日本郵船など4社が世界初、「脱炭素」木質ペレット燃料船を共同開発へ

日本郵船など4社が世界初、「脱炭素」木質ペレット燃料船を共同開発へ

燃料活用プロセス全体で温室効果ガス排出量22%削減目指す

日本郵船は5月14日、NYKバルク・プロジェクト(NBP)、英国でバイオマスを手掛けるDrax Group(ディーラックス・グループ)、常石造船の3社と5月13日付で、バイオマスを燃料とするバイオマス輸送船(バイオシップ)の建造に向けた基本合意書(MOU)を締結したと発表した。

4社はバイオシップ建造に先駆け、まず積み荷の木質ペレット(乾燥した木から作る燃料)の一部を使用するバイオマス燃料プラントの研究・開発を進める。プラントはガス化装置を使用して木質ペレットから生み出したガスを使い、発電機を動かして電気を作り出す。生み出した電気は船の推進力や船内電源の一部に使う。

4社は今後、実現すれば世界初となる、木質ペレットを燃料に用いる船舶の開発などを通じて、木質ペレットの海上輸送の低・脱炭素化を目指す。


バイオシップの完成イメージ


契約締結式の臨んだ(左から)常石造船・柴田憲一常務執行役員設計本部長、ディーラックス・グループ・ポール・シェフィールドCCO(最高商務責任者)、NYKバルク・プロジェクト・須田雅志社長、日本郵船・栁澤晋一執行役員

各社の役割

日本郵船株式会社 海上輸送の低・脱炭素化に関する知見の提供
NYKバルク・プロジェクト株式会社 木質ペレットの海上輸送に関する船主・運航者としての知見の提供
Drax Group プロジェクト起案者、木材ペレットの海上輸送の低・脱炭素化に関する問題提起
常石造船株式会社 船舶設計・建造およびバイオマス燃料システムに関する技術知見の提供


バイオマスプラントのシステム概略図(いずれも日本郵船提供)

バイオマス燃料プラントで使用されるガス化装置は熱分解ガス化方式を採用。木質ペレットを高温で不完全燃焼させ、一酸化炭素や水素、メタンなどの可燃性が高い成分をより多く含ませることで、木質ペレットを直接燃やすよりも高効率な発電を実現する。

また、ガス発電装置にはガスエンジン発電方式を取り入れ、船内の限られたスペースで木質ガスのみを用いる効率的な発電を可能にする。

海運業界は世界的に舶用燃料のアンモニア、水素などのゼロエミッション燃料への転換が進む中、小型のバルカー(ハンディサイズバルカー、積載量が2万~4万5000tほどのサイズのばら積み船を指す)は、船体サイズに起因する燃料タンクの大きさの制限などの理由から燃料転換が難しく、自然環境に配慮した運航が課題となっていた。

木質資源を扱うディーラックス・グループの木質ペレットを燃料として使用することに着目し、バイオマス燃料を活用した船舶の開発をすすめることで、「Well to Wake」(燃料を生産、輸送、船上で使用するまでのプロセス全体と、そこで発生する全ての排出物)で温室効果ガス排出量の22%削減を目指す。

併せて、29年末までにバイオシップの建造を目指し、4社共同で検討を進める。

(藤原秀行)

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