日本発のドローン運航管理システム「何としても国際標準化へ」

日本発のドローン運航管理システム「何としても国際標準化へ」

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開発参画のNEDOが意気込み強調

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)やNEC、NTTデータ、楽天などが福島県南相馬市の先端技術実験用施設「福島ロボットテストフィールド」(RTF)で3月1日に行ったドローン(小型無人機)の実証実験は、同一空域内で複数の事業者が目的の異なる10機のドローンを一度に飛ばしても、互いに衝突せず無事想定していた任務を果たすことに成功した。

今回の実証実験は、NEDOと民間企業が共同で研究開発を進めてきたドローンの運航管理システムを活用した。関係者は物流など産業分野へのドローン導入をさらに後押しする成果と注目している。

NEDOや地元福島県の担当者は今回参画した実験に際し、RTFで同日、メディアの取材に応じた。NEDOは研究を継続して運航管理システムの普及を促進するとともに、ドローンが物流などで本格的に利用される未来を見据え、国際標準として採用するよう提案していくことに強い意欲を示した。

一方、福島県の担当者はRTFが既にドローンの実験場として機能を備えており、今後はさらに各種施設が整備されると説明。最先端の物流など向けドローン研究開発拠点となっていくことに期待感を表明した。


実証実験で複数の機体が飛び交うRTF上空※クリックで拡大


RTF上空を飛ぶNTTドコモのドローン

「上空を1000機が飛び交う」世界を想定

システムの開発はNEDOの「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」の一環。2017~21年度の5年間を事業期間に設定しており、前半の3年間でドローンの運航管理システムや衝突回避技術などに関する基礎研究を完了。残る2年間で実用化の道筋を付けるとともにシステムの国際標準化を推進していくとのシナリオを描いている。ドローンの活用で配送時の環境負荷軽減や新たな市場形成による経済効果創出を目標に掲げている。

NEDOロボット・AI部の宮本和彦プロジェクトマネージャーは、今回の運航管理システムに関し「異なった事業者が一度にドローンを数多く飛ばす近未来の姿を想像した時に、ドローンが相互に位置を認識したり、出発地点を特定したりすることをどこかで統合的に見ていかないと容易に衝突してしまう。事故を回避するため運航管理を統合する機能を想定した」と説明。

その上で「人の手が介在せず事業者間でシステムを相互接続、稼働させることができた。日本でも世界でも類を見ない研究成果だ。19年度末にはさらに進化した、しっかりとした成果をお示しする」と強調した。

さらに、システムのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開し、今回の開発に携わっているメンバー以外の国内外企業もシステムへの接続を可能にして研究をさらに加速する構想を発表。「オールジャパンで築いた技術を何としても国際標準化まで持っていきたい」と強い意気込みを示した。

運航管理システムを活用する前提となる、同一区域で複数のドローンを飛ばす場面として、宮本部長は「区や市といった規模のエリアで1時間に1000機程度が飛行できる環境を目指していく」との考えを例示し、都市の空をドローンが飛び交う近未来の姿を念頭に置いていることを強調した。

実験に参加する事業者を代表して、NEC未来都市づくり推進本部の橋本研一郎シニアマネージャーも登壇し、「今回の実証実験をベースに多数のドローンが飛ぶ社会の実現へ頑張っていきたい。運航管理システムをトリガーにして、国内外に情報を発信し国際標準化に向けた提案を進めていきたい」と力説した。


国際標準化へ意気込みを示す宮本部長

RTFが物流など「有人地帯の目視外飛行」市場開拓を牽引

一方、福島県商工労働部の北島明文ロボット産業推進室長は、RTFの現状をプレゼンテーションした。RTFは国の補助を受けて県が整備を進めており、南相馬市の復興工業団地内にある東西約1000メートル、南北約500メートルの敷地内にさまざまな先端技術の実証実験が可能な設備を導入した一大国際研究開発拠点を誕生させる壮大なプロジェクトだ。


RTFの全体イメージ(福島県作成パンフレットより引用)※クリックで拡大

東京電力福島第1原子力発電所事故で甚大な被害を受けた県の「浜通り地方」に新たな産業を呼び込み、復興を後押しする「イノベーション・コースト構想」の中核となる施設だ。全体の完成は19年度末を見込む。

RTFはドローンにも注力しており、世界初のドローン試験施設となる「無人航空機エリア」を設定。昨年7月には、ドローンの飛行試験に活用できる通信塔や広域飛行区域の運用がスタートした。通信塔は高さ約30メートルで、南相馬市と浪江町の間の約13キロメートルに及ぶ広域飛行区域を飛行するドローンに遠距離から指示送信するための通信アンテナ、鳥や有人飛行機の接近を感知するレーダーなどを備えている。既にドローンを落下させて安全性を検証したり、災害時を装置して操作したりと50を超える多様なドローン飛行実験が行われてきた。

北島室長は今後、ドローンをはじめとした無人航空機がどれほど風に耐えられるかを試験できる「風洞棟」なども順次完成していくと解説。「既に安全かつ円滑に試験を行うことが可能な環境が出来上がっており、高層の大気を観測するため2000メートルの上空までドローンを飛ばすといった実験が既に行われている。今後は実際に橋梁を設置し、インフラ点検のためのドローン操縦訓練や機体開発ができるようになるなど、より多彩な性能試験が可能になってくる」と展望した。

さらに、「これから物流のドローン開発が大いに進んできて、有人地帯の上を飛ぶとなると恐らく機体に関する何らかの基準が設定されてくると思う。その基準を満たせるのかどうかがここで検証可能になる」と意義を強調。「物流や警備など有人地帯での目視外飛行という市場開拓をRTFが率いていきたい」との決意をあらたにした。


RTFへの大きな期待を語る北島室長

(藤原秀行)

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