初の海外展開、海洋環境保護への貢献目指す
伊藤忠商事とスカパーJSATは6月19日、カタール環境省(MECC)に対し、SAR(合成開口レーダー)衛星画像を活用した海上オイル漏れ検知サービスの提供を開始したと発表した。
全世界で、石油タンカーによるオイル流出事故は1970年代以降、約2000件報告されている。特にカタールを含む、多国籍船舶が多く航行するペルシャ湾沿岸はオイル流出対応策を長年検討しており、環境保護の観点からも、船舶から漏れ出したオイルを沿岸部への着岸前に可能な限り早く検知し対処することが重要となっている。
SARは地表にマイクロ波を照射し、反射して返ってきた信号を分析することで地表の画像を得るレーダー。雲や噴煙を透過し、昼夜や天候に関係なく地表の状況を把握することができるのが強み。
検知サービスは、スカパーJSATが提携しているノルウェーの大手衛星事業者Kongsberg Satellite Services(コングスベル・サテライト・サービシズ、KSAT)と、KSATのパートナーが保有する地上局で取得したSAR衛星画像を用いて、海上のオイル漏れを見つけ出す。その後、船舶が発信するAIS(船舶自動識別装置)情報と組み合わせて解析し、オイル漏れのあった船舶を特定する仕組み。
伊藤忠とスカパーJSATは共同で本サービスの提案活動を進めてきた。今般、様々な衛星を組み合わせた幅広い海域の観測が可能な点や、デイリーおよび緊急時の観測レポート内容が評価され、カタール環境省のサービス導入決定に至った。2社が共同で衛星データを活用した海外向け解析サービスを提供するのは初めて。
今後、本サービスを継続的にカタールへ提供することに加え、同様の需要がある海域の国や企業でも利用できるように展開していくことで、沿岸部の海水淡水化施設や発電所などの重要施設をオイル漏れによる被害から防ぎ、海洋環境の保護に貢献していきたい考え。
カタールMECC向けオイル漏れ検知サービスのイメージ
オイル漏れ画像(左)とAIS情報(いずれもプレスリリースより引用)
(藤原秀行)