トルビズオンとエアロセンス、鳥取でe-VTOL使った処方医薬品混載輸送の実証実験開催

トルビズオンとエアロセンス、鳥取でe-VTOL使った処方医薬品混載輸送の実証実験開催

住宅地上空含む空路網の全県展開を検討

ドローンの安全運行支援を手掛けるトルビズオンは12月5日、徳吉薬局(鳥取市)、NEXT MOTION(同)、エアロセンスと連携し、鳥取県と鳥取市の協力を得て、12月1日にオンライン服薬指導とe-VTOL型無人航空機 (パワードリフト機)による処方医薬品の混載便輸送実験を実施したと発表した。

改正航空法が12月5日に施行、都市部上空をドローンで目視外の遠距離まで飛行できる「レベル4」が解禁されたのを受け、トルビズオンなどは今後、第1回目の実証実験で飛行したマルチコプターと、今回飛行したe-VTOLとの連携も視野に入れ、長距離飛行配送と短距離飛行配送の組み合わせによる中山間地へのサービス提供ができるよう検討する。

実証実験概要
・実施日時 12月1日(木)午前7時30分~午前10時 頃
・搬送物資 処方箋医薬品、食品

・実験内容 複数患者に対するオンライン服薬指導及び処方箋医薬品の混載便ドローン輸送
・実施体制
主催:徳吉薬局、NEXT MOTION
協力:鳥取県・鳥取市・鳥取市立江山学園
プロジェクトアドバイザリー:トルビズオン
機体・運航管理:エアロセンス
撮影協力:DPCA(一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会)
・使用機体 エアロセンス製 「e-VTOL型無人航空機 AS-VT01」


エアロセンス製 「e-VTOL型無人航空機 AS-VT01」

・飛行ルート
1.A地点 鳥取市千代川河川敷(古市スポーツ広場)~B地点 トリノス神戸(旧神戸小学校)
(約11Km、約13分)
2.B地点 トリノス神戸(旧神戸小学校)~C地点 鳥取市立江山学園
(約5.3km、約8分)


飛行ルート

実証実験は、一般財団法人環境優良車普及機構の過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業、鳥取県デジタルグリーン物流推進実証モデル支援により実施。10月19日の1回目実証実験は災害を想定した医薬品などの物資輸送をマルチコプターで実施した。

今回は平常時における中山間地域の患者へ処方医薬品の配送とオンライン服薬指導、さらに帰り便でピザの配送を全行程e-VTOLでそれぞれ実施。3人の患者は市内の病院で診療を受けた後、徳吉薬局市役所前で処方箋の受付と支払いを済ませ、自宅近くにあるトリノス神戸(旧神戸小学校)で処方医薬品の受け取りと薬剤師からの服薬指導をオンラインで完了した。

その後、物流の課題でもある帰り便には復路の通過地点にある江山学園まで、神戸地域にある手作りピザ屋「ボンズ・キルン」のピザを宅配し無事に全行程を配送完了した。

また、今回はトルビズオンがサービス提供する「ソラシェア」により、飛行ルート下の土地所有者に対し、本実証実験だけではなく、今後のドローン飛行の合意を取得し実施。この合意形成には、地域住民の協力や無人航空機への理解など、地域連携が必要となり、今後のドローン物流社会には必要な飛行ルートデザインの基盤として実験に組み込まれた。

オンライン服薬指導は高齢者にはネット環境やデバイス操作が困難などの課題があるため、トリノス神戸(廃校となった旧神戸小学校)を管理するNEXT MOTIONが旧神戸小学校の教室をオンライン服薬指導ができるよう環境整備した。患者をオンライン服薬指導を受けられる教室へと案内し、薬剤師からの服薬指導を行った。


さらに、鳥取市立江山学園の小中一貫特別の教科等「江山かがやき科」で生徒による地域課題の探究プロジェクトとして、過疎地の医療を考える「遠隔医療チーム」と廃校の利用を考える「廃校活用チーム」の生徒も実験に参加し、産官学で地域課題解決へ連携した。

今後、ドローン配送の事業化に向け実証実験を進め、人員体制、定期便、天候課題、機体選定など具体的にサービス提供できるよう課題解決を図る。レベル4の飛行に不可欠な国家資格の一等無人航空機操縦士の資格を所持するパイロットの確保も急ぎ、目視監視員を減らすことによるコスト削減や、携帯電話通信網のLTE通信で飛行制御できる機体の選定、遠隔操縦ができる管制システムの設置など安全を考慮する。

また、鳥取県全域を網羅する「空の道」を構築予定とし、東西を結ぶほか、県東部にある「千代川」、県中部にある「天神川」、県西部にある「日野川」を軸として、その支流に存在する集落へのドローン配送が実現できるよう、県と県民の協力を得ながら進める予定。1回目で飛行したマルチコプターと今回飛行したe-VTOLとの連携も視野に入れ、長距離飛行配送と短距離飛行配送の組み合わせによる中山間地へのサービス提供ができるよう検討する。

遠隔診療が進展すれば、本実証実験の医薬品ドローン配送とオンライン服薬指導との一気通貫のサービス提供が可能となるため、患者が気軽に受診や指導が受けることができる通信環境の整備も目指す。


使用機体イメージ(いずれもトルビズオンなど提供)

【参考動画】2022年10月19日に実施した1回目の実証実験の様子

(藤原秀行)

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