海外比率はベトナムとマレーシアを軸に10%強目指す
丸全昭和運輸が継続的な成長・発展に向けた重点施策として3PL事業の拡大を前面に打ち出した。
先ごろ発表した「第7次中期経営計画」では最終期の2022年3月期に連結ベースで売上高1380億円、経常利益98億円を業績目標に設定。3PL事業、グローバル物流事業、機工エンジニアリング事業を組み合わせたソリューション型提案で差別化を図っていく考えだ。新中計の具体策について同社経営企画部がロジビズ・オンラインの取材に応じた。
丸全昭和運輸本社
3PL事業では同社が得意とする化学品、建材を引き続きターゲット分野に据える。安全に関するノウハウや自社スタッフによる確実な物流品質、充実した輸配送網などを活用。いずれの分野もメーカーの増産や建設需要の高まりから貨物量は安定的に推移するとみているほか、特殊性の高い化学品や建材は荷扱いの難しさから敬遠されがちなアイテムだけに強みを発揮できると期待を寄せる。
経営企画部の大室亘部長は「この3カ年で3PL事業売上高を300億円台に拡大・継続。全売上高の4分の1を3PL事業で賄う」と展望している。
国内自社倉庫の一例(堺倉庫営業所)
並行して海外向け売上高の比率も高めていく。米中貿易摩擦や国内人口の減少などから日系企業による工場の海外シフトは今後も進むとし、こうした動きにキャッチアップすべく倉庫など海外アセットの拡充を図る。主にベトナムとマレーシアに注目しており、両国で現地拠点の機能・規模を優先的に強化していく考え。
ベトナムは経済発展と中国に取って代わる工業生産国、マレーシアは化学品サプライヤーの市場における存在感を指摘。大室部長は「現状では4%程度の海外売上高比率を最終期には10%以上に引き上げたい」とし、これまで中心だったフォワーディング事業から海外各地でアセットを取得・活用したビジネスへの転換を図る構え。
日系企業の海外工場移転で複合物流サービスを提案へ
機工エンジニアリング事業ではプラント機器などの重量物を長年手掛けてきたノウハウの水平展開によって、近年では国内で工業系大学や音楽大学のキャンパス移転案件も積極的に受注・遂行。また工場のライン移設は同社が得意とするところであり、日系メーカーの海外拠点シフトも相まって案件は今後さらに増加すると予想する。
工場移転に伴う設備機器の輸送・据え付け・メンテナンスといった従来業務に加え、移転前後に発生する現地からの製品輸送などをワンパッケージ提案することでサービスを深化させ受注拡大につなげる。大室部長は「機工エンジニアリング事業が顧客の工場移転に関与することで3PL事業、国際物流事業においてもアドバンテージになる可能性は高い。複数の事業部がクロスしたソリューションセールスは拡大の余地があるだろう」とみている。
鹿島バルクターミナルに続く大型施設投資も検討
新規領域への展開ではM&Aによる実行が中心となるもようだ。スコープは第一義的に商圏の確保でメーカー系物流子会社をターゲットに置く。物流子会社の先には親会社であるメーカーが存在する。
物流子会社を傘下に収めることによってメーカーとのアクセス優位性や情報収集力の向上を図る考え。また車両や作業員の確保を意図した同業他社のM&Aも検討対象としている。新中計ではM&Aに100億円を充当する。
設備投資は250億円を見込む。内訳は3割が既存の倉庫・車両更新、6割が新規の倉庫建設、1割がITとマテハン。また昨年夏に稼働を開始した茨城・鹿嶋市の火力発電所向けバルクターミナルは物流ノウハウと装置機能を組み合わせた新たなアプローチであり、基幹産業を中心に原料や燃料の保管・管理を物流企業にアウトソースする動きが活発化しているという。
大室部長は「バルクターミナル、タンクターミナルに見られる大規模設備を通じたサービスは目下かなりの引き合いがある。同様の大型施設について投資を検討中」と言及。装置産業を包含した物流サービスの拡大・高度化にも意欲を見せている。
鹿島タンクターミナル
(鳥羽俊一)