政府系の産業革新投資機構が半導体素材大手JSRを買収へ、サプライチェーン強靭化急ぐ

政府系の産業革新投資機構が半導体素材大手JSRを買収へ、サプライチェーン強靭化急ぐ

年内にもTOB、最大1兆円規模の見通し

政府系投資ファンドの産業革新投資機構(JIC)が、東京証券取引所プライム市場上場で半導体素材大手のJSRを買収する方向で最終調整に入ったことが分かった。

政府は経済の側面で国や国民をさまざまな脅威から守る「経済安全保障」の観点から、産業に不可欠な半導体のサプライチェーンを強靭化し、国際競争力を強化することに注力している。JICがJSRを傘下に収めて非上場とすることで、株式市場の動向などに左右されず成長に向けた投資を機動的に行える体制を確立したい考え。

JSRは6月24日、日本経済新聞などがJICによる買収を報じたのを受け「当社が本件を検討していることは事実だが、本日現在決定している事実はない」とコメントを開示。6月26日開催のJSR取締役会に、JICの出資受け入れを付議する予定になっていることを明らかにした。

JICは6月24日夕方時点で、公式にはコメントしていない。

JSRは1957年、合成ゴムの国産化を目指して発足した日本合成ゴムが前身。69年に完全民営化された後は半導体素材などに事業領域を拡大した。半導体の回路を形成する際に用いる素材のフォトレジスト(感光材)で、世界シェアの約3割とトップクラス。

JICは2023年中にもJSRにTOB(株式公開買い付け)を実施する方向で調整を進めている。買収額は最大で1兆円規模に上る可能性がある。

(藤原秀行)

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