【独自】EC自動化物流センター、「2024年問題」対応のモデル的存在目指す

【独自】EC自動化物流センター、「2024年問題」対応のモデル的存在目指す

三井不動産・大間知ロジスティクス事業部長が意欲

三井不動産ロジスティクス本部の大間知俊彦ロジスティクス事業部長兼イノベーション推進室長は、同社が千葉県船橋市で開発した物流施設「MFLP船橋Ⅲ」内で運営している「EC自動化物流センター」をメディアに公開したのに伴い、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。

大間知部長は、同センターは自動倉庫を活用したピッキングシステムなどを採用して入出荷の迅速化を図っており、今後はEC事業者らが自動化設備などを共有できるシェアリングサービスの提供を視野に入れている点に言及。

トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」を考慮し、将来は政府が物流の生産性向上のため荷主企業や物流事業者へ取り組むよう呼び掛けている「トラックドライバー1運行当たりの荷待ち、荷役作業などに要する時間を2時間以内に抑制」を実現できるモデル的なセンターにしていきたいとの考えを示した。


大間知部長


EC自動化物流センターが入る「MFLP船橋Ⅲ」

「賃貸という従来型不動産を越えた新たなビジネスに」

EC自動化物流センターは昨年11月に開設し、「MFLP船橋Ⅲ」の一角約2000坪(約6600㎡)を活用。三井不動産グループが展開している商業施設「三井ショッピングパーク」の公式通販サイト「&mall(アンドモール)」向け商品の入出荷を担っている。

フランスのEXOTEC(エグゾテック)が製造、IHI物流産業システムが扱っている3次元走行ロボットを活用した自動ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」を採用して出荷作業の省力化・迅速化を図っている。

さらに、入荷時に商品のサイズを立体的に自動計測するコグネックス製の寸法計測システムを取り入れ、出荷時に適切な大きさの梱包をシステムが自動的に選ぶようにしている。Hacobu製のトラックバース予約システムなども導入している。

将来は他のEC事業者が自動倉庫などを利用できるシェアリングサービスを展開し、商品入出荷の迅速化をサポートすることを想定している。


EC自動化物流センターで稼働するEXOTECの自動倉庫システム

大間知部長は、EC自動化物流センターを稼働させてから半年程度経過したことに関し「特に狙っていた(物流の)キャパシティー増加と人件費削減の点で効率化ができてきていると認識している。さらに他の荷主さんにいい形で入っていただく、その動きを次にしていく準備の段階まで来たと思っている」と語り、一定の手ごたえを感じていることを強調。

シェアリングの構想については「自社で投資しづらい中小のEC事業者さんなどがメーンのターゲットになってくるだろう。まず、そういうニーズのある方がいらっしゃるかどうか、探していかないといけない。まだ突っ込んだ提案をしているタイミングではないが、面白そうですねというお話はいただいている」と語り、荷主の要望を踏まえて具体的なシェアリングの仕組みを検討していく姿勢をアピールした。

政府が2024年問題などを考慮し、「トラックドライバー1運行当たりの荷待ち、荷役作業などに要する時間を2時間以内に抑制」などの内容を盛り込んだガイドラインを作成、荷主や物流事業者に順守を求めていることについて「われわれにとっては追い風になると思う。入居される企業の危機感が高まることも予想されるので、さまざまな技術をお持ちの企業と組んで対応していきたい」と語った。

物流施設のスペース提供にとどまらず、入居企業の自動化支援まで踏み込んでいることに対しては「従来型の(土地・建物を開発し貸し出す)不動産というところを越えたビジネスができたらいいなという思いがある」と狙いを解説。三井不動産も大学などと連携し開発を後押ししているドローンや自動運転といった先進技術を活用していけないか、今後も検討を続けていく姿勢をあらためて訴えた。

地域住民向けの設備を取り入れるなど、船橋をはじめ同社が注力している「街づくり型物流施設開発」について「働いていることを誇りに思っていただけるような施設を提供させていただいている。地元の行政と連携して災害体制などもさらに手掛けていきたい。自治体の方々からもそういうことへ期待がすごく大きい」と指摘。

今後は物流施設に蓄電設備を取り入れて、太陽光発電システムで生み出した電力をより活用できるようにすることなどにチャレンジしていきたいと語った。

(藤原秀行)

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