2024年問題受け荷主や元請け事業者への規制強化する法改正案、作成が大詰め
政府が「2024年問題」への対応促進などを図るため、開会中の通常国会への提出を目指している物流総合効率化法(物効法)と貨物自動車運送事業法の改正案の作成作業が大詰めを迎え、概要が固まってきた。
現状では2024年問題への対応として、一定規模以上の荷主企業や元請けの物流事業者を対象に、物流拠点での荷積み・荷待ち時間短縮やトラックの積載率向上に取り組むよう義務化。違反すれば罰金を科せるようにして強制力を持たせる方向だ。
また、元請けのトラック運送事業者に対し、具体的にどのような下請けの事業者に業務を発注しているかや、どのような内容で業務を発注したかを記録することなども義務化する予定。トラックドライバーの長時間労働是正や取引環境の適正化を後押しするのが狙いだ。
政府は与党などとの調整を進め、2月中をめどに改正法案を閣議決定、今国会での成立を目指す。
荷待ち・荷役時間短縮や積載率向上で具体的計画作成
物効法の改正案は、物流事業者に対し、物流業務の効率化に向け荷待ちや荷役の時間短縮とトラックの積載率向上に取り組むよう努力義務を設け、政府が指導・助言できるようにすることを想定。
さらに、荷物の取扱量が一定以上の荷主や物流事業者については「特定事業者」に指定し、荷待ち・荷役時間の短縮や積載率向上のための具体策を列挙した中長期的な計画を策定、提出するとともに、定期的に進捗状況などを報告するよう義務付ける。
併せて、計画を進める上で中心となり企業全体を率いる「物流統括管理者」を置くことも義務化する。欧米で普及が進んでいるCLO(最高ロジスティクス責任者)の配置を荷主企業で促進する狙いがある。
政府は事業者の取り組みが計画より遅れている場合などに、是正するよう勧告し、従わない場合は社名を公表したり、より強く是正を命令したりできる。勧告や命令を出すのに際しては、政府が事業者に立ち入り検査する権限を持たせる見込み。
事業者が是正命令に違反したり、物流統括管理者を置かなかったりした場合、最大で罰金100万円を科せるようにする。中長期的な計画を提出しなかったり、定期的な報告を怠ったり、立ち入り検査に協力しなかったりした場合も最大50万円の罰金とする見込み。
物流改善の規制については、年間に一定規模以上のエネルギーを使用している荷主企業や物流事業者を対象に、政府がエネルギーの使用状況を定期的に報告させ、取り組みが不十分であれば指導・助言したり、合理化計画を作成するよう指示したりできる省エネ法の枠組みを参考にしている。
軽貨物事業者の安全規制強化
貨物自動車運送事業法の改正案は、元請けの物流事業者に対し、具体的にどのような下請けの事業者に業務を発注しているかや、どのような内容で業務を発注したかを記録する“管理簿”の作成を義務化。加えて、元請け事業者が下請け事業者と契約する場合、積み降ろしなどの荷役の料金や燃料価格上昇分を盛り込むことも定める方向で調整している。ドライバーの賃上げに不可欠な原資を下請けの物流事業者が確保できるようにする狙いがある。
同法改正案は2024年問題に加えて、ECの普及に伴う荷物増などで貨物軽自動車の死亡・重傷事故が目立っていることを受け安全規制を強化することを予定している。安全に関する知識を有する「貨物軽自動車安全管理者」(仮称)を営業所ごとに選任し、講習を定期的に受けるよう義務付けるとともに、一般貨物などのドライバーに義務付けている適性診断を軽貨物のドライバーにも拡大する方向。
一定規模以上の深刻な事故を起こした場合、国交相へ報告することなども定める見込みだ。
(藤原秀行)