中小企業や自動車など製造業カバー継続、ヘルスケアなども注視
昨年10月に就任したUPSジャパンのダリル・テイ社長は3月14日、東京都内で開いた2019年の事業戦略説明会に出席した。同社長は、日本を起点とする貿易の取扱量はさまざまな国・地域とのEPA(経済連携協定)締結などの効果で引き続き拡大していくと予想。そうした状況を踏まえ「サービス強化」「中小企業」「(自動車などの)垂直産業」を今後も注力する3本柱に据えていく考えを示した。
その一環として、中小企業の米国向けEC(電子商取引)出荷をサポートするフルフィルメントサービスを始めたことを明らかにした。
19年の事業戦略を説明するテイ社長
テイ社長は18年のグローバル全体の業績に関し、貨物の取扱量が伸びたことなどから、売上高は719億ドル(約7兆9000億円)で前年から7・9%増加、純利益も63億ドル(約6900億円 )で20%近く増えたと説明。「われわれの戦略の成果であり、売り上げの質を向上させることができた」と強調した。
国際小口貨物部門は144億ドル(約1兆5800億円)で、17年から8・2%アップし、特に欧州は2桁台の利益率を達成したという。テイ社長は好調な業績について「当社の幅広いポートフォリオや多様な収益基盤、グローバルの柔軟なネットワークが世界的な景気鈍化の影響を緩和するのに役立った」との見方を示した。
米中摩擦など懸念も「日本は引き続き国際貿易の重要なプレーヤー」
日本における19年の事業戦略に関連し、18年に輸出の総額が164兆円と世界4位を記録し、今後も輸出入がともに拡大していくとの民間予測に言及。日本とEU(欧州連合)のEPAや環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)で合意したほか、日本がトルコと締結を目指しているEPAについても自動車や自動車部品のメーカーなどにとって恩恵になると予想した。
その上で「われわれは引き続き、これらのセグメントに注力している」とアピール。製造業や中小企業向けに集荷時間締め切りの延長、米国内での土曜集荷スタートに伴う日本への輸入貨物の配達時間短縮などサービス強化を図っており、19年も継続する姿勢を明示した。
併せて、「ヘルスケアとライフサイエンスが日本において、自動車や産業機械、ハイテクなどに続く(重要な)エリアだと考えている」との認識を示した。
米中経済摩擦が世界経済の先行き懸念材料になっていることには「地政学上で困難な状況が続いているが、国際貿易において日本は引き続き重要なプレーヤーであると予想している」と説明。当事者らがグローバル経済への影響を最小限にとどめるため行動するとの前向きな予想を明らかにした。ブレグジット(英国のEU離脱)の動向が不透明になっていることに対しても「結果によっては顧客が困難に直面する可能性があるが、当社としては顧客ヘルプする体制ができている」と明言した。
物流現場の人手不足への対処については、デジタル化などへの投資を積極的に検討していく姿勢をのぞかせた。
(藤原秀行)