投資対象として期待
不動産証券化協会の菰田正信新会長(三井不動産会長)は5月30日、東京都内で就任後初の記者会見を開いた。
菰田氏は「不動産投資市場のさらなる飛躍と成長基盤の強化に向けて、一層の緊張感と使命感を持って取り組む」と決意を表明。Jリートへの投資拡大などを目指す姿勢を強調した。
今後重要視する3点として、ESG投資やSDGsへの対応、NISA(少額投資非課税制度)拡充への対応、Jリートの投資法人の資産運用会社が2022年に不祥事で金融庁から業務停止処分を受けたのを踏まえたコンプライアンス強化を列挙し、施策を展開していくことをアピールした。
また、冷凍冷蔵倉庫の需要が高まっていることに関し、今後賃貸冷凍冷蔵倉庫のマーケットが確立していくとの見方を示し、投資対象としても成長していくことに期待をのぞかせた。
会見する菰田氏
菰田氏は、Jリートで中心的なアセットとなっている物流施設の動向について「eコマースを含めて、新型コロナウイルスが逆に追い風となっていて(投資口価格が)非常に高値で推移してきたが、他のセグメントのリートとのバランス感覚も含めて、若干今まで少し高過ぎたのが調整されているのが今の状況だと思う」と指摘。投資口価格水準の適正化に向けた調整局面にあるとの見解を示した。
かねてから同協会で課題の1つに掲げて取り組んでいる投資対象となる資産の多様化に関し「まだ日本の場合、投資対象の範囲が米国に比べると非常に狭い。インフラや公的不動産、海外不動産など、いろんな観点でもう少し、用途の多様化を進めていくのも大きな課題と思っている」と語った。
物流施設が開発用地の高騰や建設コスト上昇などで供給面に不安を抱えていることについては「特に物流施設の場合は(プロジェクト全体に占める)建築費のウエートが高いため、建築費が上がった場合のマイナスの影響は結構強い」と解説。
その上で、老朽化した物流施設が東京湾岸部などで多く残っており、スクラップ・アンド・ビルドする必要が出てきているため「多少は(老朽化倉庫からの建て替えが)供給のプラスになっている」との見方を明かした。
さらに、物流施設などに関し「金融緩和が若干収縮した状態になった時の方が(開発用地の)物件は出てくる。ものすごく低金利で金融緩和状態の場合は、工場跡地などの遊休地を売らなくても金融機関から事業資金を調達できるため、なかなか(オーナーが)お売りにならない。逆に金融マーケットが厳しくなると金融機関から資金を調達しにくくなるので、資産を売却するという調達手法に変わってくる」と展望した。
冷凍冷蔵倉庫については「普通の倉庫より価格を高く付けられる。スペックごとにマーケットが形成されていくんじゃないかとみている」と語った。
(藤原秀行)