決算集計、国際物流の市況低下が影響
ロジビズ・オンラインが上場物流企業71社の2023年3月期連結決算を集計した結果、売上高はトータルで前期(22年3月期)比8.5%、本業のもうけを示す営業利益は15.7%それぞれ増加したことが分かった。
特に海運業が、国際物流の混乱に伴う海上・航空運賃の記録的な高騰の効果から大きく収益を伸ばし、全体をけん引した格好となった。
一方、24年3月期の連結決算予想については、売上高と営業利益がトータルでともに前期実績を割り込む見通しとなっている。世界的なインフレや経済成長減速で荷動きが鈍化し、コンテナ船運賃が軟化することなどが影響すると予想する向きが大勢。海運業や国際物流を担っている倉庫・運輸関係業が市況悪化を受けるとみている。
ただ、トータルで見た場合、24年3月期予想は22年3月期実績に営業利益で及ばない一方、売上高は上回るとの見通しだ。国際物流のイレギュラーな動きが正常化されていく中で、上場物流企業の決算内容も実力値としての性質を取り戻してきている公算が大きそうだ。
対象としたのは、東京証券取引所と札幌証券取引所、名古屋証券取引所のいずれかに上場し、証券取引所の業種区分で「運輸業」(30社)、「海運業」(10社)、「倉庫・運輸関連業」(31社)に分類されている企業。ある物流企業が別の物流企業の子会社や関係会社に該当している場合も、今回は物流業界のおおまかな収益傾向をつかむため、特例として集計の対象に入れている。
また、71社のうち、東部ネットワークは23年3月期から連結決算に移行し、22年3月期は単独決算だったため、この2期の数字を比較する際は同社を除く70社ベースで算出している。
陸運業はヤマトとSGが全体引き下げ
3業種別に23年3月期実績を見ると、海運業が売上高で20.7%、営業利益で42.1%と目立って伸びている。10社全てが増収を記録し、9社が増益を達成した。営業利益は川崎汽船が4倍超、商船三井も2倍と大手3社を中心に伸長した。
陸運業は東部ネットワークを除いたベースで売上高が1.4%増えたが、営業利益は5.1%減少した。これはヤマトホールディングス、SGホールディングスの2社が事業改革費用の計上やコスト増加が影響して営業減益となったことが全体を大きく引き下げたためで、この2社分を除いた営業利益ベースでは6.6%増加した。
倉庫・運輸関連業は売上高が6.1%、営業利益が9.4%それぞれ前期から伸びた。これまでの業種と同じく、国際物流にタッチしている企業が収益を伸ばしている印象だ。
半面、24年3月期予想に関しては、海運業は売上高が10.7%、営業利益が36.2%減るとの見通しだ。23年3月期と対照的に、増収、増益を確保できたのはいずれも1社のみだった。
陸運業は東部ネットワークも加えたベースで売上高が3.1%、営業利益が0.5%と伸びる想定。増収を見込むのは27社、増益とみているのは21社で、23年3月期決算公表時の23社と19社をいずれも上回っている。経営環境は依然厳しいが、新型コロナウイルス感染拡大で停滞した経済活動の回復などがプラスに働くもようだ。
倉庫・運輸関連業は売上高が3.5%、営業利益は18.9%減る予想。こちらも海運業と同じく、国際物流を手掛けている企業を中心に、市況の悪化が影響して全体を押し下げる格好となるのが主因だ。
実際、決算短信では「物流事業においては高騰していた運賃価格は正常化し、取り扱い物量も減少するものと予想」(日新)、「国際運送取扱事業においては、海上運賃単価の正常化等に伴う収入の減少が予想され、物流事業全体で減収が予想される」(三菱倉庫)、「国際輸送貨物の取り扱いの減速が予想される」(住友倉庫)、「総合物流事業においては全般的な在庫調整による影響や、さらには国際複合輸送業においては海上輸送の混乱が収束したことによる運賃の適正化と取り扱い減少などにより減収を見込んでいる」(日本トランスシティ)などの声が聞かれている。
(藤原秀行)