注文の約15%でサイズダウン実現、23年度中の本格導入目指す
企業のデータ活用支援を手掛けるスタートアップのDATAFLUCT(東京都渋谷区、データフラクト)は7月26日、オルビスと共同で、EC発送時の梱包サイズを最小化する機械学習モデルを開発したと発表した。
物流コストが上昇しても、梱包の経費を適正化することでEC事業の持続可能性を高めるのが狙い。実証実験の結果、注文全体の15%でサイズダウンを実現できた。今後は2023年度中にオルビスのEC発送を行う全拠点での本格導入を目指す。
オルビスは通販向け出荷ラインにAGV(無人搬送ロボット)、直営店舗・BtoB向け出荷ラインに重量計を搭載した最新のAMR(自律走行搬送ロボット)を導入するなど、テクノロジーの積極活用によって物流システムの自動化、省人化を促進。環境負荷と物流現場の負担を軽減するとともに、物流基盤を持続可能な形で強化している。
自動化が進むオルビスの物流拠点
さらなる効率化を目指す中で「梱包のサイズダウン」に着目。オルビスは従来、現場の熟練担当者の判断や、商品サイズから梱包サイズを決定するシステムによって梱包サイズを決定しており、必要なサイズよりも大きな梱包材を使い、余分な配送費が発生するケースが出るのが課題だった。
そこでDATAFLUCTとオルビスは、商品が破損しない範囲で梱包を最小サイズにして配送コストを削減することを目指し、オルビスの物流拠点で今年2~6月、機械学習による梱包サイズ最適化の実証実験に踏み切った。
機械学習による梱包サイズ最適化のイメージ
本取り組みでは、DATAFLUCTの機械学習サービス「Perswell」とデータプラットフォーム「AirLake」を組み合わせ、オルビスの商品・出荷・梱包材価格の各データを基に機械学習で最適な梱包材のサイズを算出する。
アパレル商品の折り畳みや、袋の中の空気を抜くなといった対応は人間には「梱包時に容易に取り入れられるサイズダウンの方法」だが、一般的に発表されている論文や、実装されている箱詰めのアルゴリズムでは考慮されていない。本取り組みでは、オルビスのEC商品特性を考慮し、実践可能なサイズダウンの方法を含むモデルを作成することで、梱包サイズの最小化を達成した。
オルビスの物流拠点では、梱包担当者の手元のディスプレイに梱包サイズの情報を表示して、作業をサポートしている。実際の環境では「Perswell」で算出した最適な梱包サイズを表示し、より精度の高い情報を担当者に共有。様々なサイズが用意された梱包材から、迷うことなく最適サイズを選べるようにし、熟練度に左右されず全ての担当者が効率的に作業することを可能にする予定。
「Perswell」で算出した最適な梱包サイズを担当者に共有。経験がなくても、さまざまな大きさの梱包材から最適なサイズを選ぶことが可能(画像はオルビスの物流拠点での梱包作業イメージ)
(藤原秀行)※いずれもDATAFLUCT提供