【独自】2024年問題対応へ「まだ無理が利く」発想変え、企業の中心に物流位置付けを

【独自】2024年問題対応へ「まだ無理が利く」発想変え、企業の中心に物流位置付けを

日本パレットレンタル・二村社長インタビュー(後編)

昨年9月に就任した日本パレットレンタル(JPR)の二村篤志社長はこのほど、ロジビズ・オンラインのインタビューに応じた。同社長は「2024年問題」への対応に関連し、パレット物流の普及が進んでいることを歓迎しながらも、荷主企業の一部で「まだ無理が利く」といったような発想が依然根強い点を指摘。特に物流センターで円滑な荷積み・荷降ろしができなければ混乱に陥ってしまうと展望し、物流担当者が業務効率化・標準化を進める必要性を理解、対応を進めるよう強い期待を示した。

JPRとしてもパレットレンタルに加えて物流センターの入出庫予約システムや伝票電子化、AIを活用した共同輸送のマッチングなど多岐にわたるサービスを適宜組み合わせて顧客に提案し、生産性向上などを果たしていく方針をかさねて強調した。発言内容の後編を紹介する。


インタビューに応じる二村社長

前編の記事はコチラから

中立的な立場がマッチングの安心感生み出す

――パレットは「2024年問題」を受け、物流の関係者からかなり前向きに期待されているように感じます。
「特にまだ物流のパレット化が途上の業界で導入が進んでいくのは非常にいいことだと思います。ただ、先ほども申し上げましたが、やはりパレット化だけでは問題は解決できません。納品伝票の電子化もその1つで、紙ベースの伝票では保管や仕分け、判取りなど現場で膨大な作業が毎日発生します。しかも荷主さんごとに伝票の標識が異なる。パレット輸送にそうした電子化などを組み合わせるのはすごく親和性もあると思います」

「かつ電子データなので、これだけ数量出ますよという情報が着荷主側に届く。うまく活用すればノー検品も実現できるかもしれない。バース予約も何時何分にトラックが来るというのが分かっていて、物流センターに入場して荷物を降ろして、最後にシステムの作業完了ボタンを押せば、運送会社にも連絡が行く。いろんなものが少しずつ効率化され、そういったものがつながるのはすごく大事です。今は過渡期ですが、われわれはさまざまなシステムを連携させることをどんどんやっていきたいですし、日本の物流の生産性を上げていきたい。われわれができるのは100あるうちの10%くらいかもしれませんが、それだけでも効率化していきたいですね」

――就任されてまず実行したい目標はありますか。
「もちろん売り上げをこれだけ伸ばします、というのはがんがんやりたいんですが(笑)、われわれが求めているのは安心、安全かつ安価にパレット輸送ができる世の中にしていきたいということです。今あるものをちょっと見直すだけでもなにがしかの改善には貢献できると思いますので、そこに投資していきたい」

――最近では異業種の荷主間で共同配送をマッチングするサービス「TranOpt(トランオプト)」に注力されています。共同配送は政府が「2024年問題」対応の一環として実現を推進しており、まさに時流に乗った取り組みだと感じます。
「誰が仲介するのかと考えた時に、われわれの主力のレンタルパレット事業そのものがそうなんですが、当社は色がついていない中立的な立場でさまざまなご提案をしていますので、お客様の安心感を高められます。その立ち位置はマッチングにも生きています。さらに、われわれはレンタルパレットで共同回収を行っていますから、物流網を広く運営しています。お客様がマッチングを要望する中で、なにがしか当社の知見を生かせるだろうと期待していただけるところもアドバンテージになっているのではないでしょうか」


トランオプトの概要(JPRウェブサイトより引用)

――反響はすごくあるのでは?
「ありますね。嬉しいのは当社のパレットレンタルなどでお付き合いいただいているお客様以外の方からも新しく引き合いが多く寄せられていることです。さらにトランオプトはサービスを利用されている企業間で対話できる場『共同輸送コニュニティ』を設けています。既にコニュニティの中でうまくトラックを融通し合って共同輸送が成立したケースも出てきています。当社のパレットレンタルなどの事業と親和性のある事例も広がってくるといいなと期待しています」

「長瀬産業さんがトランオプトのシステムを利用して、化学品に特化した型の共同輸送マッチングサービスを独自に始められています。長瀬産業さんが設けられたコミュニティでも交流が盛んになることが期待できます。当社としてはまだまだ投資先行の段階ではありますが、ぜひ続けていきたい」

「結節点」の物流センターで目詰まり発生を懸念

――「2024年問題」は日用品が小売店舗に届かなくなったり、産地から農産物を消費地に送り込めなくなったりとさまざまなことが懸念されています。現状では4月1日以降、具体的にどのようなことが起きるのか、起きないのかを正確に展望するのが極めて難しいですが、どのようにご覧になっていますか。
「先ほども申し上げましたが、業界によってバレット化がすいぶん進んでいるところがありますが、24年問題でどこが大変なのかという話になると、パレットで荷物を物流センターに持っていっても降ろせないという目詰まりが起きてしまうかもしれないということだと思います。荷受けの時間をこれまでは一定の時間帯に限っていたのを24時間運営に変更するというようなこともあるかもしれません」

「私が以前から物流業界に非効率が多く残っていたとお話した中の1つは、例えば午前9時から正午までを物流センター側の荷受け時間として設定するとなると、物流センターのバースがすごく混雑する時間帯と、そうではなくて空いてしまう時間帯が生まれる。非常に波が大きく、せっかくの設備を有効活用できていない時間帯が存在する。その点がすごくもったいないと思っていました。あるいは、着荷主の物流センターにトラックが多数到着し、作業スタッフもフォークリフトもそろっているのに受け入れのホームが片付いていなくて円滑に荷降ろしができない。発荷主の物流センターにトラックが行ったら荷物が全然荷ぞろえできていない。そうした状況はバース予約システムを活用することでうまく解決されるのではないかと思いますが、結節点の物流センターがどうなるのかがすごく心配ですよね。このポイントで作業が引っかかってしまうと、あっという間に荷物が運べなくなってしまいますから」

――国土交通省の調査結果などを見ていると、いまだに物流センターで数時間荷待ちを強いられているという声が聞かれます。率直に言って、2024年問題がこれほど騒がれているにもかかわらず、荷主はいったい何を考えているのかと憤りすら覚えます。
「先ほどお話した、物流が企業の中で地位が低いことがやはり関連しているところがあると思いますね。物流センターはコストセンターと言われて、物をスケジュール通りに運んでも当たり前だと言われ、それでもどこかの部分でコストをカットしなさいとずっと上層部から言われ続けている。もっと言えば荷主の物流部門も外部の物流事業者に業務を丸投げしているというケースもあります。そういう状況ではいろいろな対応がどうしても後手に回りがちになってしまいます」

「これだけ“運べなくなる危機”が騒がれていても、そうはいってもまだ無理が聞くんじゃないの?と思われている向きがまだ一部にはあるように思えます。だからこそ、日本中の企業の皆さんのそうした意識を変えていただかないといけない。コンプライアンス(法令順守)意識の高い企業でさえ、そうした考えの方がいらっしゃいます。物流までなかなか目が行き届いていない、考えが至っていないのが今のご時世でもあるのではないでしょうか。そもそも、物を運べなければ売ることもできませんから、企業の中核に物流を位置付けるべきなんです」

「逆に言えば、まだそういう状況が残っているからこそ、企業で物流を担当して、頑張ってコスト抑制や業務の効率化を果たしていけば出世する最短距離に行けるかもしれない。学生の皆さんもまだ物流部門に行きたいと志望される人は少ないと思いますが、ぜひそういう考え方もしていただきたいですね」

――最後に、あらためて2024年問題対応への決意をお聞かせください。
「われわれがこれまでに手掛けてきたレンタルパレットなどの事業は、2024年問題とは関係なく進めてきましたが、結果として見れば、いわばその問題の解決のために続けているようなものですね。伝票の電子化や共同配送マッチングなどもまさにそうです。ですから、われわれはそれぞれの事業を今後も粛々と続け、さまざまなサービスをその時々によって適切に組み合わせてお客様にご提案していくことが必要なんだと感じています。それはわれわれのサービスだけではなく、場合によっては他社のサービスとも組む可能性があるかもしれません。そうやって2024年問題の解決に貢献していきます」

(藤原秀行)

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