜きんでいましたね」

――大手とベンチャーということなどからも、どうしても企業文化の違いは避けられないと思いますが、そこは克服できそうですか。
「むしろ、違いがあっていいと思っています。先ほどもお話しましたが、営業のチームを何百人、ひいては何千人確立していくことが当社にはおそらく難しい。セイノーさんのように、それができる伝統ある大きな会社はやはりカルチャーがラクスルとは違うでしょうし、違って当然だと思います。セイノーさんは新会社のハコベルに、しっかりと価値のあるプロダクトやシステムを作り上げることに集中してください。その代わり、それをしっかり広げるのがセイノーの仕事ですとおっしゃっていただいています。非常に気を使ってくださっています。違うカルチャーを前提とした役割分担、というふうに事業を進めていくのが一番いいのではないかと思っています」

――セイノーHDの田口社長もかなり意欲的ですね。
「そうですね。すごく前向きに、投資いただいていますね。本当に有難いです」

――ハコベルのサービス自体の評価もセイノーの中では高かった?
「こういったソフトウェアの強み、プラットフォームの強みをすごく評価いただいたのかなと思います」

――ハコベルのサービスは食品や飲料の業界でかなり利用が広がっており、成果も出ている印象です。
「もちろん想定通りの部分があれば、思ったよりうまくいった部分、思ったよりうまくいってない部分、いろいろあるんですが、食品というマーケットをしっかり取りに行こうと決めて取り組んできましたから、そこは良かったかなと感じています。われわれのようなサービスと食品業界の相性は良かったということだと思います。食品はどうしても天候によって売れ行きが左右されますし、天候自体も当日にならないと確実なことが分からない。バリューチェーン上では小売業の意向が重視されますし、急な需要の伸びに対応する必要もある。そうした需要を吸収できるような、われわれのプラットフォーマーとしてのシステムとの相性が非常に良かったんだと思っています」

――食品や飲料の業界から御社のサービスを使いたいという要望もかなり来ているのでは。
「どちらもありますね、既に公表してるように、ネスレさんやミツカンさん、日清食品さんのような主要なメーカーがお使いいただいているのを踏まえ、当社も興味があるというふうにご連絡いただくこともありますし、われわれも食品業界にフォーカスしてマーケティング活動を展開したり、セミナーを開催したりしていますから、業界の方々にとっては入りやすくなっているということは言えると思います。引き続き、食品や飲料がメーンターゲットではありますが、今後は他の業界にも利用を働き掛けていきたいですね」

――最近は輸配送領域での温室効果ガス排出量の可視化と、具体的な削減につなげるところまで手掛けられています。ニーズはかなり増えていますか。
「ニーズ自体はあると思いますが、まだ実際に、特に輸配送の領域で排出量の削減まで踏み込めている企業は少ないと思います。まずは見える化をきちんと図るところからですね」

後編に続く)

(藤原秀行)

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