過酷な工事現場の労働環境改善、23年度に自社運用開始目指す
「空飛ぶクルマ」と物流ドローンを開発しているSkyDriveと中国電力子会社で建築工事やリフォームなどを担う中電工業(広島市)は8月30日、中国電力ネットワークが保有する送電鉄塔の塗装工事で、1.6トン(送電鉄塔3基分)の塗料をドローンで運搬したと発表した。
過酷な山間部の送電鉄塔工事での労働環境改善・安全性の向上のため、実証実験を経て物流ドローン「SkyLift(スカイリフト)」の導入が始まった。
ホイストに吊す形態で約20キログラムの一斗缶を運搬している様子(7月27日撮影)
左:中電工業・石井浩一社長 右:SkyDrive・福澤知浩CEO(最高経営責任者)
これまで、現場で物流ドローン「SkyLift」を導入するため、SkyDriveと中電工業が飛行試験を重ねてきた。ドローンは最大30キログラムの資機材を運搬可能で、運搬に使うオリジナルのカーゴバッグは国土交通省の航空局から塗料やガソリンなどの危険物輸送の飛行許可を取得している。
日程 | 2022年7月26日(火)~8月10日(水)のうち5日間 |
場所 | 中電工業の送電鉄塔塗装工事現場 |
運搬物 | 送電鉄塔塗装工事で使用する塗料(一斗缶) |
総フライト数 | 総フライト数:102フライト 総運搬重量:約1,600kg 日数:5日間 |
※フライト数や運搬重量は、天候や飛行条件・環境によって変動する
電力会社は送電鉄塔の塗装工事の際、工具や塗料といった資機材を小型トラックなどで運搬している。しかし、送電鉄塔の7割程度が山間部に立地しており、山間部の現場は車両の通行が難しいため、ほとんどのケースは作業員自らが山道を複数回往復し資機材を運搬している。中電工業が送電鉄塔塗装工事で使用する塗料物量は年間で約100トンに上り、作業負荷が大きかった。
中電工業は物流ドローンを山地の送電設備メンテナンス工事に活用することで、作業員が重い荷物を背負って、道なき道を昇り降りするという過酷な労働環境の改善や、厳しい環境下での安全確保、運搬人工の削減などの効率化を実現できると考え、導入に踏み切った。
※写真撮影時のみマスクを外した
SKyDriveと中電工業は電磁波の影響試験・実証実験などを重ねてきた。今後、中電工業は自社運搬を目指し、SkyDriveと協議の上、安全性や操作性など課題の整理・解決、物流ドローンを操縦できるオペレーターの育成を図る。10月をめどに難易度を上げた教育プログラムを実施する予定で、12月をめどにSkyDriveが取り決めた必要スキルを習得し、2023年度に自社運用を本格的に始めるとのシナリオを想定している。
中電工業は塗装工事を施工している全国の電力会社向けに物流ドローンを受かった運搬を展開したい考え。将来は他社送電工事に関係する運搬も担うことを視野に入れている。火力、水力発電所や電力関係以外のインフラ塗装工事でも活用する。
ドローン運搬の様子
(藤原秀行)※写真はいずれもSkyDrive提供