住友商事、GPS使わず位置測位可能な高精度の「量子センサー」発売へ

住友商事、GPS使わず位置測位可能な高精度の「量子センサー」発売へ

米スタートアップと連携、日本でソリューション普及目指す

住友商事は11月2日、米スタートアップのColdQuanta(コールドクアンタ)と、同社が開発する量子センサーならびに量子コンピューター関連製品およびサービスの日本向け代理店権に関するパートナーシップ契約を締結したと発表した。

今後、コールドクアンタの量子技術を活用したソリューションの日本向けマーケティング・販売活動を手掛ける。量子センサーはGPSを使わずに現在位置の測位が可能になるなど、従来のセンサーより高感度なのが特徴。自動運転車への活用などが期待される。

コールドクアンタは2007年設立。米コロラド大学発の量子関連スタートアップで、ノーベル物理学賞を受賞した技術など、冷却原子方式に関する複数の特許を保有もしくは独占使用し、米国国防総省やNASA、英国国防省などさまざまな政府系機関との契約実績を持つ。

「冷却原子方式」を用いて量子コンピューターや量子センサーを開発している。同方式は真空状態のガラス容器の中に中性原子を抽出し、レーザーを照射することで原子の動きを止め冷却し、原子1つ単位で操作できるようにする。大型の冷却装置を必要としないため、量子デバイスの小型化を可能とするほか、安定した状態を保てるのが強み。

量子コンピューターが既存の古典コンピューターをはるかに凌駕する計算速度を達成することで注目される中、量子センサーも既存のセンサー技術を100~1000倍ほど上回る感度・精度を実現できるものとして、実用化が期待されている。量子センサーを活用することで、一層高精度な慣性航法装置の開発や、GPS信号を受信できない環境下においても高精度の位置測位が可能となり、より高度で安定した自動運転などのモビリティの進化や効率的な資源探査などにつながると見込まれている。

住友商事は21年3月、量子技術による社会変革を目指す「Quantum Transformation(QX)プロジェクト」を立ち上げ、広範な事業領域を持つ総合商社として、量子技術による社会変革のリーディングカンパニーを目指している。量子コンピューター関連企業への出資、実証実験のほか、量子暗号分野においてもパートナーシップを締結済み。

コールドクアンタと冷却原子方式を用いた量子関連製品・サービスの日本での普及に取り組み、量子を活用した社会変革に貢献していく考え。

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事