信頼度高いトレーサビリティ実現、業務効率化も促進
日立製作所は5月29日、ニプロ向けに、脊髄損傷に対する再生医療等製品「ステミラック」の供給管理で用いる「再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォーム/Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine(HVCT RM)」のサービス提供を開始したと発表した。
ニプロは「ステミラック」を2019年から製造・販売している。患者自身から採取した骨髄液中の間葉系幹細胞*5を体外で培養・増殖させ、再生医療等製品として患者に投与するという製品特徴から、細胞・製品の個体管理や情報トレースが不可欠。同社は将来の事業展開も考慮し、バリューチェーン全体の細胞・トレース情報を一元管理できる日立のLumadaソリューション「HVCT RM」を取り入れることにした。
「HVCT RM」は細胞の採取から患者への投与に至る全工程で、供給・流通に関わる複数のステークホルダー(製薬企業、CMO/CDMO、医療機関、物流企業など)が細胞の情報や製品の製造スケジュール、各工程の進捗状況などの情報を入力することにより、個体ごとにトレース・情報共有できるシステム。日立は独自の秘匿化・仮名化技術でセキュリティ性能を高めたクラウドサービスとして提供している。
管理システムの拡張が容易になるとともに、高信頼なトレーサビリティ、バリューチェーンの最適化、業務効率化を実現できると見込む。
「再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォーム」の概念図(プレスリリースより引用)
また、日立のデジタルツイン化ソリューション「IoTコンパス」を駆使してサプライチェーンをデジタル空間に再現。さまざまなステークホルダーによりサプライチェーン上で発生する業務の「つながり」を独自のモデルを用いて可視化する。細胞採取から製品のトレーサビリティを実現し、品質・安全の確保を後押しする。
システムにデータが集約・一元管理されるため、従来は電話・メールや書類で行っていた業務・企業間連携の煩雑さを軽減できると想定。個人情報保護法の対象として適切な管理が求められる「患者属性情報」や「検査結果」は、日立の秘匿化・仮名化技術を活用し、セキュアな情報管理を実現する。
日立は今後、MES(製造実行システム)や受発注システムなどの周辺システムとの連携により「HVCT RM」の機能強化を図り、再生医療等製品向けプラットフォームのデファクトスタンダードとなることを目指す。IT、OTと細胞培養加工施設などのプロダクトを組み合わせた、トータルシームレスソリューションの提供により、再生医療分野の課題解決に貢献していきたい考え。
(藤原秀行)