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【現場取材・独自】「食べられる食器」に「使えば健康状態を把握できる容器」が登場、物流の姿にも影響か

【現場取材・独自】「食べられる食器」に「使えば健康状態を把握できる容器」が登場、物流の姿にも影響か

東洋製罐グループが驚きの高い包装技術ポテンシャル紹介

包装技術は、未来社会で何を担い得るのか。東洋製罐グループは10月12〜14日に東京都江東区有明の東京ビッグサイトで開催された国際包装技術展で、このテーマを基に自社の技術シーズを展示した。

日本の高齢者人口がピークを迎えるとされ、様々な問題が想定されている2040年を舞台に設定。食器を保護膜で覆うことで食後、洗うために使う水を減らしたり使い捨ての紙皿を使う量を抑えたりできると説明、包装という切り口からの環境負荷低減の在り方を提案した。

他にも、容器自体がインターネットに接続し、栓を空ける際の力の入れ方などのデータを取得、その人の健康状態を把握できるようにする構想なども披露。実現すれば廃棄物の削減やリサイクル促進といった面で物流の姿にも大きく影響しそうな、画期的な技術が数多く並んだ。

商品を包むという一般的な包装のイメージを超えて、食材や医療、建築など多方面に応用されつつある包装技術の高いポテンシャルを垣間見せる展示内容の一部を紹介する。


科学博物館の展示ホールを想起させるブースとなった

「2040年問題」の近未来に照準

東洋製罐グループは缶、ペットボトル、ガラス瓶、紙製容器など包装容器の開発・製造を手掛けている。東洋製罐グループホールディングスの田原健作グループ顧客ソリューション部マネージャーは「これまでの展示会では自社技術・製品をPRしてきたが、今回は視点を変えて、自社技術が将来どのように社会の役に立っているかにフォーカスする“未来想像型展示”を試みた」と、展示コンセプトを語る。

「つつむを超える。」をテーマに、包装容器だけでなく暮らしの中で提供できる価値を紹介した。グループの長期経営ビジョンで、“取り組む領域・果たすべき役割”として掲げた「食と健康」「快適な生活」に関して、それぞれ下記3テーマをクローズアップした。

<食と健康>
①未来の食卓 ②未来のヘルスケア ③未来のキッチン

<快適な生活>
①未来のリサイクル ②未来のスーパー ③未来のインフラ

長期経営ビジョンのゴール年である2050年までの折り返し地点に近いことと、「2040年問題(65歳以上の高齢者人口がピークを迎える2040年頃に、日本社会が直面すると考えられている内政上の危機)」など社会課題が具体的にイメージしやすいことから、2040年の日本を舞台に設定した。

<食と健康>①未来の食卓〜3Dフードプリンターから“食べられる食器”まで〜

「食需要が細分化され、食のパーソナライズ化が進んだ」という仮説の下、起き得る社会課題を想定した。2040年ごろには、人口増加による食糧危機や環境負荷が課題となり、食品ロスを容認する余裕がなくなる。その結果、食のパーソナライズとは、食材や食べ方だけでなく、食の捨て方まで含めた多様化を意味するようになる。

食材や食べ方のパーソナライズに伴い、次世代フードデバイスとして3Dフードプリンターが普及する可能性がある。食感、カロリー、栄養素、使用する素材など、個々人のインプットした3次元設計データを活用して食材を立体造形する装置だ。現在、世界中で研究開発が進んでおり、スイーツや介護職などの分野で実用化された製品もある。

これが普及した場合に必要となるのは、食の素材をデバイスに保存しておく容器。東洋製罐グループは、空になったら親缶から中身を補充できる「詰め替え缶」や、ガラスあるいはステンレスを活用したリユース容器の研究開発を進めており、デバイスの部品を使い捨てから循環型に移行させられる。

食材に関しては、人口増に伴う需給ひっ迫を解消するため、培養肉、植物肉、昆虫肉といった代替肉や、植物工場、陸上養殖といったインフラが普及し、工場で生産されるようになる。

こうした未来に向けて東洋製罐グループも、新たな価値の創出に取り組んでいる。包装容器技術で培った食品の加工・保存ノウハウを応用するため、2022年1月には植物肉開発を手掛けるDAIZ(日本)と資本・業務提携、2020年10月にはエビ・甲殻類などの細胞培養を手掛けるShiok Meats(シンガポール)に出資しており、持続可能な食に向けた取り組みを進めている。

さらに2021年から、食器をコーティングする保護膜の開発もスタートさせた。海藻をベースにした素材を、専用に開発したスプレー缶から吹きかけると、食器の表面で固まって保護膜化する。保護膜は食後に剥がして肥料などにできる。食器が汚れなくなるので、洗浄水の削減や、使い捨ての紙皿などの廃棄物削減に寄与できる。将来的には保護膜自体も可食性にし、“食べられる食器”へと進化させる方針だ。


海藻をベースにした食器保護膜。使い捨て食器の再利用や食器洗浄の減少を通じて、環境負荷の軽減を図る

<食と健康>②未来のヘルスケア〜Internet of Packageと家庭内再生医療〜

健康寿命の延伸、高齢化による働き手の減少によって、医療の需給バランスが変化し、通院に対するハードルや意識が大きく変わる。その結果、予防医療や、自ら不調をケア・治療するセルフメディケーションが重要性を増す未来を想定した。

病気の予防・早期発見には、継続的な人の情報の取得が必要となる。そのためには、ウェアラブルデバイスで日々の生活データを取得することが欠かせない。

東洋製罐グループは包装技術を開発する中で、キャップの開栓、パウチの引き裂き、缶タブの引っ張り、容器利用者の動作・握力・手の大きさなど、容器を通じて人体のデータを取得する技術を開発してきた。

それらを応用し、開栓時の情報から健康状態や心身の状況を把握するIoP(Internet of Package=容器のインターネット化)の実現を目指す。ボトル入りの水を例にとっても、いつ飲んだか、どれくらい飲んだか、といったデータを蓄積すれば、健康状態を推測する手がかりになり得る。

IoPで取得したリアルタイムの健康データをかかりつけ医と共有することで、より正確な病因究明、生活習慣の改善、受診が必要なタイミングでのアラートなどに役立てることもできる。家族とのデータ共有で高齢者の見守りもできる

IoPの実現に向けては、管理栄養士監修のパーソナライズ食事支援アプリを提供している企業おいしい健康と2021年3月に資本・業務提携し、「食と健康のデータプラットフォームの構築」と「食のバリアフリー」を目指した協業を始めている。

セルフメディケーション分野では、再生医療が一般家庭まで普及すると予測している。自身の細胞から作られた医療パックを、自身の傷口や損傷箇所に押し当てることで、自宅でも移植・治癒できる社会だ。医療機器にはセンサーが埋め込まれ、自身の回復度合いが数値化され把握可能となる。医療機関のひっ迫と国の医療負担が軽減される

東洋製罐グループはそうした技術に進化する可能性もある、iPS細胞などさまざまな細胞から細胞凝集塊(スフェロイド)を培養する容器「ウェルバッグ」を開発し、2022年7月から販売を始めている。

ウェルバッグは菌や異物の混入リスクを低減するため、閉鎖系システムとなっている。内部にはマイクロウェル(微少なくぼみ)が1万8000個設けてあり、培養液内の細胞をマイクロウェルに沈殿させることで均一な細胞凝集塊を培養する。

細胞に必要な酸素の供給や、バッグ内に溜まった二酸化炭素の排出をスムーズに行えるよう、高いガス透過性を備えている。バッグを逆さにすることで、ピペットを用いることなくスフェロイドをマイクロウェルから外して回収できる。持ち運んだ時に液揺れで細胞凝集塊が移動し、培養状態にムラが生じることを防ぐため、固定用の専用治具も用意した。

2022年3月には慶應義塾大学医学部眼科学教室発の再生医療ベンチャーで、iPS細胞を利用した角膜内皮再生医療の社会実装へ向けた研究開発を手掛けるセルージョンと資本・業務提携し、ウェルバッグを使用した研究開発の支援に着手している。


細胞凝集塊培養バッグと固定用治具(左)

<快適な生活>③未来のインフラ〜ドローンでのインフラ整備や、リサイクルできる建築物〜

インフラの老朽化が進むが、労働人口の減少で対応が追いつかなくなる。度重なる修繕作業による産業廃棄物なども社会問題化する。そういった未来を想定した。

労働人口の不足を補うため、ドローンが高所のインフラ整備にも活用されている可能性がある。現在でもドローンは空撮にとどまらず、点検作業や農業、物資輸送など多方面での活用が始まっている。こうした需要動向を受けて東洋製罐グループは、ドローンに着脱可能な遠隔型スプレー缶噴射システム「SABOT for Drone」を開発し、2020年12月から提供を始めている。

田原マネージャーは、「農薬散布などにドローンを使うことは珍しくないが、エアゾール(1缶に液状・粉末状の内容物と液化ガスを詰め、ガスの圧力で内容物を噴霧する製品)で噴射する仕組みは、まだ他にないはず」と語る。

ドローン検査で見つかった異常箇所へのマーキングや、防錆剤などによる早期補修・予防保全、蜂の巣の除去といった害虫駆除・鳥獣害対策などへの利用を想定しており、既に複数の自治体から引き合いも来ているという。

インフラ自体も老朽化対策として、“使い方から”ではなく“終わらせ方から”考えたデザインが求められる。短期間での需要を想定し、簡易に組み立て・取り壊しができる建築物が都市機能の一部を支えるようになる可能性がある。


ドローンに着脱可能な遠隔型スプレー缶噴射システム「SABOT for Drone」(ドローンの右下部分)


スプレー噴射システム部分のアップ


防水剤、防錆剤、洗浄剤、殺虫剤など、多様な薬剤を噴霧できる。スプレー缶は2種類の薬剤を噴霧時に混合する技術を用いた東洋製罐グループ製

そうした建築物の一例として、東洋製罐グループは極地建築家の村上祐資氏とコラボレーションして、組み立て式段ボール製ドームテント「DAN DAN DOME」を開発、2021年11月から一般販売している。

DAN DAN DOMEの段ボールは耐水性。水産物や青果物、冷凍品などの輸送用に、段ボールを樹脂でラミネートする東洋製罐グループの技術を応用した。直径3.6m、高さ3m。5〜6人で3時間ほどかけて組み立てるDIY建築物で、使用後に解体してリサイクルに回すプロセスまで体験できる仕様を目指した。

イベント会場のドームテント、災害避難時のプライベート空間確保、子どもの秘密基地、庭先や野外での“自分だけの居場所”の確保、ペットハウスなどの用途を提案している。


簡易に組み立て・取り壊しができる段ボール製ドームテント「DAN DAN DOME」(模型)。2022年度グッドデザイン賞も受賞した

(石原達也)

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