「変動料金制」や高速道路の最高速度引き上げ・割引拡充維持を追加

「変動料金制」や高速道路の最高速度引き上げ・割引拡充維持を追加

官民検討会、持続可能な物流実現の最終取りまとめ修正案を大筋了承

国土交通、経済産業、農林水産の3省は6月16日、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を開催し、物流が直面しているトラックドライバーの長時間労働規制強化に伴い物流の混乱が懸念される「2024年問題」をはじめ、人手不足などの諸課題を解決し、持続可能な物流を実現するための具体策に関する議論の「最終取りまとめ」の修正案を提示した。

前回会議の5月19日に示した原案の方向性をほぼ踏襲しており、物流効率化の促進へ一定規模以上の荷物を扱う荷主企業や物流事業者を対象に、非効率な商慣習の改正などに関する中長期の計画作成と進捗の定期報告を義務付け、取り組みが著しく不十分な場合は国が是正を勧告・措置命令できるようにする法的措置の具体的な検討を進めるべきだとの提言を維持した。

荷主や元請けの運送事業者が実運送事業者を把握できるようにするための「運送体制台帳(下請け事業者リスト)」の作成などを求めることも継続して盛り込んだ。

さらに、原案に追加して、商取引の際の物流コストを可視化し、荷主企業に意識させるため、物流サービスの需要変動に応じて運賃や料金を変動させる「ダイナミックプライシング(変動運賃・料金制)」の採用を推進することを提示。高速道路で大型貨物自動車の最高速度を引き上げたり、大口・多頻度割引の拡充措置を継続したりすることも検討するよう求めている。

検討会は修正案を大筋で了承した。事務局を務める3省は今後、検討会メンバーから出た要望や意見を基に、表現の修正など調整した上で、一般からの意見募集(パブリックコメント)を実施、最終的な内容を確定する予定。

会合で経産省の茂木正商務・サービス審議官は「産業界自身も大きく認識が変わってきている。物流は自社のサプライチェーンのもんだいであり、経営課題そのものだとの認識になってきた」と指摘。荷主企業による荷待ち・荷受け時間の把握から着実に対策を進めていく姿勢を強調した。

国交省の鶴田浩久公共交通・物流政策審議官は「政府として(2024年問題対応の)政策パッケージをまとめることができたのも、当協議会の議論の蓄積があってこそだった。2024年問題は構造的な問題であり(対策の)実行に向けて精いっぱい取り組んでいく」と決意を示した。

協議会の議論進行役を務めた根本敏則敬愛大学経済学部教授は「(メンバーの)皆さんには最終取りまとめの責任を取っていただく。ぜひ全国隅々までおとずれて、最終取りまとめの内容の解説をしていただきたい」と要請した。

規制的措置は堅持、「メニュープライシング」などでコスト見える化促進も

修正案は、原案と同様、前段で「2024年で対策が終わりということではなく『始まり』であり、これから提示した政策について、継続的に取り組む必要がある」と強調。「物流事業者、荷主企業・消費者、経済社会の『三方良し』を目指す」との基本的な考え方を維持している。

その上で、荷主企業や物流事業者の物流業務改善の進捗状況が消費者や市場から評価されるよう、物流改善のランク評価付けなどの仕組みを創設することなどを提案。消費者の意識を変革するため、荷物配達日を分散した場合にインセンティブを付与するといった施策を実施すべきだとの見解を示した。

物流改善を後押しするための規制的措置についても、原案の表記を基本的に踏襲。一定規模以上の荷物を扱う荷主企業や物流事業者を対象に、トラックドライバーが物流センターで長時間待機を強いられる状況の解消など、中長期で物流現場の改善を目指す計画作成と進捗の定期報告を義務化することなどを示している。その際、対象企業に物流の管理責任者を置き、計画作成の中心となることを想定している。

規制的措置については、企業に対し化石由来ではないエネルギー使用の拡大を求める改正エネルギー使用合理化法(省エネ法)の仕組みを参考にしている。ただ、法的措置の具体的な枠組みは今後の関係省庁などの検討に委ね、最終取りまとめの段階では明確に記述していない。

併せて、運送業界の下請け構造是正や運送業務の契約条件明確化のため、同様の下請け構造が常態化している建設業界を参考に、元請けの運送事業者に対して下請け運送事業者の名称や各事業者が担っている運送業務の内容を記載した「運送体制台帳(下請け運送事業者リスト)」の作成を義務付けることを提案。

さらに、発荷主企業と着荷主企業の間の商取引で商品販売価格に物流費を含める商慣行 (店着価格制)が存在する実態に触れ「着荷主にとって、繁忙期を避けた発注や発注の大ロット化やパレチゼーション等の物流負荷軽減に資する取り組みを行うインセンティブが働かない状態となっている」と懸念を表明。

基準となる商品価格を設定し、物流サービスの内容に応じて価格を変動させる「メニュープライシング」や「ダイナミックプライシング」など、商取引における物流コストの見える化を促進する施策を講じるよう主張した。

ドライバーの採用・定着に不可欠な賃金水準向上に関し「環境整備の検討が不可欠。水準改善に向けた取り組みが一層進むような施策を検討すべきだ」と強調。このほか、デジタル技術を活用した共同輸配送や帰り荷の確保、官民連携の物流資機材などの標準化も引き続き促進することを要望した。消費者や荷主企業に対する物流変革の広報を強化することも提示している。

(藤原秀行)

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