国際地位向上へ戦略港湾のDX・GX加速、北米・中南米向け貨物の取り込みも

国際地位向上へ戦略港湾のDX・GX加速、北米・中南米向け貨物の取り込みも

政府の検討委が中間取りまとめ案

国土交通省は6月24日、「新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会」(座長・河野真理子早稲田大学法学学術院教授)を開催し、2024年度から5年間程度の政策の方向性に関する意見を集約した中間取りまとめの案を提示、委員から大筋で了承を得た。

中間取りまとめ案は、現行の政策で柱に据えている、国際コンテナの取り込みを図る「集貨」、国際コンテナ戦略港湾に関連産業を集積する「創貨」、港湾の機能高度化と脱炭素化を進める「競争力強化」の3点を引き続き強力に進めていく方針を提示。

トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」への対応を進めることを明示した。併せて、労働力不足などへ対応するため、国際コンテナ物流のDX、GX(グリーントランスフォーメーション)を加速させることも打ち出した。

国交省は文言を修正の上、近く中間取りまとめを正式に公表。2024年度政府予算の概算要求に反映させるとともに、24年1月をめどに最終取りまとめを決定したい考え。具体的な数値目標も検討する見通し。

コンテナターミナル一体運営化へロードマップ作成

中間取りまとめ案は、国際コンテナ戦略港湾に設定している京浜港、阪神港の国際的地位向上を図るため、日本の地理的特性を生かし、アジア諸国に進出している日系企業などの北米・中南米向け貨物を主なターゲットとして、国際機関航路の輸送ルートを構築し、トランシップ(積み替え)も含めて集貨を図る方針を表明。

外航・内航コンテナ船が混雑状況などに応じて柔軟に着岸・荷役の予定を変更したり、貨物の積み替えを円滑に行えるようにしたりするなど、コンテナターミナルを一体的に使えるようにするためのロードマップ(工程表)作成に取り組むことも盛り込んだ。

併せて、内航フェリーやRORO船が国際基幹航路と円滑に接続できるようにするなど、2024年問題を踏まえて企業が鉄道貨物や内航海運をより使いやすくすることを提案。国際コンテナ戦略港湾と内陸地域などを結ぶ海上コンテナ専用列車(ブロックトレイン)の早期実現を目指すことも打ち出した。

コンテナターミナルの脱炭素化に関し、船舶への陸電供給や荷役機器電動化に必要な、再生可能エネルギー由来の「グリーン電力」を安定的かつ経済的に確保する方策を検討すると明記。LNG(液化天然ガス)を洋上で燃料として供給できるよう、LNGバンカリング拠点の形成を進めるとともに、港湾運営会社が国内の地方港や海外の新港と連携するため、海外港湾の運営参加などを後押しすることも列挙した。

トランシップ貨物を取り込めるよう、流通加工や再混載など複合機能を備える高機能な物流施設の開発を後押しするための支援策を講じることも提案。港湾荷役の生産性向上へガントリークレーンやRTG(タイヤ式門型クレーン)の遠隔操作化を推し進めることなどを提示した。

(藤原秀行)

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