東京圏の物流施設、募集賃料は2年9カ月ぶり下落

東京圏の物流施設、募集賃料は2年9カ月ぶり下落

一五不動産調査、「上昇基調終わりつつあり弱含む懸念」と指摘

工業用不動産に特化した不動産調査を手掛ける一五不動産情報サービスは2月28日、今年1月時点の賃貸物流施設市場の動向に関する調査結果を公表した。

東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川、茨城の1都4県)の空室率は4.4%で、前回調査時の昨年10月時点の4.0%から0.4ポイント上がった。8四半期続けて前期から上昇した。

今期(22年11月~今年1月)は新規需要が108.3万㎡で、21年8~10月の109.4万㎡に次ぐ過去2番目の多さを記録。一方、新規供給は125.0万㎡と調査開始以来の最大に達し、需要を供給が上回ったことが空室率の上昇につながった。

同社は23年の新規供給が400万㎡前後と過去最大のボリュームになることが見込まれ、需給緩和がさらに進む公算が大きい点に言及。

「テナントの荷主・物流会社は、原油高や電気代の高騰などの物価高で収益が圧迫される上、2024年問題に代表される人手不足にも取り組む必要があり、自動運転などの技術革新による構造変化にも対処していかなければならない。山積する課題の解決に資する高機能型物流施設には、引き続き強い引き合いが期待できる一方、差別化が難しい物件の一部は賃貸市況の後退に伴い、リーシング期間が長期化していくことが懸念される」と展望した。

一方、1坪当たりの募集賃料は4510円で、前期の4700円から190円(4.0%)と大きく下落した。前期から下がるのは21年2~4月以来、7四半期(2年9カ月)ぶり。

同社は「新型コロナウイルス禍のこの数年間、物流施設の賃料水準は上昇基調であったが、その局面は終わりつつあり、インフレによるテナント企業の収益性の低下もあり、賃料水準は弱含む懸念がある」と指摘した。

関西圏は再び空室率上昇に転じる

関西圏(大阪、兵庫、京都の3府県)の空室率は2.4%で、昨年10月時点の1.6%から0.8ポイント上昇。前期は21年10月以来、1年ぶりに下がったが再び上昇に転じた。

今期の新規供給は18.5万㎡と落ち着いたことが一進一退につながっているもよう。

同社は2023年の新規供給が110万㎡と大量になることが予想されている点に触れつつ、2017年の水準は下回っていると分析。

「17年当時は大量供給で需給悪化が急速に進み空室率は10%超となったが、現下の関西圏の賃貸市場では底堅い需要が見られる。新興の物流エリアの一部ではリーシングに苦戦するケースが散見されるが、物流適地では堅調な需要があることから、需給緩和のスピードは緩やかで、2023年も落ち着いた賃貸市況が続くことが見込まれる」と予想した。

1坪当たりの募集賃料は4220円で、前期の4300円から80円(1.9%)ダウンした。下落は3四半期連続。

調査対象は延べ床面積または敷地面積が1万㎡以上の案件で、東京圏は599棟、関西圏は175棟。募集賃料は募集面積が1000㎡以上の賃貸物流施設。

(藤原秀行)※グラフはいずれも一五不動産情報サービス発表資料より引用

調査結果はコチラから(一五不動産情報サービスホームページ)

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