法人向けスマホ+装着型リーダーに優位性
専用ハンディをリプレースしてDX加速
物流現場で使用している作業用ハンディターミナルをスマホに入れ替える動きが広がっている。一人当たりの情報装備費を抑えられる上、電話やカメラ、アプリを使える。しかも、FCNTの法人向けスマホ「arrows BZ」シリーズは、個人向けスマホが課題とする耐久性やカスタマイズ性に優れ、長期にわたり安定利用できる。(本誌編集部)
FCNT 田中氏
アスタリスク 加藤氏
専用ハンディを凌ぐ読み取り速度
京浜地区を中心に冷凍・冷蔵倉庫を展開する物流倉庫会社A社は現在、庫内作業端末のリプレースを進めている。更新期を迎えた専用ハンディターミナルを、FCNT(旧・富士通コネクテッドテクノロジーズ)の法人向けスマートフォン「arrows BZ(アローズビーゼット)」に、IoTソリューションのアスタリスクが開発したジャケット型バーコードリーダー「AsReader(アズリーダー)」を装着した新型ツールに置き替える。
A社ではこれまで各作業員に専用ハンディと、営業や事務方との連絡に利用する携帯端末の両方を配備していた。端末をスマホ一つに集約すれば作業員1人当たりの情報装備費を大幅に抑制できる。チャットやメール、カメラを使えるのでコミュニケーションのレベルも上がる。外線用と内線用に携帯を2台持ちする必要もない。arrows BZは「デュアルSIM」を採用、ユーザーが構内に設置したプライベートLTEのsXGP内線と、通信キャリアの公衆回線を同時に利用できる。
しかも、アズリーダーのバーコードの読み取り速度は群を抜いている。アスタリスクの加藤栄多郎 取締役執行役員事業部長は「スマホのカメラを使うのとは比べものにならないほど速いだけでなく、現在市販されている業務用ハンディと比較しても最速レベル」と胸を張る。大量のバーコードを連続して読み取る作業をストレスなく処理できる。
アズリーダーをarrows BZに装着するのは今回が初。既にアプリ開発や低温環境における耐性は確認済みで現在は現場に実機を持ち込んで運用テストに入っている。システム開発会社とアスタリスク、FCNTが協力して安定稼働に向けた調整を行っている。
AsReaderを装着したarrows BZ
FCNTの田中栄一 営業統括部営業統括部長代理は「一般のスマホであればユーザーサポートは基本的に通信キャリアの仕事だが、法人向けスマホは導入支援や稼働後のフォローが運用に大きく影響する。そのため当社が直接お客さまをサポートしている。他のメーカーとの違いだ」と説明する。
FCNTは富士通時代の2014年に法人向けスマホ事業を開始した同分野のパイオニアだ。従来から堅牢性を強みとしてきた富士通の個人向けスマホ「arrows」シリーズをベースに、業務用に求められる機能を付加してarrows BZを開発した。
一般に業務用ハンディは耐久性に優れ、特定業務専用であるため処理速度が速い。ただし、機能に対して単価は割高で、他の業務への応用が効かない、機種固有の操作方法があり使いにくい、導入から時間が経つとCPUが陳腐化してしまう、などの課題がある。
一方、個人向けスマホは、比較的安価で操作が簡単だ。通話機能とカメラに加え、GPSや加速度センサーも備えている。しかし、製品サイクルは短く、シーズンごとに新製品に入れ替わるため、追加購入や継続利用に制約がある。OSの自動アップデートによってシステムに不具合が発生する恐れもある。
arrows BZは、OSのバージョンアップをしないまま使い続けられる。製品の購入から3年間はFCNTが無償の技術サポートを提供する。技術的トラブルが発生した場合に、FCNTのAndroid™*専門技術者が問題解決を支援する。製品自体の修理にも販売終了後3年間にわたり対応する。安心して長く使えるのが特徴だ。
スマホをベースに物流を革新
業務用端末としてスマホを利用する動きは、工場や店舗、病院などが先行した。物流は当初は出足が鈍かった。スマホは画面が割れる、壊れやすいという意識が強く、物流現場のタフな環境で使用するのに不安を感じるユーザーが多かった。
しかし、arrows BZは、米国防総省の調達基準MIL規格の23項目に準拠した耐久性、防水・防塵性能、耐薬品性能等を備えている。その堅牢性、利便性、安定性が認知されるのに伴い物流現場にも浸透していき、現在は製造・流通・メディカルと並ぶ主要な活用領域の一つに育っている。
ただし、これまで物流におけるスマホの利用は輸送管理(TMS)に関連する作業が中心だった。ドライバーに持たせて配送ステータスを管理したり、アルコール検出器とセットにしてリモート点呼を実施するといった使い方だ。庫内作業のスマホ利用はロケーション管理や荷物の受け渡しがメーンで、検品やピッキング、棚卸しなどの作業に使うには、処理速度の点で専用ハンディとは差があった。
FCNTの田中営業統括部長代理は「arrows BZとアズリーダーを組み合わせることで、そこに新たな選択肢を提示した」と開発の狙いを語る。庫内のあらゆる作業工程を同じスマホでカバーして、さらにはドライバーまで同じ端末を使用することで物流システムの可能性は大きく広がる。
アスタリスクの加藤取締役は「例えばスマホをAGV(自動搬送車)やロボットのモニターとして使えば、何か問題が起きたら一番近くにいる管理者が駆けつけて、最短で修理するといった運用が可能になる。スマホを単にモノを管理するツールというだけでなく、業務全体のプラットフォームと位置付けることでDXの道が開ける」と指摘する。
法人向けスマホは今後さらに普及が加速する。専用ハンディからの移行が不可逆的に進んでいること加え、これまで法人利用が多かった割安なiOSデバイスが販売を終了。法人利用が中心のPHSやガラケー(3G)のカウントダウンも始まっているからだ。
FCNTを追って法人向けスマホに参入するメーカーも増えている。しかし、FCNTの田中営業統括部長代理は「当社が積み上げてきた経験とノウハウはそう簡単にキャッチアップされないと自負している。今後も当社は法人向けスマホのパイオニアとして市場をリードしていきたい」と意欲を見せる。
* AndroidはGoogle LLCの商標です。
arrows BZシリーズ製品詳細について
https://www.fcnt.com/business/product/arrows/
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