【現地取材】巨大物流施設開発プロジェクト「ALFALINK」、地域との共生などで新たなステージに

【現地取材】巨大物流施設開発プロジェクト「ALFALINK」、地域との共生などで新たなステージに

第1弾が神奈川・相模原で完成、満床稼働と成果

日本GLPが神奈川県相模原市で展開してきた、約30万㎡の敷地内に先進的な機能を備えた大規模な物流施設4棟を集中して開発するプロジェクト「ALFALINK(アルファリンク)相模原」が完成した。1500億円超を投じて建設した4棟の総延床面積は約68万㎡に及ぶ国内有数の規模となった。

入居企業の物流効率化への貢献にとどまらず、ALFALINKが掲げる地域社会との共生、入居企業間の交流促進などのコンセプトを体現しようと、これまでの物流施設のイメージを覆す様々な仕掛けをしているのが大きな特徴だ。縁の下の力持ち的な文脈で語られることの多かった物流施設を「新たな事業を創出する場」へ進化させる壮大なALFALINKのプロジェクト第1弾は、4棟全てが満床となるなど、着実に成果を挙げている。

舞台装置がひとまずそろったことで、今後は様々な仕掛けをうまく機能させ続け、地域社会との共生などをより確たるものとできるかどうかが問われる新たなフェーズに入る。日本GLPの帖佐義之社長は「まだまだ認知度は高くない分、できることもいっぱいあるのではないかと思っている」とALFALINKを各地で展開していくことに強い意欲を見せており、相模原の場で先進的な取り組みを実施、他のALFALINKの物流施設に横展開していくことも見込まれる。


4棟が立ち並ぶ「ALFALINK相模原」(日本GLP提供)

「裏方」から「事業を創出する場所」に

「着工前にALFALINKのコンセプトを私から記者の皆さんに説明させてもらったが、私の説明が拙かったせいもあり、いまいち皆さんの反応が薄かった」。帖佐義之社長は6月8日、「ALFALINK相模原」の現地で開催したメディア向け内覧会の際、2019年11月に初めてALFALINKの計画を公表した記者会見の当時を苦笑しながら振り返った。

当時の会見では、帖佐社長がALFALINKブランドのコンセプトとして、

・「Open Hub」=施設の「見せる化」を図り、自動運転実証実験の場などとして開放することで価値・事業創造拠点として運用することを目指す。地域に開かれ、親しまれる存在となる
・「Integrated Chain」=商品企画から配送までサプライチェーン全体を1カ所で統合、運営できるよう施設機能を配慮し、施設内で出荷・集荷が可能となる
・「Shared Solution」=自動化支援に注力し、物流ロボットのシェアリングサービスなどを展開する

――の3点を表明。

施設内の先進設備を積極的に外部へ公開し、学生の職場体験なども行って人手不足改善への貢献を目指す考えを示していた。物流施設4棟をつなぐ敷地の中心部分には、リング状の共用棟を設け、カフェテリアや託児所、コンビニエンスストアなどを導入する方針も表明。帖佐社長は「これまでは裏方だった物流施設が、事業を創出する場所として生まれ変わる」と強調した。


共用棟「リング」。ペデストリアンデッキで各棟と結んでいる

「ユニクロ」のロゴマークを考案したことなどで知られるクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏がコンセプト作りに携わり、物流施設を「見せる化」する方針を打ち出すなど、これまでにはない考え方が並んだ異色のプロジェクトだったこともあって、確かにメディア側も帖佐社長の真意を正しくつかんでいたとは、必ずしも言えない状況だった。競合のデベロッパーからも「1カ所に大型の物流施設を複数集めるのはかえって入居企業にとって効率が悪くなるのではないか」などと懐疑的な見方が出ていた。

しかし、「ALFALINK相模原」は現在、4棟全てが満床となり、研修施設やオフィスなどで利用しているケースも含めると施設内で事業展開している企業は30社以上、施設内で働く総従業員数は小さな自治体の人口並みの約5000人に及ぶ。まさに1つの事業拠点となっている。

Open Hubとしては、入居する企業同士で人材育成に関するノウハウを共有できるようにするための研修や交流会を開催。併せて、入居企業とは定期的に連絡協議会を開き、施設運営の要望を聞くなどしている。

地域とのつながりの形成にも相当のリソースを割いている。敷地の中央には広い芝生のスペースを設け、バスケットボールなどができるマルチコートを設置。地元の小学生向けの物流施設見学会や交通安全講習も積極的に開いている。これまでに「ALFALINK相模原」敷地内で実施した地域住民や施設従業員ら向けのイベントは約230件に達した。


マルチコート


敷地内で活躍する芝刈りロボット

日本GLPがメディアに「ALFALINK相模原」を公開した6月8日も、敷地内では託児所の幼児たちが楽しそうに散歩する姿が見られたほか、地域の小学生が物流施設の見学に訪れていた。いずれも日常的に見られる光景だという。


青空の下、幼児たちがお散歩


見学に訪れた地元の小学生たち

Integrated Chainでは、延床面積が33万1343㎡と4棟の中で最大の「相模原1」の5階に、佐川急便や西濃運輸のトラックターミナルを設置。入居企業の迅速な入出荷を可能にしている。物流施設内で冷凍冷蔵設備や生産設備への対応も可能だ。


トラックターミナル

先進技術の活用にも腐心している。共用棟のリング内にある「ファミリーマートALFALINK相模原店」は、バックヤード内で飲料を商品棚に補充する作業にTelexistence(テレイグジスタンス)製のロボット「TX SCARA」を導入、24時間体制で行えるようにしている。敷地内ではティアフォーの技術を使った自動運転バスが走行し、実証を重ねている。

さらに、物流施設専用のスマートフォンアプリを開発。施設内のレストランでの注文・支払いや入館を容易に行えるほか、マルチコートの予約も可能。従業員に加えて地域住民も使っており、これまでにダウンロードされた数は約1万5000に上る。


敷地内を走る自動運転バス

他にも、テナント企業の従業員が不在の夜間でも、荷物を置いておけば無人のままトラックドライバーが積み降ろしできる「置き配バース」を設置。ALFALINK相模原内で使うパレットのサイズ統一を図るなど、物流業界の大きな課題となっている物流センターでのトラックドライバーの長時間待機を解消するための地道な取り組みも施している。

ある物流業界関係者は、先進的な物流施設が集結し、地域との共生にも注力するALFALINKのコンセプトに賛同した上で「物流施設は10年、15年、20年と長く運営していくことも多い。ALFALINKの新たな試みはまだ始まったばかりなので、ノウハウを蓄積していくことが重要」と指摘する。

(藤原秀行)

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