民事再生法の適用申請で収益性に疑問符、保全命令の影響も広がる
日本ロジステックが東京地裁に民事再生法の適用を申請、経営破綻したことが、物流施設の領域に影響を及ぼしている。Jリートの投資法人が、同社が入居している物流施設の取得中止に踏み切った。投資家への配当の前提となる収益性に疑問符が付いたためだ。
他の投資法人が運用している物流施設でも、民事再生法の適用申請に伴い東京地裁が資産の保全・監督命令を出したことで、投資法人は将来の賃料収入が確保できるかどうか日本ロジステックとの協議に入るとともに、対応の検討を迫られている。
帝国データバンクによれば、日本ロジステックは8月に外部への不正な支払いが発覚。主要取引先に銀行口座の預金を仮差し押さえされ、事業の運転資金が使えなくなったことに加え、主要取引先から売掛金の支払いを拒否されたこともあって資金繰りが行き詰まり、資産の流出を止めるため民事再生法の適用申請に追い込まれた。同社の信用悪化は再建の動向にも大きく影響することが避けられない。
Jリートの大和ハウスリート投資法人は8月18日、物件供給スポンサーの大和ハウス工業が開発した物流施設4物件を計379億5000万円で9月5日に取得する方針を開示していた。しかし、4物件のうち、「DPLつくば谷田部」(茨城県つくば市)、「DPL広島観音」(広島市)、「DPL沖縄豊見城Ⅰ」(沖縄県豊見城市)の3物件は日本ロジステックが入居しているため、同投資法人は8月31日、急きょ4物件全ての取得を中止する方針を決定。資金調達のために実施する予定だった新投資口(企業の株式に相当)発行や金融機関からの借り入れも取りやめた。
同投資法人は「(民事再生法の適用申請による)影響が現時点で見通せない状況にあることなどを考慮した」と説明している。3物件はいずれも2021年と最近竣工したばかりで、通常であれば高い収益性が見込めるが、今後日本ロジステックが賃料減額や借りている面積の縮小などを要望してくる可能性も否定できないだけに、慎重な対応を取ったようだ。
「DPLつくば谷田部」(大和ハウスリート投資法人資料より引用)
一方、同じくJリートのCREロジスティクス投資法人は8月31日、埼玉県草加市で物件供給スポンサーのシーアールイー(CRE)が開発した「ロジスクエア草加」に日本ロジステックが入居していることを開示。賃貸面積は約2万9000平方メートルで、総賃貸可能面積に占める割合は5%程度に上り、その全てを転貸しているという。
同投資法人は「転借人のロジスクエア草加における事業が通常通り営まれていること、転借人がロジスクエア草加を継続して利用する意向があることを確認している」と強調。保全命令が出たことも踏まえ「民事再生手続きの進捗を注視しながらテナントとの協議を進め、今後の対応を検討する予定」と説明している。現時点で、運用状況の予想数値の修正はないという。
また、ラサールロジポート投資法人も8月31日、千葉県流山市の「ロジポート流山B棟」で、総賃貸可能面積の約3%に相当する4万9210平方メートルを日本ロジステックが使っていることを公表した。保全命令への対応についてはCREロジスティクス投資法人と同じく、日本ロジステックと協議を進める方針。
日本ロジステックのホームページによると、同社は他にも首都圏で大和ハウスや日本GLP、野村不動産などが開発した物流施設を賃借しているもよう。Jリート投資法人やデベロッパーの間でさらに波紋が広がりそうだ。
(藤原秀行)