政府の能登復旧・復興支援本部が初動対応踏まえ報告、物流事業者と自治体の連携協定促進も
政府は6月10日、首相官邸で「能登半島地震復旧・復興支援本部」を開催した。
被災地や関係省庁で初動対応に当たった職員による「検証チーム」が、震災対応の課題と今後進めるべき取り組み内容を報告した。
この中で、物資拠点での物資受け入れや搬送計画の策定、搬送などの業務に関し「民間委託がスムーズにできるよう、物流事業者と(自治体などとの)災害連携協定の締結を促進」することを求めた。
さらに、実際に災害現場でドローンを使った被災状況確認などが行われたことを紹介。被災状況の把握などにドローンや天候状況を問わず観測が可能なSAR(合成開口レーダー)衛星を投入したり、被災地の活用に無人ロボットを導入したりするよう提唱した。
報告を受け、岸田文雄首相は「全天候型高性能ドローン、可搬式浄水装置や衛星通信機器などの新技術について、関係省庁による実装、自治体などによる活用、国や民間の技術開発を加速させてもらいたい」と指示した。
本部で発言する岸田首相(首相官邸ホームページより引用)
史上最大規模の「プッシュ型支援」、ラストワンマイルまで迅速に届かずの指摘も
報告は能登半島の北部6市町で地震発生後に最大7~8割程度のエリアで通信障害が発生。三方を海に囲まれた半島で山がちなことから被災地へ進入ルートが限られる中、多くの道路が被災したことも、復旧作業の支障になったとの見方を示した。
被災地の交通状況の把握のため、ETC2.0可搬型路側機、可搬型トラフィックカウンタ(交通量計測装置)、AIwebカメラなどで交通量といったデータを収集し、ホームページなどを通じて道路の被災状況や通行可否、所要時間などを提供したと説明。
しかし、「平時より交通量観測機などが設置されていない箇所や、被災(停電)により交通量を観測できない箇所があり、交通状況把握のためのデータが不足していた」ことを明らかにした。
また、海上交通はみなとカメラや衛星画像、ドローンなどで被災状況を把握し、提供したものの、みなとカメラが設置されていない港湾についてはやはり迅速な被災状況の把握が困難な事例が見られたと分析した。
物資調達・輸送は、地震発生翌日の1月2日にプッシュ型支援を開始し、翌1月3日には石川県の広域物資輸送拠点に第一便が到着、「最終的には期間としては熊本地震の3倍、量としても金額規模で同2倍という史上最大規模のプッシュ型支援となった」と成果を強調。
同時に「初動期においては、ラストワンマイルまで被災者が望む物資が迅速に届かないといった声もあった」と課題を指摘した。
ドローンで災害の状況を早期に把握したり、孤立した集落へドローンを使って物資を届けたり、建物の被災状況を把握して再建に必要な「罹災証明書」の交付に使ったりしたケースに言及。
「ドローンを保有する団体や事業者との連携のために、事前に災害協定などを締結しておくと、より迅速な体制の構築につながり有効」との見解を示した。地震は1月に行ったことを踏まえ「低温環境下ではバッテリーの消耗が早くなるため、バッテリー残量への注意やバッテリーの複数準備などが必要」とも示した。
ドローンに携帯電話基地局の機能を持たせ、地上100mの上空に停留させることで、半径数kmの通信環境を確保したことにも触れた。
他にも、ポータブル水再生システムによる生活用水確保、避難所でのオンライン診療導入、小型化・軽量化した消防車両の活用などを列挙した。
(藤原秀行)