高層マンション内で専用空間使ったドローン垂直物流システムの有効性確認

高層マンション内で専用空間使ったドローン垂直物流システムの有効性確認

三井不動産と東京大が共同研究成果を発表、実機活用し検証へ

三井不動産は5月22日、東京大学先端科学技術研究センターの江崎貴裕特任講師、井村直人特任研究員、西成活裕教授と三井不動産の藤塚和弘氏らによる研究グループが、高層マンションなどの建物内にドローンが垂直飛行できる専用空間を設置した新たな配送システムを考案したと発表した。

併せて、数理モデルによる分析を活用し、システムの有効性を示した。


ドローンによる建物内垂直配送のイメージ

三井不動産と東京大は本研究について、待ち時間が長くなりがちなエレベーターでの配送に対する解決策となるのに加え、災害時に消費電力を抑えて生活必需品の配送を行うなど、建物内の物流に有力な選択肢を与える可能性があると指摘。

基礎的なモデリングによる概念実証を実施しており、今後は実機を用いて検証を深めていく構え。

研究の成果は5月16日、「Communications in Transportation Research」のオンライン版で公開した。新配送システムは特許を出願済み。

本システムの有効性を分析するため、荷物の脱着、上下飛行、バッテリーの交換などの配送プロセスを仮定。実際の機体(ACSL製「PF2-AE Delivery」)の仕様を基に、現実に近い数理モデルを構築した。その上で仮想的な高層マンションの各家庭でポワソン過程(時間や空間内で無作為に発生するイベントをモデル化するために用いられる確率過程)によって需要が生じると想定し、さまざまなドローンの台数に対して、配送のパフォーマンスを調べた。

待ち行列理論(サーバーに対するリクエストや窓口での顧客サービスなど、ランダムに発生する需要に対して、サービスを行う際に待ち時間や発生する行列の長さについて分析する数学の体系)に立脚した数理的な解析によって必要なドローンの台数などを求めることができたほか、モンテカルロ・シミュレーション(計算機の中でランダムな値を発生させることにより確率的な現象をシミュレートする方法論の総称)によって一定の需要レベルまではエレベーターよりもドローンを活用した方が迅速かつ少ない消費電力で配送できることが分かったという。

一定のシーンではドローンを活用するメリットが確かに存在することが示され、新たなビジネスモデルにつながることが期待されると結論付けている。

本研究で明らかになった「大量輸送が得意なエレベーター配送」と「個別の即時対応が得意なドローン」という2つの特性の異なる輸送モードを組み合わせることによって生じるメリットは、他のドローンを活用したマルチモーダル(多様な輸送手段を用いた)物流システムにも重要な示唆を与えると見込んでいる。


ドローンによる垂直配送システムの概略図


エレベーターと比較した際のドローン配送の有効性

待ち時間及び消費電力の図(左・中)では、色が青に近づくほどドローンが有利であることを示す。例えば、1世帯時間当たりのリクエスト数が0.2件の状況でドローン5台を利用して配送すると、待ち時間で280秒、1配送当たりの消費電力で0.09kWhの削減となる。これらの状況をマップにまとめたのが右図。

(藤原秀行)※いずれも三井不動産提供

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