エアロネクストなど、茨城・境町で配送サービスに適用開始
エアロネクストと子会社でドローン物流を手掛けるNEXT DELIVERYは12月13日、茨城県境町でセイノーホールディングス(HD)などと連携して今年4月から実施しているドローン配送サービスに関し、飛行ルート下に人や車がいないか地上で監視する補助員の配置を一定条件下で省略できる「レベル3.5」の運用を開始した。
同日、飛行の様子をメディアに公開した。ドローンに搭載したカメラで飛行時、地上の様子をリアルタイムで遠隔監視し、道路を横断する際も飛行を一時停止せず継続した。
エアロネクストとNEXT DELIVERY、セイノーHDの3社は12月11日、国内で初めて北海道上士幌町で、レベル3.5を適用したドローン配送を始めており、本州でも茨城県境町を手始めに、本格的に展開していくことを目指す。
ドローンが飛行した境町の利根川沿いエリア
無事着陸するドローン。周囲には補助者を配置していない
国土交通省は無人地帯上空をドローンが自律飛行する「レベル3」で、現状は線路や道路、船の航路のように人が立ち入る可能性がある場所の上空を飛ぶ際、補助者を置いて人が通らないよう誘導したり、看板を置いて周知したりするなど「立ち入り管理措置」を講じることを定めている。
しかし、人の配置などはコストがかさむ上、道路などの上空を通る際は毎回安全確認でドローンを一時停止させる必要があり、配送の時間が長くなってしまうことなどから、ドローンの利用促進のため事業者や地方自治体から規制緩和を求める声が出ていた。
そこで国交省はドローンの機体にカメラを搭載してリアルタイムで人の立ち入りがないかどうか確認できるようにしたり、万が一の落下事故に備えて損害保険に加入したりすることなどを条件に、補助者を不要とするよう規制を緩和した「レベル3.5」を新設することにした。
エアロネクストとNEXT DELIVERYが同日公開した飛行では、町を流れる利根川の上空を活用し、町内の商品配送拠点「ドローンデポ」から数km離れた川沿いの畑まで自動で飛行、無事着陸した。事前に国交省からレベル3.5の飛行承認を得た。
従来のドローン配送では着陸エリアの周辺にも補助者を置く必要があったが、この日は機体のカメラの映像を、山梨県小菅村のNEXT DELIVERY拠点にいる専門技術を備えたスタッフが遠隔で監視、現地には専任の補助者を配置しなかった。
着陸地点では、町内に住む親子が待ち受け、届けられた茨城特産の干し芋やペットボトル入り飲料などを受け取った。女性は「人の手がかからず食べ物などが届けられるのは非常に便利。ドローンも特段怖いとは思わなかった」と笑顔で語った。
3社は既に、ドローンとトラックなどを組み合わせて人口減少に悩む地方エリアの物流機能を維持する新スマート物流「SkyHub(スカイハブ)」を進めており、ドローン配送もその一環。既に山梨県小菅村や北海道上士幌町など全国9自治体でSkyHubの社会実装を進めており、それぞれの自治体で順次、レベル3.5のドローン配送に踏み切っていく構えだ。
町内のドローンデポ
ドローンに搭載したカメラの映像。飛行ルート下の状況をリアルタイムで確認する。下の方に道路を走る自動車が見えている
荷物を受け取って笑顔の親子
(藤原秀行)