KDDIなどが茨城・つくばで実証実験、配送ロボットと連動のパターンも
KDDIとドローン事業を手掛けるKDDIスマートドローン、自動運転技術の開発を担うティアフォー、VR(仮想現実)などの技術を組み合わせ、現実世界と仮想世界を融合して新しい体験を作り出すクロスリアリティー(XR)を強みとするPsychic VR Labの4社は2月27日、茨城県つくば市で、ドローンやロボットを使った物流の実証実験をメディアに公開した。
病院と検査機関の間をドローンでPCR検体を模した物資を輸送したほか、スーパーから住宅地までドローンで食品を空輸した後に自動配送ロボットを使って個人宅へ配送するデモも披露した。
KDDIなどは新たな取り組みとして、XR技術を駆使し、国内で初めてスマートフォンのアプリなどでドローンの空路をリアルに描き出し、歩道の上空をドローンが飛んでいる時は周辺の人に“赤信号”で注意を呼び掛けた。KDDIなどは将来のドローン普及をにらみ、ドローンが上級を飛んでいても安全を確保できる技術としてXRを活用することを念頭に置いている。
政府は2022年12月、ドローンが補助者を置かず、有人地帯上空を自律飛行する「レベル4」を解禁。今年4月には公道上を自動で走行するロボットによる配送も可能になることから、人手不足に対応するため物流現場でドローンや配送ロボットの活用がさらに進むことが見込まれる。KDDIやKDDIスマートドローン、ティアフォーは実証実験の結果を踏まえ、早期の実用化を目指す。
PCR検体を模した物資を運んだACSL製ドローン
お弁当とペットボトル飲料を1.5km空輸
PCR検体の輸送は、つくば市内の「筑波メディカルセンター病院」と臨床検査を担う「つくばi-Laboratory」の間の約300mで実施。ACSL製のドローンを投入し、専用の容器に検体を模した物を入れて運んだ。
実験に参加している関係者は検体をドローンで空輸することで、陸送より時間を短縮し、検査の迅速化で患者により適正な措置を講じられるようになるほか、輸送に要する人員を減らし、より最適な業務に配置したり、中山間地などで緊急輸送を可能にしたりするなどの効果を見込んでいる。
PCR検体を模した物を搭載して「つくばi-Laboratory」に着陸するドローン
搭載したPCR検体を模した物
また、KDDIが展開しているXRの画像を映し出すスマホアプリを使い、スマホやデジタルサイネージ(電子看板)で、実際の風景の上にドローンが飛ぶルートを可視化した「空の道」を表示。実際のドローン運航情報と連動させ、ドローンが接近すると赤信号で通知した。
KDDIなどはドローン物流の普及に先立って、地域住民にリスクを分かりやすく伝え、安全度を高める手段として、XRがどのように利用できるのかを探っていきたい考えだ。
スマホアプリで表示したドローン飛行ルート。歩道上を飛行する際は“赤信号”を表示する(KDDI提供)
一方、ドローンとロボットを組み合わせた食品配送は、まず実験に協力しているつくば市宝陽台地区の住民がLEVER(リーバー、つくば市)開発の遠隔医療アプリで療養に必要な商品を注文すると、つくば市に隣接する牛久市のスーパー「フードスクエアカスミ牛久刈谷店」で商品をプロドローン(PRODRONE)製のドローンに搭載。約1.5km離れた宝陽台地区の公民館まで空輸した。デモでは、お弁当とペットボトル飲料をセットで搭載した。
そこから、川崎重工業が開発し、ティアフォーの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」を用いている自動配送ロボットに積み替え、公道を通って公民館周辺にある注文者の自宅まで届けた。安全確保のため、ロボットは走行中、スタッフが同行した。
お弁当と飲料を積んだプロドローン製ドローン
積んだお弁当とペットボトル飲料
ドローンにお弁当などをセット
スーパーから到着したドローンが着陸
自動配送ロボット
自動配送ロボットにお弁当などを積み替え
実証実験でドローンは「レベル4」を想定して実施したが、実際には、補助者を置いて飛行する「レベル2」に相当する環境だった。
実験では併せて、3機のドローンを同一空域で飛行させ、運航管理システムでニアミスを防ぐ、安全に飛ばすことができるかどうかを検証した。
(藤原秀行)