【独自・物流展】物流施設デベロッパー、自動化や人手不足に応える「ソリューションプロバイダー」化進む

【独自・物流展】物流施設デベロッパー、自動化や人手不足に応える「ソリューションプロバイダー」化進む

温室効果ガス排出削減などESG領域の取り組みも多数

9月13~16日に東京都江東区有明の東京ビッグサイトで開催された「国際物流総合展2022」(主催・日本ロジスティクスシステム協会、日本能率協会など7団体)では、主要な物流施設デベロッパーがほぼ顔をそろえた。各社は最新の物流施設案件の紹介にとどまらず、入居する荷主企業や物流事業者の人手不足などの問題解決を全面的にサポートする姿勢を来場者にアピール。デベロッパーの「ソリューションプロバイダー」化が進んでいることを印象付けていた。

また、再生可能エネルギーの利用促進による温室効果ガス排出削減や地域住民にも開かれた施設の整備といった、ESG(環境・社会・企業統治)領域にも十分に配慮しようとする取り組みも多く見られた。

広がる太陽光発電の採用

プロロジスは「DELIVERING VALUE BEYOND THE BUILDING(建物を超えた価値を提供する)」のメッセージをブースの前面に掲示。その理念通り、茨城県古河市や千葉県八千代市で展開している巨大開発プロジェクトの案内に加え、物流施設での再生可能エネルギー活用などの取り組みを紹介した。

併せて、単発バイトのマッチングアプリを手掛けるタイミーやクラウドサービスを活用し荷物とトラックのマッチングを展開しているウィルポートといった、雇用確保や業務効率化などに寄与するスタートアップのサービスを列挙。三菱商事が設立し同社も出資しているGaussy(ガウシー)が展開している月額制の物流ロボットサービス「Roboware(ロボウェア)」で取り扱っている実機を案内するなど、自動化・省人化へ万全のサポートをする体制をアピールした。

日本GLPは、千葉・流山や神奈川・相模原などで展開している、大規模物流施設をエリアで集中開発するプロジェクト「ALFALINK(アルファリンク)」を軸に、各地の案件を掲載。同時に、「GLPは床を貸すだけではありません!」のメッセージとともに、物流拠点の最適化や輸配送の効率化、雇用促進といった多岐にわたる領域で相談を受け付ける「コンシェルジュサービス」の案内を公開。ソリューションサービスに注力していることを来場者へ盛んに呼び掛けていた。

大和ハウス工業は、JR貨物と共同で、札幌の貨物ターミナル駅構内で開発した物件など、各地で展開している物流施設をPR。全国規模でサプライチェーン構築に寄与していることを打ち出していた。併せて、アッカ・インターナショナルが提供している物流ロボットを活用したEC向けの次世代物流サービスや、Hacobuが展開しているトラック予約受付サービスなど、パートナー企業やグループ企業と組んで注力しているサービスも多数展示していた。

三井不動産は、物流施設事業を本格的にスタートさせてから10年の区切りを迎え、MFLPブランドの運営・管理物件が50を超えていることを報告。ハード面にとどまらず、社会的な要請を踏まえ、DX活用による庫内作業の効率化やBCP対策の拡充による物流施設の安定稼働担保といったソフト面にも目配りしていることも提示していた。

三菱地所は、自社の「ロジクロス」ブランドの物流施設について、神奈川県座間市の物件からブランドリニューアルしたことを強調。テナント企業が日々展開する物流のオペレーションの水準と効率の向上のため、安全性や機能性、柔軟性に加え、物流施設内に休憩室や貸し会議室、シャワールームを設けるなど、働きやすさの確保に配慮することをあらためて発表していた。

野村不動産はひときわ目立つ広大なブースを設け、荷主企業や物流事業者、マテハンメーカーなどと連携して物流現場の自動化・省力化を実現する「物流テック」の創造・普及を目指す共同活動「Techrum(テクラム)」を紹介。ピッキング支援システムなど活動に名を連ねている30社以上が手掛けている独自の取り組みを細かく発表し、認知度向上と活動の拡大を目指していた。

オリックス不動産は、3大都市圏を軸に展開している物流施設の案件紹介の中で、サステナビリティを全面にアピール。太陽光発電のフル活用などで、温室効果ガス排出を実質的にゼロとする「100%CO2フリー倉庫」を埼玉・松伏町の案件を手始めに、全国で展開していく取り組みについてもあらためてPRした。

東京建物は、物流施設で首都圏だけでなく関西をはじめ全国展開のアクセルを踏んでいることを明示。さらに、太陽光発電など温室効果ガス排出削減へ再生可能エネルギーの積極的な利用などを進める「ZEB物流」の施策を公表した。マンション分譲など総合不動産として培ってきた、近隣住民との共生や働きやすい環境整備などのノウハウを生かすことにも意欲を見せていた。

東急不動産は、千葉・習志野などで展開してきている「LOGI’Q(ロジック)」の物流施設を展示。土地改良事業に参画して農業の高度化と新産業の創出に貢献するとともに、一角に物流施設を設ける独自の開発手法についても言及し、地域貢献といった視点でも付加価値を生み出していくスタンスを提示した。

住友商事は、消費地近接型物流施設「SOSiLA(ソシラ)」の特徴を報告。さらに、同社が独自に開発した、顧客のWMS(倉庫管理システム)と連携し、庫内の多岐にわたる作業の進捗を一括して可視化・管理できるクラウドベースのシステムなどの概要も披露。倉庫領域のDX促進に傾注する方針を明示した。

ラサール不動産投資顧問は、省エネ設備の導入などに取り組んでいるロジポートブランドの開発プロジェクトを東京・多摩エリアなどで進めていると計画を公表。名古屋エリアで東急不動産と共同開発する35万平方メートル超の巨大案件についても来場者への売り込みに注力していた。

グッドマンジャパンは茨城県常総市の大型物流施設などを展示。併せて、これまでのESG領域のパフォーマンスのハイライトとして、物流施設への太陽光発電パネルの積極導入などを列挙し、脱炭素のニーズにも的確に応えていく姿勢を明示した。

三菱商事都市開発は3大都市圏での物流施設開発実績と、今後予定している案件を公開。さらに、東京都大田区で2023年夏をめどに、ものづくり・研究開発企業を支援するための専用施設を完成させる「大田区仲六郷 ShareFAB&LAB プロジェクト」も発表した。三菱商事グループとも連携し、産業界全体のイノベーションやビジネス機会創出を包括的に後押ししていく姿勢を明らかにした。

アライプロバンスは千葉県浦安市で完成済の第1号案件に続き、東京・江戸川区で展開を目指している第2号案件「アライプロバンス葛西」の概要を発表。より小さく倉庫スペースを使いたいとのニーズに対応した設計とするほか、地域社会にとっても親しみやすい建物とすることなどをうたっていた。

シンガポールの不動産大手キャピタランドグループの日本法人は、三井物産都市開発と連携して神奈川・相模原で手掛けた国内初案件などを掲載。本国でも物流関係の施設を手掛けた経験を生かし、大阪や東京で進めている今後の案件をはじめ積極的に投資機会を増やしていく考えを表していた。

(藤原秀行)

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