外部調査委報告書「受注ありきの工場運営」など問題点指摘
KYBは2月13日、全国の物流施設などに納入された免震・制振用オイルダンパーの検査データ改ざん問題に関し、外部調査委員会(委員長・難波孝一元東京高等裁判所部総括判事)による調査報告書を公表した。
この中で、オイルダンパー製造を手掛ける子会社のカヤバシステムマシナリー(KSM)で役員や管理職も不正を認識していたと指摘。組織的関与があったとの見解を示した。
不正が起きた背景として「さまざまな複合的要因から自らの技術力・生産能力を超えた受注ありきの工場運営がなされていた」「事業全体において不都合な真実と向き合わない企業風土が醸成されていた」「改ざん行為を行う動機を強く有する製造部が自ら性能検査を行うという相互牽制の利きづらい性能検査体制が採用されていた上、実際に製造部に対する牽制機能が機能していなかった」ことなどを列挙した。
「KYB製造部門検査担当者の歴代上長の大半が不正認識」
調査報告書は対象者への聞き取りなどの結果、免震用オイルダンパーの不正はKYBの工場で製造していた2000~01年ごろに始まった可能性が高いと分析。動機として「この時期に量産が始まったことにより(検査の)不合格品を全て組み直すなどした場合には納期を守れないためというのが主たる理由」と推測した。制振用オイルダンパーでも遅くとも03年には開始されていたとみている。
KYB製造部門の検査担当者の歴代上長(部長や課長など)の大半が不正を認識し、「管理者によって指示ないしは黙認されてきた」と説明。製造部門だけでなく品質保証や技術、営業部門でも一部の社員が認識していたという。
製造が06~07年にKSMへ移管された後も、データ改ざんの手法が引き継がれ、KSMの経営陣や幹部の一部も不正行為を知っていたと説明。一方、KYBの役員については「不正行為を認識していたと認めるに足りる証拠は発見されなかった」と結論付けた。
交換品の製造や工事で引当金258億円に拡大
KYBは同日、調査報告書と併せて、国土交通省に提出した再発防止策を公表した。
製造部門以外の部署が品質検査を行い検査体制の独立性を確保することや、関係部署間で受注に関する情報を共有可能なシステムを導入し適正な受注判断ができるようにすること、内部通報制度に関する間接部門への教育をより強化することなどを打ち出した。
不正の結果、国の基準や顧客との契約に適合していないか、適合していない可能性があるオイルダンパーは全国で免震用が995件、制振用が110件の建物に納入されたと説明した。
調査報告書で組織的関与を指摘されたのを受け、KYBは3月末までに社内の処分を行う方針。
KYBはまた、19年3月期の連結業績予想のうち、損益を下方修正した。営業損益は従来の18億円の赤字から120億円の赤字、純損益(国際会計基準)は42億円の赤字から100億円の赤字にそれぞれ引き下げた。
不適合もしくは不適合の疑いがある免震・制振用オイルダンパーの交換に伴う工事などに関連した製品保証引当金を昨年12月末から88億円積み増し、258億円としたことが赤字幅の拡大につながる。
(藤原秀行)
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