【独自取材】「ばら積みとパレットの運賃単価差1万円を突破」

【独自取材】「ばら積みとパレットの運賃単価差1万円を突破」

運送マーケットコンフィデンシャルリポート①トランコム・上林亮常務執行役員

トラック運賃がかつてないほど注目されている。ドライバー不足による供給力低下はどこまで単価を押し上げていくのか見極めが付きにくい。市場環境はますます混沌としていくことが予想される令和の世、陸送マーケットはどのように推移していくのか。ロジビズ・オンラインは最前線に携わるプロフェッショナルたちの見方と対応を随時インタビュー、情報発信していく。

第1回はトランコムの上林亮常務執行役員物流情報サービスグループ担当が、日々手掛けている荷主とトラックのマッチングで積み重ねてきた膨大なデータを基にマーケットを展望するとともに、幹線輸送の変革へ歩みを進める決意を語った。


トランコムの上林亮常務執行役員物流情報サービスグループ担当

増収増益も空車情報は通期で1台切る

2018年度はトラックドライバー不足に加えて自然災害が相次いだことから、輸送の需給バランスは近年では例を見ないほど逼迫した。深刻の一途をたどる車両不足を前に運賃単価の値上げは打開策としての効力を失いつつある。市場は物流の維持・安定に向けて幹線輸送を根本から見直すべき時期を迎えた。

当社の物流情報サービス事業における実績・情報を分析すると18年度の平均運賃単価は前期比で3%上昇した。上昇幅は17年度も3%程度だったことから過去3カ年では7%、5カ年では10%以上の値上がりとなった。

業績的には増収増益と引き続き堅調だったものの、貨物情報が10%強増加した一方で空車情報は2%減少しており車両確保に苦戦した印象だ。当社では貨物・車両の需給バランスについて「貨物情報1件:空車情報1.5台」を適正水準としているが、18年度は通期で空車情報が0.95台と1台を割り込んだ。

17年度は月によって増減はありながらも1.07台とかろうじて1台をキープしていたが、18年度は常に1台を割り込む格好で推移した。ドライバー不足や運送事業者の市場撤退に加え、18年度は第2~3四半期にかけて西日本地区で相次いだ自然災害の影響も大きかった。特に第2四半期は17年度が1.06台だったのに対して18年度は0.82台と0.24ポイント低下。この間は空車情報がとても確保しにくい状況にあった。

他方、通常は年度末の繁忙期で空車情報がタイトになる第4四半期が1.01台と17年度の0.86台から改善している。背景には米中貿易摩擦、元号改正に伴うメーカーの在庫圧縮や生産調整など複数の要因があると推察されるが、直近に限れば貨物量が若干ながら減少ないし落ち着いたことで空車が増えたといえるだろう。ただ過去3~5年との比較では低い水準であることに変わりはない。

18年度は台風や地震など局地的な自然災害が多発してトラックに対する需要が高まった。荷主企業はレギュラー便が運行できなければスポット便でカバーしていくため、スポット便をメーンとする当社へのオーダーは増えたが車両は不足している。

特に長距離を控える運送事業者は増加傾向にある。一昨年の11月に運送約款が一部改正されて労働時間の管理が厳格化。運送事業者はコンプライアンスの観点から600~700キロメートルの幹線輸送を敬遠する傾向がより強まっている。昨今のドライバー不足と自然災害の多発が相まってトラック需要が急増したため、18年度は長距離を中心に空車不足が加速したと捉えている。


物流情報サービス事業での貨物・空車それぞれの情報件数の推移(トランコム決算説明会資料より引用)

大手荷主企業に物流内製化の動きが散見

世界的な気候変動から日本でも毎年のように自然災害が発生するようになった。それを踏まえ一部の大手荷主企業では自衛措置として車両を自ら確保しようとする動きが見られる。従来は出荷量のボトムラインで車両数を設定して超過分をスポットで手配するパターンが主流だったが、自然災害時でも安定的に輸送力を確保できるようピーク時など高い水準に合わせて集車を行っているもようだ。積載率・稼働率・コストには目をつぶってでも足回りを強化・安定したい荷主企業の意向がうかがえる。

加えて在庫についても以前は極力減らして必要な分だけを持つスタイルから、消費地の近くにストックポイントを構えて非常時・緊急時でもフレキシブルに対応できるよう切り替るケースも散見される。人手不足や多発する自然災害によって荷主企業の物流に対する意識はコストから安定供給へと変容しつつある点には注目している。

「ばら積み忌避」がより鮮明に

かねて指摘してきたばら積みとパレット積みの単価乖離はますます進展している。既にばら積みは引き受けてもらえないとの認識が荷主企業にも相当浸透しており、当社が取り扱うオーダーでも関東~関西間で約8割がパレット、ロールボックス、かご台車など荷役作業の負担が少ない荷姿にシフトしている。

ばら積みとパレット積みの平均単価差額は関東発が1万2000円、関西発が8000円、名古屋発が1万4000円とばら積みは上昇の一途をたどり、繁忙期になればその差はさらに広がっている。運送事業者側が貨物を選べる“売り手市場”の需給環境では、もはや運賃単価を引き上げてもばら積みを引き受けてもらうのは厳しいだろう。

コンプライアンス、中高年ドライバーの体力的負担といった現実的な問題がそれに拍車を掛けている。例えば輸送条件から荷役作業を切り離すのは一つの策ではあると思うが、そのためには発荷主と着荷主で作業員やフォークリフトオペレーターを手配する必要が出てくる。ただフォークリフトオペレーターも不足しており採用は容易ではない。ばら積みに関しては今後もコストアップを強いられることになるのではないか。

ICT活用も営業活動は引き続き対面を最重視

当社はここ数年間にわたってICT投資を行い業務効率や利便性の向上に努めてきた。しかしICT活用の目的はマッチングそのものをデジタル化するということではない。当社は企業間物流を中心に展開しており、取引先企業の担当者異動・交代によって物流に対する考え方やニーズも変わってくる。これに対してデジタルで画一的なサービスを提案しても付加価値を生み出すことは難しい。

顧客との信頼関係は営業スタッフが自ら足を運び、直接コミュニケーションを取ることで構築される。フィールドワークによって顧客のニーズ、貨物の中身、積み方など細かいところまでしっかり把握する。こうしたフェース・ツー・フェース、ヒューマンタッチを基本とする営業活動が当社の集車力を担保しているといっても過言ではない。カスタマーサービスの質を落とさないためにも引き続きこのスタイルを競争優位性、差別化要素と位置付け営業拠点とスタッフを拡充していく方針だ。ICTはそれをサポートする一つのツールと考えている。

現在の陣容は650人で17年度から50人増員したほか、この4月に入社した新卒社員のうち30人が当事業部に配属予定で実質的に700人体制となる。営業拠点についても18年度下期に札幌と大阪を開設したほか、今年度は関東・東海・九州など複数箇所で計画している。またパートナー企業である専属車は1日当たり1500台と17年度(1260台)から200台増加。1日当たり約5800件のマッチングで4分の1を占めるレベルに達した。19年度は専属車1800台、また社長を兼務する貨物付きのトラックリースサービス会社「TTS」では契約数を現在の300台から500台に拡大すべく営業活動を進めている。

中ロット貨物の混載にAIマッチング導入へ

近年注力している中ロット貨物の混載サービスでは新たにAI(人工知能)を活用したマッチングを導入する予定だ。混載便はチャーター便と違っていかにして組み合わせのバリエーションを増やせるかがポイントになる。複数の営業拠点がそれぞれ持っている多様な貨物や空車の情報をAIによって最適マッチングできれば、サービスレベルの向上とスタッフの業務効率化につながる。こちらは既にトライアルも終わっており今上期中に運用を開始する運びとなっている。

物流分野のベンチャー企業やスタートアップ企業ともアライアンスに向けた協議を行っている。例えばAIを活用した最適ルートの算出、バース管理などは当社が手掛ける幹線輸送のマッチングと連携できる可能性があるだろう。当社とは仕組み・セクター・エリアの異なるプラットフォームから得られる情報、革新的なITツールなどお互いのメリットを組み合わせて当社がコーディネーションを担うといったアプローチも想定し得る。その意味では決して自前主義や顧客に足しげく通うアナログ的な営業に固執しているわけではない。当社のサービスをさらに高めて付加価値を提供できる企業との連携・協業は前向きに検討している。

19年度の需給バランスは乱高下激しい展開か

19年度における輸送の需給バランス動向についてはかなり波のある年になるとみている。歴史上初の10連休となるゴールデンウイーク、5月の元号改正、9月開催のラグビーワールドカップ、10月実施予定の消費増税――など今期は経済活動や消費動向にインパクトのある“イベント”が複数控えている。その影響で需給バランスは月・時期によって極端に変動することが予想される。当社としてもマッチングが難しい1年になるだろう。

とはいえ車両不足は今後も続いていくことに変わりはない。中ロット貨物の混載をはじめ全国の拠点を活用した300キロメートル程度の中継輸送やマッチングなど、従来の“幹線輸送=長距離、チャーター便”という概念・仕組みを変えていくような取り組みが急務と認識している。

それに向けて当社では現在、物流情報サービス事業のデータやネットワークなどソフト力をベースとした新しい幹線輸送プラットフォームの構築に向けて計画を進めているところだ。設備投資によって倉庫や車両などのハードを積極的に強化・拡充するのではなく、情報・ネットワーク・ノウハウなどを駆使したライトアセットで幅広いプレーヤーが乗り入れることのできる画期的なスキームを想定している。


幹線輸送プラットフォームの概要図(トランコム決算説明会資料より引用)

【関連記事】トランコムが独自の幹線輸送プラットフォームを計画

ドライバー不足から“物流危機”への懸念が年々強まる中、市場全体で幹線輸送の在り方そのものを見直していくべき時期にさしかかっているのではないだろうか。

(聞き手・鳥羽俊一)

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