【地震】能登半島に890社進出し工場117拠点展開、立地トップは石川・志賀町

【地震】能登半島に890社進出し工場117拠点展開、立地トップは石川・志賀町

帝国データバンク調査、サプライチェーンへの影響懸念

帝国データバンクは1月17日、能登半島地震が企業活動にどのような影響を及ぼしているかについて、2023年11月時点の企業データに基づき行った調査・分析結果を公表した。

能登半島に工場を構えているのは全国136社で、177拠点が進出。総拠点数は890社・1300拠点に達している。この実態からは地震がさまざまな業界のサプライチェーンに影響を及ぼすことが危惧される。

石川県・富山県の13市町村が含まれる能登半島に対し、他地域から営業所や工場などの拠点進出を行った企業は23年11月時点で890社・1300拠点に上っている。市町村別で見ると、最も多いのは「七尾市」で293拠点(構成比22.5%)だった。以下、「かほく市」148拠点(11.4%)、「津幡町」134拠点(10.3%)、「氷見市(富山県)」130拠点(10.0%)と続いた。

震源地に近く、特に被害が大きいとみられている「輪島市」は74拠点(5.7%)、「珠洲市」は50拠点(3.8%)、「能登町」は53拠点(4.1%)だった。拠点数が100を超えたのは13市町村中、5市町に上った。

1300拠点のうち、製造拠点など「工場」は全国から136社・177拠点が進出。工場の拠点数で最も多いのは「志賀町」の29拠点(構成比16.4%)で、「津幡町」24拠点(13.6%)、「七尾市」22拠点(構成比12.4%)と続いた。特に被害が大きいとみられる「輪島市」は9拠点、「珠洲市」は15拠点、「能登町」は8拠点だった。

工場を有する企業のうち、国内の証券取引所に株式上場する企業または売上高が100億円以上の企業(主要企業)26社を対象に、工場の被害状況などについて1月15日時点の開示書類を集計したところ、約4割に当たる10社が生産を停止し、再開時期は「未定」と説明している。

未定の主な理由は、工場施設などに損壊を受けた、または従業員らが設備等の点検や安全確認が必要となったほか、周辺道路や電気などインフラの復旧が不透明な点が挙がった。一方、設備の被害は軽微なために段階的ながら生産再開を見込める企業や、既に生産再開を進めた企業も同じく4割に上り、能登半島の生産再開動向は企業によって対応が分かれていることが浮き彫りとなった。

工場以外の拠点では、営業所や支店・支社など「営業拠点」が471拠点(36.2%)。主な施設として配送センターなどの「物流・倉庫」が55拠点(4.2%)、ソーラー発電など「発電所」が30拠点(2.3%)。営業拠点が最も多い市町村は「七尾市」が142拠点、物流・倉庫は「津幡町」が16拠点、発電所は「志賀町」が6拠点となった。

能登半島に拠点を有する企業を都道府県別に見たところ、トップは能登半島外の「石川県」で427社(48.0%)。氷見市外の「富山県」159社(17.9%)、「福井県」34社(3.8%)、「新潟県」8社(0.9%)を合わせると、能登半島に拠点を置く企業の7割が北陸4県の企業だった。

北陸地方外では、「東京都」が最も多く76社(8.5%)で、「大阪府」50社(5.6%)、「愛知県」41社(4.6%)が続いた。

業種別では「サービス業」が最多の201社(22.6%)となり、物流や配送などを行う「卸売業」が165社(18.5%)、「製造業」が157社(17.6%)で続いた。

帝国データバンクは能登半島に本社を置く4000社を超える企業と、他地域から能登半島に進出し事業活動を行う企業の合計は約5000社に達し、こうした企業からの供給停滞や遅延、取引の見合わせといった影響が今後次第に顕在化するとみられると推計。

「従業員や設備の安全確保が各企業にとって最優先事項である点や、アクセスが容易ではない状況を踏まえると、事業やサプライチェーン全体への影響が判明するまで長期間を要するとみられる」と懸念を示した。

なお、帝国データバンクが地震前の昨年5月、北陸4県に本社を置く企業577社に対し、自社における事業継続計画(BCP)の策定状況を尋ねた結果、「策定している」企業の割合は16.8%だった。「現在、策定中」(8.5%)、「策定を検討している」(23.2%)を合計した『策定意向あり』とする企業は48.5%だった。

震災で大きな被害を受けた「石川県」企業の「BCP策定意向あり」割合は52.8%と、全国を上回る水準だった。帝国データバンクは「震災による被害は大きいものの、従業員の安否確認手段や調達・仕入れの分散などバックアップ体制の整備を進めてきた企業も多く、企業活動面では速やかな復旧・復興体制への移行が期待できる」との見方を示した。

半面、北陸地方では2022年までの10年間で地震の回数が少なかったことも背景に、震災への備えを進めている企業の割合は低く、現時点で地震が多発していない地域でも、今後も避難の準備や設備の「揺れへの対策」の再点検が必要となると提唱した。

(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供

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