ドローンで新聞や生乳検体配送、地方で「新スマート物流」着実に拡大

ドローンで新聞や生乳検体配送、地方で「新スマート物流」着実に拡大

路線バスなど使った貨客混載も【第2回シンポジウム詳報(前編)】

ドローンなどの先進技術を活用した「新スマート物流」を普及させ、人口減少に直面する地方の物流ネットワーク維持を図る「全国新スマート物流推進協議会」は7月7日、東京都内で「第2回新スマート物流シンポジウム」を開催した。

新スマート物流に携わっている民間企業の担当者や地方自治体の首長らと、ドローンを所管する国土交通省の幹部が参加。既にドローンを使って生活必需品や新聞を住民に届けるなど、地方で新スマート物流の普及が広がっている現状をアピールした。

併せて、独自のTMS(運行管理システム)でドローンとトラックを組み合わせた効率的な物流を実現するなどの新たな動きも紹介。物流ネットワークの維持で、どこに住んでいても欲しい物を欲しい時に手に入れられるようにするなど、「取り残された地域を作らず、豊かさを全国隅々まで行きわたらせる」との協議会の思いを全面に打ち出した。

シンポジウムにはリアルとオンラインで約300人が参加し、ドローンなどを使った新たな形態の物流への関心が高まっていることをうかがわせた。シンポジウムの内容を前後編の2回に分けて紹介する。


会場の様子

19の市町村が会員に

シンポジウムは新スマート物流の推進役を果たしているセイノーホールディングスとエアロネクスト、同社子会社のNEXT DELIVERY、KDDIグループのKDDIスマートドローンの4社が特別協賛で参加した。

冒頭、協議会の会長を務める北海道上士幌町の竹中貢町長が主催者を代表してあいさつに立ち、同町でも実施している新スマート物流の進捗状況を報告した。

同町では中心部から離れたエリアへドローンで地元紙の十勝毎日新聞を届けた事例などを取り上げ、「新聞がこれまで(中心部以外は)翌日配送だったのが、ドローンの実験で住民は当日に受け取ることができるようになった。非常に喜ばれている。荷物に関する困りごとを調査する中で、地域で必要とされる新たなサービスが生まれてきている」と新スマート物流の効果を実感していることを強調した。

その上で「1つ1つは小さな取り組みだが、官民が一体となって(共同配送などの)流れをより大きくし、北から南まで誰1人取り残されることのない社会を目指していきたい」と抱負を語った。


竹中町長

続いて、国交省の鶴田浩久自動車局長(物流・自動車担当)が登壇し、「物流2024年問題への対策とドローン物流への期待」と題して講演した。

鶴田局長は、「2024年問題」など物流を取り巻く環境が厳しく、課題の切実さがどんどん増しているのを踏まえ、国交省としても10月に「物流・自動車局」を改組、発足させることを紹介した。さらに、最近の潮流として物流の小口多頻度化が急速に進む一方で労働力不足が懸念されている点などを、データを取り上げながら報告した。

こうした背景を基に、昨年12月に改正航空法を施行し、ドローンが有人地帯上空で目視外飛行する「レベル4」を解禁するなど、国交省としてドローン物流の社会実装を後押ししていることを強調。これまでに全国46地域で行われたドローン物流の実証実験49件を支援してきたことにも触れ、国交省としてもドローン物流の発展に期待していることをアピールした。


鶴田局長

協議会の理事でエアロネクストとNEXT DERIVERYの代表取締役も務める田路圭輔氏は、協議会に現時点で全国19の市町村と12の企業・団体が参加していることなどに言及。スマート物流の機運が高まっていることをPRするとともに、新スマート物流を展開しようと取り組んでいる自治体の先行事例と成果を報告した。

地方自治体として初めて本格的に新スマート物流を始めた山梨県小菅村は、当初の構想で村内にドローン配送ルートを計8地区全てに開通させると設定していたのに対して現状では6地区まで実現できた。注文を受けた商品を発送する拠点「ドローンデポ」は、当初は注文の受付専用の「ダークストア」として運営していたが、実際に店舗で購入したいとの村民のニーズがあることを受け、実店舗としても展開、コミュニティ拠点になろうとしているという。

また、買い物代行サービスを展開しているほか、7月には3店舗からのフードデリバリーも始めるなど、新スマート物流の幅が広がっている。


田路氏

北海道上士幌町は、帯広市からの大手EC事業者の荷物を、町内の中心部は軽貨物車両、農村部はドローンとリレーし、購入者に効率良く配達。また、町内の牧場から帯広市の畜産検査センターまで毎日届けている生乳検体について、ドローンで集荷した上で軽貨物車両に載せ替え、さらに路線バスの貨客混載も生かして配送する実証実験を行った。町の基幹産業である酪農を支えるため、検体配送の省力化と脱炭素化に挑んでいる。

冒頭の町長も取り上げたドローンによる新聞配達も取り上げ、一部地域で翌日配達となっていた不便性を解消したことを案内。田路氏は「テレビ欄やお悔やみ情報は翌日では意味をなさなかった。皆さんが楽しみにしているお店などのちらしもそうだった」と語り、ドローン新聞配達の意義を強調。今後は買い物代行との混載も検討していくという。

福井県敦賀市は、2022年度に市内の愛発エリアにドローンデポを置き、個人向けの買い物代行サービスをスタート。23年度には影響エリアを市街地に広げ、法人の需要も取り込めている。市街地は陸送、山間部はドローンによる空輸と割り振り、効率的な配送を実現している。

茨城県境町は、フードデリバリー大手の出前館と連携し、全国で初めてドローンで出前館の取り扱っている店舗のメニューを届けるサービスを開始。既に町内で9ルートを開通しているという。「町丸ごと出前館」とのコンセプトを掲げ、町内の小売店・飲食店に参加を募り、17店舗・約300品目の取り扱いでスタートし、地域振興にもつなげる仕組みを取り入れた。田路氏は「これまで出前館は比較的人口が多いエリアしか出店できないという問題を抱えていたが、今回自治体と連携することで、これまでは出店できなかったエリアでサービス提供することに成功した」と語った。


出前館のロゴが入ったデリバリー用ドローン(境町で今年4月撮影)

千葉県勝浦市も、地元の商店街と組み、地元の店舗の商品やフードメニューの注文を受け付け、ドローンや軽貨物バンで届けている。田路氏は「商店街全体をECモール化してオンラインに乗せている。地元の小売店や薬局、飲食店のDX化支援にまで踏み込んでいる」と強調している。

埼玉県秩父市は、昨年9月発生の土砂災害で被害を受け、国内で初めて、冬季に孤立することが懸念された被災地域にドローンで定期的に生活物資を輸送。山間地でも安定的な通信環境を維持できるよう、米宇宙関連企業スペースXの衛星高速通信サービス「Starlink(スターリンク)」を使い、合計28フライト、総重量約100kgの輸送を完遂したと成果を示した。

これとは別途、秩父市内の大滝地域を対象に、物流大手5社が共同配送するとともに、路線バスとの貨客混載も実施するなど、全国に先駆けて「2024年問題」を見据えた対応を行ったことを紹介した。

JR九州と連携し、トラックとドローン、在来線・新幹線の旅客列車を組み合わせて鹿児島~福岡間で海産物を届けたケースや、セイノーHDが北海道の江丹別地域で実施した、路線バスを使い地元事業者が貨客混載して製造した商品を、旭川市中心部を経由して発送したケースも取り上げた。

また、エアロネクストなどが軸となり、未来の地域物流を支える職業としてドローンや軽貨物バンの「パイロット兼ドライバー」を育成することにも取り組んでいる。「レベル4」飛行に不可欠な一等無人航空機操縦士の資格取得を後押しするなどして、地域の雇用創出につなげる狙いもある。

田路氏は最後に「私たちは人生100年時代に、新しい社会インフラを通じて豊かさが全国津々浦々、隅々まで行きわたる世界を作りたい」との思いを語り、活動報告を締めくくった。


協議会からのメッセージ

(後編に続く)

(藤原秀行)

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