納品伝票電子化と共同輸送ルート分析、1納品先当たり5~12分の作業時間削減
日本パレットレンタル(JPR)グループで伝票電子化などのサービスを手掛けているTSUNAGUTE(ツナグテ)は5月14日、経済産業省の委託事業「令和5年度(2023年度)流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(物流情報の電子化・データ連携促進)」を受託し、北海道で協力企業17社(メーカー5社、物流会社6社、卸売会社・小売会社6社)、JPRとアドバイザーに北海商科大学商学科の相浦宣徳教授を迎え、「納品伝票電子化」と「物流データを活用した共同輸配送ルート分析」の実証実験を行ったと発表した。
インターネットの在り方を参考にして共同輸送などを進め物流の効率化を実現する「フィジカルインターネット」の実現に向け、荷主・物流事業者間の連携・協調を可能とするためにも物流に関する情報を電子化し、物流EDI(電子データ交換)を通じたデータ連携を進めていくことが不可欠。現在、多くの物流情報は紙伝票として運用・保管されており、最適化を進める上での障害となっている。
そうした状況を踏まえ、物流課題の顕著な北海道を実証実験の場として選び、物流情報の電子化・データ連携にトライし、物流オペレーションにもたらす効果・知見を整理することにした。
発拠点となるメーカー・3PL事業者・運送会社、着拠点となる卸売・小売りのセンターなどへの物流に関し、納品部分をスコープとし、納品時に「納品伝票のデータ連携」「納品伝票の電子化」が実現した際の時間を測定して紙伝票との差を明らかにした。
併せて、「納品伝票のデータ連携」は内閣府推進の国家プロジェクトSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)で整備した情報システム基盤を通じ、異なるシステム同士の連携が円滑に行われるかどうかを確認した。
共同輸送の可能性探索は実証実験で扱うルートのみでのマッチングと、JPRの北海道内パレット移動情報(パレットの回収とJPRデポ間の在庫の融通に関するデータのみ)、貨物鉄道の時刻表からのルートを追加して分析を実施した。
発拠点で登録された電子伝票のデータが着拠点で問題なく受領ができることを検証。発拠点で登録された納品伝票電子化システム「DD Plus(ディーディープラス)」の電子伝票のデータがSIP基盤を通して、着拠点のバース予約システム「telesa-delivery」(テレサデリバリー)にデータ連携できるかを検証。また、SIP基盤を介しても問題なく伝票の受領ができ受領結果も発拠点に連携できることや作業に大きな変化がないことを確認した。
発着の移動データを共同輸送のマッチングサービス「TranOpt」(トランオプト)に取り込み、共同輸送の可能性があるルートの組み合わせをシミュレーションした。
その結果、委託事業を通じて、1納品に対して伝票仕分け・伝票照合の部分で5~12分の時間削減の効果がそれぞれ見られた。1日の処理頻度にもよるものの、伝票電子化は現場の負担削減が期待できるとみている。
SIP基盤利用による現場の負担増加はなく、SIP基盤を経由することで、異なる2つの物流EDIサービスにおいて、明細情報レベルのデータ連携が問題なく実現され、現場への負担も増えることはなかったという。
納品データ連携を伝票電子化への活用に留めず基幹システムと連携することによって納品伝票関連作業の大幅な削減が削減が期待できると想定。データ連携をASN(事前出荷情報)やノー検品まで拡大することによって、業務を一層効率化することにつながる可能性が期待できるとみている。
着側拠点の納品伝票関連業務の削減効果試算
ASN・ノー検品による削減効果試算
電子伝票データから158組の可能性があるルートが確認できた。さらに、電子伝票データにパレット移動情報と鉄道貨物のルート情報を加えることで、1万1825件の共同輸送の可能性があるルートまで拡大することが確認できたという。
TSUNAGUTEはより多くのデータが集まることで、データを活用した共同輸送の可能性がさらに高まることが期待できるとの見方を示した。
データ分析による共同輸送ルート探索結果とデータ増による広がり
(藤原秀行)※いずれもTSUNAGUTE提供