官民検討会、サービス採算向上へ省人化や機体の共同利用・輸配送も必要性指摘
政府は5月27日、東京・霞が関の国土交通省内で、関係省庁やドローン(小型無人機)の物流への活用を目指す民間企業などで構成する「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会」(座長・根本敏則一橋大名誉教授)の第3回会合を開いた。
これまでの会合で出された意見を踏まえ、事務局が山間部や離島などでドローンを使った物流サービスを実用化していくための施策を打ち出す「中間取りまとめの方向性」の原案を提示した。
この中で、サービスを展開する地域ごとに人口分布や輸配送地点の位置関係、天候など基本的条件を踏まえたビジネスモデルを構築する必要性を強調。先進技術で省力化しサービスに携わる人員は極力少なくすることなどで採算を確保することも盛り込んだ。
さらに「ドローン物流の商業化に際しては、量産・習熟効果が出るまでの初期段階は支援が必要。また、地域の課題解決に活用する自治体が継続的な支援を実施すれば非常に有用」と指摘。機体や気象観測装置など付帯設備、システムの購入・改修費用を補助したり、地元自治体が機体を所有した上で運航や維持管理は民間側に委ねたりすることなどを打ち出した。
検討会は6月中をめどに中間取りまとめの内容を決定。その内容を基に国交省や経済産業省、環境省、総務省などの関係省庁が具体策を検討する。
検討会の第3回会合
「中間取りまとめの方向性」の原案は、「2019年度中に数件程度の商業サービス実現」をめどとする姿勢をあらためて明示。これまでにドローン物流の実証実験を行った自治体や関係者の経験・課題を共有した。
ビジネスモデル構築に際し、考慮すべき地域の基本的条件として、
・集落や商店街、公民館といった公共施設の位置
・電気通信サービスなど公共サービスの提供状況を踏まえた輸配送ルートの検討
・海上における突風、谷底での電波減衰など地理的要因によるドローン飛行への影響
・天候などによるドローン稼働率への影響の把握
――を列挙した。
その上で、ビジネスモデルの採算性向上を図るため、サービス展開の省人化を重視。具体的には、
・スマートフォン用アプリや通信サービス(ケーブルテレビなど)、荷物収納機能を持つ電子鍵付きドローンポート(専用着陸設備)の活用による受発注・受領確認・決済の省人化
・目視外補助者なしの飛行による省人化
・点検必要な箇所が少なく設計されたドローンの活用
・ドローンの共同利用および共同輸配送などによる1社・1回運航コストの削減
・同一区間における多頻度輸配送や複数区間における輸配送
・物流以外への活用=観光振興、森林・河川管理、測量、害獣対策など
・少量高付加価値商品(新鮮な海産物など)の輸配送
――などを示した。
高齢者自ら使用できる受発注・荷物受け取り方法の確立が課題
支援措置の考え方としては、機体や関連設備の購入・改修に加え、地方自治体などが買い物難民といった地域の抱える課題解決に貢献するサービスについて、運航経費に補助することもあり得るとの見方を示した。
技術開発面は検討会の直接の議題とはしていないが、ドローンの最大積載量や航続距離・時間の向上、他の機体との衝突を回避できるシステムの開発など「官民の関係者による技術開発の進展が結果として事業展開をさらに推進することを期待」と表明している。
この日の会合では、「ドローン物流による買い物弱者支援」を目指す大分県が取り組み状況を報告。課題として、高齢者が自ら使用できる受発注システム・荷物受け取り方法を確立することなどを挙げた。長野県伊那市も同様の報告を行った。
事業者からは三井住友海上火災保険が自社で提供している事業用ドローンの損害保険について解説。ドローン関連のスタートアップ企業、テラドローンとブルーイノベーションも事業展開の概要を発表した。
(藤原秀行)