【独自】物流系Jリート、コロナ禍でも施設からテナント退出の動き強まらず

【独自】物流系Jリート、コロナ禍でも施設からテナント退出の動き強まらず

稼働率は9割超、安定運用持続

不動産投資信託(Jリート)市場で投資対象を物流施設に限定するか、物流施設が大きな位置を占めている銘柄に関し、ポートフォリオに組み入れている物流施設の稼働率が9割を超えている。

新型コロナウイルスの感染拡大が本格化しようとしていた2020年1月から約2年半の動きを見ても、稼働率は高水準をキープしており、社会・経済情勢が大きく混乱してもテナント退出の動きは強まらず、安定的な運用が持続している。

物流系の銘柄は2022年に入り、投資口価格(企業の株価に相当)が下落傾向にあるが、投資家は各銘柄のポートフォリオの運用状況が悪化していると捉えているわけではなく、物流施設の大量供給で先行きの不透明感が出ていることなど、外部環境が投資判断に影響していることが浮き彫りとなった。

半分の銘柄が満床

物流系銘柄のうち、ポートフォリオに組み入れている物流施設の稼働率のデータを開示している12銘柄を見たところ、直近ではいずれも97%以上と高い水準だった。コロナ禍が始まったころの20年1月末と比べても、大きく落ち込んでいる銘柄はなかった。

直近では大和ハウスリート投資法人、日本ロジスティクスファンド投資法人、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人、三菱地所物流リート投資法人、オリックス不動産投資法人、SOSiLA物流リート投資法人の6銘柄が100%だった。

物流施設はもともと賃貸借の契約期間が長い傾向がある。それに加えて、コロナ禍で経済情勢が厳しくなっても、中途解約の動きは広がらず、契約期間満了でテナントの利用が終了しても次のテナントがすぐに決まっていることが稼働率の動きからはうかがえる。コロナ禍に伴うインターネット通販の利用拡大などで商品の取り扱いが増え、先進的な機能を持つ物流施設のニーズが高まったことも、高稼働率維持につながっているとみられる。

エネルギーや原材料の高騰を受けた物価上昇と、インフレ抑制に向けた各国の金融政策引き締めで、世界的に景気後退の懸念が強まっている。個人消費の落ち込みなどは物流施設の需要にも影響するだけに、稼働率が今後も高い水準を維持できるかどうか、気になるところだ。

物流施設の稼働率推移(%、月末時点)

2020.1 2021.1 2022.1 2022.9
日本プロロジスリート 99.0 99.7 97.1 97.3
GLP 99.7 99.7 98.9 98.6
大和ハウスリート 100.0 100.0 100.0 100.0
日本ロジスティクスファンド 99.9 98.8 100.0 100.0
三井不動産ロジスティクスパーク 99.1 100.0 100.0 100.0
野村不動産マスターファンド 98.5 100.0 100.0 99.4
三菱地所物流リート 99.9 99.5 99.5 100.0
ラサールロジポート 98.7 98.9 98.9 99.3
CREロジスティクスファンド 100.0 100.0 100.0 98.8
アドバンス・ロジスティクス 100.0 99.9 99.9 99.9
オリックス不動産 100.0 100.0 100.0 100.0
SOSiLA物流リート 100.0 100.0 100.0 100.0

赤字は決算期の関係から8月時点の数字となっている

(藤原秀行)

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