米スタートアップ・アモジーCEOが会見、25年の提供開始目指す
アンモニアを使った発電システムを手掛ける米国のスタートアップ、アモジー(Amogy)のソンフン・ウー会長兼CEO(最高経営責任者)兼共同創業者は6月27日、東京都内で記者会見し、海運領域で2050年までに完全な脱炭素化を実現するとの目標を紹介した上で、その一環としてアンモニア発電システムを動力源として使い、運航時に温室効果ガスを排出しない船舶の実用化に向けた取り組みを加速させる考えを示した。
併せて、「当社の技術を使うことでCO2排出量がゼロになる。日本の多くの企業が当社に対してパートナーになりたいと手を挙げてくださっている」と語り、日本の海運業界向けにもアンモニア発電システムを提供していくことに強い意欲を見せた。
会見するウーCEO
アモジーは2020年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の博士号を持つウー氏ら4人が共同で立ち上げた。同社はアンモニアに熱を加えて水素と窒素に分解した上で水素を取り出す技術「クラッキング」に強みを持ち、取り出した水素で燃料電池を動かして動力源とする仕組みだ。分解の際にはCO2を出さないため、脱炭素につながるとみており、リチウム電池の5倍のエネルギー密度での発電を実現できるという。
水素は超低温で輸送する必要があるため、より取り扱いやすい液体アンモニアとして輸送した上で水素を取り出す方が効率的と期待されている。
ウーCEOは会見で、これまでに同社の技術を評価する米アマゾンやサウジアラビアのアラムコといった主要企業や投資家から累計で2億2000万ドル(約330億円)を調達し、日本企業も商船三井や三菱商事、ヤンマーなどが出資していると説明。既にドローンや農業用トラクター、トラックでアンモニアを使った発電システムを駆使して作動させることに成功したと強調した。
現在はタグボートで実証を進めており、今年8月をめどにアンモニア発電システムによるテスト航行を実施する予定を明らかにした。
ウーCEOは「海運業界はアンモニアを燃料として使う素地が既にできている。輸送のインフラなども存在している。それであれば海運業界で(アンモニア発電システムを)使ってもらうのが一番早いのではないかと考えた」と意義を強調。
将来の社会実装を踏まえ、4000万ドル(約60億円)を投じ、米ヒューストンに5万3000平方フィート(約4900平方メートル)のアンモニア発電システム製造拠点を整備しており、今年末に完成させ、2025年に製造を開始することを計画していると言及。アモジーのアンモニア発電システムに対しては、韓国の造船大手ハンファオーシャンなどが採用を決めており、2025年中に引き渡すことを想定しているという。
ウーCEOはクラッキングの技術について、一般的には800~1000℃程度の高温をアンモニアに加えて水素と窒素を分離しているが、アモジーの技術ではより低い450~500℃程度で可能になる点がメリットと強調。
「当社が海運業界で成功すれば、別の市場でも十分アンモニアを燃料として使う動きが加速すると考えている」と展望、将来はトラックやドローンへの燃料発電システムの活用が期待されるとの見方を示した。
(藤原秀行)