世界初のAIが勾配先読みする最適制御システム実現、電動冷凍車もラインアップ
日野自動車は5月28日、世界初となる大型トラックにAI(人工知能)活用のハイブリッドシステムを搭載した「日野プロフィア ハイブリッド」(車両総重量25トン)を6月18日に発売すると発表した。
併せて電力を冷凍機の電源に有効利用する電動冷凍車「日野プロフィア COOL Hybrid」もラインアップ。積載性や航続距離といったパフォーマンスを損なわずにCO2排出量の削減、燃費低減による運行経済性の向上、静音性・静振性に優れたモーター走行でドライバーの疲労軽減を図り、社会・環境・ユーザーが求めるニーズと課題解決に応えていく。
東京地区における希望小売価格は代表車型(2 SG-FR1AWHH)で税込み2275万200円。既に多数の事前オーダーが寄せられていると伝えられる。
「日野プロフィア ハイブリッド」(日野自動車提供)
大型トラックは燃料消費量とCO2排出量の削減が喫緊の課題とされる一方、高速道路での定速走行が中心で発進・停止の頻度が少ないことからハイブリッドエンジンは不向きとされてきた。このため現在もディーゼルエンジンが主流で大気汚染などの環境負荷、特有の騒音・振動がドライバーの身体的負担につながるなどデメリットも少なくないのが実情だ。
そこで日野は大型トラックが重量・サイズから下り坂の運動エネルギーが極めて高いことに着目。標高・勾配・位置情報などを基にルート上の勾配を先読みし、AIが走行負荷を予測して最適な制御を行う画期的なハイブリッドシステムを開発した。
高速道路の頻繁な下り坂で車両重量の大きさを生かして運動エネルギーを効率的に回収(回生エネルギー)し、これを大容量バッテリーに蓄電して定速時にモーター走行する。また従来のハイブリッド技術に加えて協調ブレーキシステムを採用したことで、発進・停止の多い一般道でも燃費の向上・安定化を実現。車両総重量20トン超~25トン以下で重量車燃費基準値の1リットル当たり4.04キロメートルから17.5%増となる4.75キロメートルを実現した。
AIを活用した勾配先読みハイブリッド制御では、ロケーターECUに内蔵された標高・勾配・位置情報から走行ルートの100キロメートル先までの勾配を先読み。AIが走行負荷に応じた大枠のシナリオを作成して10キロメートルごとに補正することで、消費電力の最小化と燃費の最大化を両立させる世界初のハイブリッドシステムを開発。
このほか一般道で使用頻度が多いフットブレーキの操作時にエネルギー回収率を向上させて回生エネルギーのばらつきを抑えるブレーキ協調回生制御、大型トラックの運動エネルギーを充分回収できる高容量のリチウムイオンバッテリーを採用した。
メーター内のマルチインフォメーションディスプレーに回生(充電)・アシスト(放電)などの状態を表示(画像はイメージ。実際の走行状態を示すものではない)(いずれも日野自動車提供)※クリックで拡大
電動冷凍車「日野プロフィア COOL Hybrid」はバッテリー容量を毎時9キロワットから11キロワットに高め、エンジン停止後も冷凍機に電力供給することで庫内温度を約2時間確保することが可能。さらにモーター出力を36キロワットから90キロワットに向上させて予冷時間を約90分短縮した。冷凍機メーカーにはデンソーと三菱重工サーマルシステムズを起用する。
いずれも衝突被害軽減ブレーキ「PCS」、出会い頭事故の防止に貢献する「サイトアラウンドモニターシステム」などの先進安全技術も標準装備。環境性能と安全性能を高次元で両立させたトラックとしてユーザーのビジネスをサポートしていく。税制面でも平成27年度燃費基準プラス15%を達成していることから、エコカー減税と環境省「2019年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(電動化対応トラック・バス導入加速事業)」の対象となる予定。
(鳥羽俊一)